”シニア”とは誰か
今年、僕は65歳になった。
シニアと呼ばれる年齢に差し掛かった頃から、「シニア」とはいったい誰なんだろうと考えることが多くなった。
テレビや街なかで「シニア向け」とか「シニア割」という言葉を見聞きするたび、「シニアって誰のことなんだろう。自分も入るんだろうか」などとぼんやり考えてしまう。
以前あるプロジェクトで、ターゲットとなり得る「シニア」数人にインタビューする機会があった。
【例】Aさん(プロジェクト関係者の知人・夫婦二人暮らし・独立した子供2人と孫2人・ペット飼育有)
・PCはある程度使えて、Amazonや楽天で日常的に買い物する
・レストランやホテルの予約は電話
・オンラインインタビューのためにzoomを案内すると接続に難儀(娘さんの助けがありなんとか接続完了)
・普段の買い物は基本的に交通系ICカード。ただしチャージは1万円単位で現金チャージ(1万円単位じゃなくてもチャージできると知って驚いていた)
このAさんはどんな「シニア」なんだろうか?
仮にデジタルという面で見たとしたら、強いんだろうか、弱いんだろうか?
僕と似たような部分もあるし全く違う部分もあるけれど、僕とAさんは同じ「シニア」のカテゴリなんだろうか?違うとしたら、それぞれどんな「シニア」にカテゴライズされるんだろうか?
そんなことをあれこれ考えながらインタビューの様子を見ていた(実際のインタビューではプロジェクトに関わるある切り口で深堀りしていった)。
一般的にはWHOの定義に合わせて、65歳以上を「シニア」と呼ぶことが多いようだ。ということは、僕は立派な?「シニア」ということになる。
だけど50代から「シニア割」の対象になるサービスだってあるし、当然ながらシーンが変わればまたシニアの捉え方も変わる。「シニア」と捉えることがそもそも違うということだってあるだろう。
あの人はシニアだろうか、この人はシニアだろうか、などと考えていてふと「007」シリーズのダニエル・クレイグが頭に浮かんだ。
彼は1968年生まれの54歳だけど、54歳だろうが65歳だろうが、きっと彼は「シニア」ではなく「ダニエル・クレイグ」なんじゃないか。
シニアとは誰か。
まだまだこの問に向き合う日々は続きそうだ。そして、僕はシニアなんだろうか。
取材・文 fusamoto honami