HIRATA GRAPHICS

1974年創業。神戸のデザイン制作会社、ヒラタグラフィックスです。 弊社デザイナーのコ…

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1974年創業。神戸のデザイン制作会社、ヒラタグラフィックスです。 弊社デザイナーのコラムを随時掲載しています。デザインや文章作成などのご相談は、弊社ウェブからお気軽にお問い合わせください。 www.hiratagraphics.com

最近の記事

カラマーゾフの兄弟、読了

もう随分前から読みたかったドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』上中下(原卓也訳、新潮文庫)を読了した。 今の時代の強みとして、3巻をまとめて一気に読める合本版の電子書籍で読んだ。今読むなら、すべての人に3巻合本版電子書籍で読むことをおすすめしたい。文庫といえども重い3巻を持ち歩かなくて済む便利さはもとより、いつでもどこでも読み継ぐことができて、しかも通巻して読み進められるからだ。 参考までに以下が合本版である。 https://amzn.to/44RBoid (内容とは

    • ハレの日 〜篠山紀信展 写真力<THE PEOPLE by KISHIN>で体験できる、写真のチカラ〜

      2014年4月5日から大阪のグランフロントで篠山紀信写真展が開催されている。篠山さんの写真展が大阪で開催されるのは初めてということだ。 え、そうだったか、と思う反面、よく考えると大きな会場でひとりの写真家だけに焦点を当てた展覧会は、そもそも少ない。 写真は誰にでも撮れるという錯覚が蔓延しているからかもしれないし、絵画作品より写真作品のほうが大衆性が高いので、そういう意味で写真を美術作品と捉える人が少ないからかもしれない。 森山大道さんの写真展が大阪の国立国際美術館で開催され

      • デュシャンの会話。それも作品。

        『デュシャンは語る』 マルセル・デュシャン 聞き手:ピエール・カバンヌ 訳:岩佐鉄男・小林康夫 ちくま学芸文庫(筑摩書房) 注:この書物は、『デュシャンの世界』朝日出版社1978年刊の再版である。 デュシャンの芸術表現を考えるとき、そこには必ずといっていいほど“思考”という概念が持ち上がる。概念と言うよりも、デュシャンの場合それは“運動”といってもいいだろう。 表現に携わる人ならばたいていはその“思考”することから無縁でいるはずはないが、だいたいは思考した後の表現されたも

        • ゴッホの時間

          国立国際美術館といえば、何をおいても2004年秋にこけら落としで開催された『マルセル・デュシャン展』が思い出される。現代美術の浸透をその第一義として、関西で美術の中心足るべき存在として運命づけられた、実に使命の重たい美術館だ。 その国立国際美術館が『デュシャン展』の次に開催する海外作家の大規模な美術展が、少なくとも“現代美術”とは呼べない“19世紀の作家”であるゴッホであるという点に、まず注目しなければならない。 本来ならば、現在開館準備中である大阪市立近代美術館で開催する

        カラマーゾフの兄弟、読了

          なぜ、デュシャン、なのか。

          ~マルセル・デュシャンについての簡単なお話。~ 最初にハッキリさせたほうがいいことは、デュシャンが何かの影響を誰かに与えたから“すごい”のではない、ということだ。画家に対して、というか、表現者に対して、その作品以外の要素で表現を語ることは権威主義的で欺瞞である。 今デュシャンの作品を見て、“全然いいと思わない”とか、“これは美しいと思わない”や“なにがいいかわからない”という風に思った場合、それはそれで全然オーケーなのである。 デュシャンはすごいですよ、と言われて作品を見

          なぜ、デュシャン、なのか。

          金子・ミーツ・ランボオ

          金子光晴さんがランボオの詩を訳していたとは、知らなかった。 ランボオの詩集は、粟津則雄訳バージョンを持っている。他にも小林秀雄さん、堀口大学さんなど、いつくかのバージョンの翻訳がある。しかし、金子光晴バージョンがあるとは。 あまり書店では見かけないようだが、ネットショップを利用すれば入手することはそれほど難しいことではない。私は角川書店版の古本を手に入れた。 届いた詩集を開き、パラパラめくりつつ、これは、自分にとって最もフィットする訳文だと思った。 翻訳というものは、当た

          金子・ミーツ・ランボオ

          天才達の、夢の跡、か?

          神戸に腰を落ち着けている時間が少なく、あちこち出歩いている。旅をしている気分である。 旅につきものなのが、訪れた土地にある書店に寄ることだ。先日行ったロンドンの古書店では、かつて憧れたデュシャンのコンプリートワークス、いわゆるカタログレゾネの3版を見つけた。 この素晴らしい書物を初めて知ったのは、『File』という今から20年以上も前のデザイン雑誌でサイトウマコトさんが最も影響を受けた書物としてあげていいたことによる。 このデュシャンのカタログレゾネ3版は、当時私が通ってい

          天才達の、夢の跡、か?

          15歳の地図

          先日、兵庫県のとある公立高校に通う生徒さんが研修に来た。 3日間という短さだったが、当社にとっては初めての経験、本人は高校一年の夏休み必須仮題という研修で、当然これも初めての経験。 初めて同士の体験だったが、これが実に有意義だった。 事前に高校側から連絡があり、生徒がウチを希望している旨の連絡があった。面白そうなので二つ返事でオーケーしたが、はて、いったい3日間をどうしようかと思った。 学校側は何でもやらせてくださいと、そう言う。しかし、受け入れるこちらとしては何でも、と

          ターンブル&アッサー社長のインタビュー

          私が初めて外国を意識したのは、おそらく13歳の時に聴いたビートルズだろう。もちろんビートルズなので、英国ということになる。人によっては米国の場合もあるだろうし、フランスやイタリアの場合もあるだろう。 それはきっと、料理や絵画や音楽といった芸術というきっかけが多いのではないだろうか。それらがなんらかの関わりで日本に入ってきて、我々と出会うのである。 私はその後も音楽や文学の縁で米国と出会ったが、服飾文化で再び英国と出会うことになった。それは自分の趣味や日常生活ではなく、仕事で

          ターンブル&アッサー社長のインタビュー

          ロバート・キャパ、ゲルダ・タロー。2人の写真家

          横浜美術館さんからプレスリリースが届いた。2013年1月26日から開催される展覧会の案内だ。 『ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 2人の写真家』 ロバート・キャパは、もちろん知っている。戦場カメラマンの元祖と呼んでいい人物で、写真家でありジャーナリストであり、そして活動家であった。 写真家集団マグナムの創設者の1人であり、戦場で銃弾を受けて倒れ落ちる兵士を捉えた写真や、ノルマンディー上陸作戦の渦中写真などで一躍世界にその名をとどろかせた。 写真の芸術性とは別に、その記録性

          ロバート・キャパ、ゲルダ・タロー。2人の写真家

          『流星ひとつ』または、インタビューという仕事

          ルポライターである沢木耕太郎さんが、歌手の藤圭子さんをインタビューした。 ただそれだけの本である。 ところが、『ただそれだけの本』を出版することがどれほど珍しいケースか、普段余り気に留めることも少ない僕たちは、この本を読んで『ただそれだけの本』の凄さを思い知ることになる。 流星ひとつ 沢木耕太郎 ひらめきは沢木さんにあった。1979年、歌謡界のトップに上り詰めた藤圭子さんが突然引退発表を行い、沢木さん自身も藤さんの歌に惹かれていたことも重なって、ルポライター魂に火が付き、

          『流星ひとつ』または、インタビューという仕事

          ひびのこづえとボローニャ

          伊丹で開催されている『ひびのこづえ展』と、西宮で開催されている『ボローニャ国際絵本原画展』を見てきた。 ひびのこづえさんは、ちょうど日本グラフィック展なるコンペティションが話題になっていた20年ほど前に出てきた作家で、日比野克彦さんが段ボールを使って斬新なPOPアートを発表していたころに登場した。当時は、内藤こづえという作家名だった。 雑誌『とらばーゆ』の表紙を始め、多くの広告作品で起用され、注目されてきたコスチューム・アーティストだ。私も好きな作家の一人。 伊丹という街

          ひびのこづえとボローニャ

          先生の作品集

          私は1988年に大学を卒業した。もう20年以上前のことになってしまったが、東京都の八王子市に今でもある。私の在学中よりかなり敷地が大きくなり、おそらく設備も豊かになっていることだろう。 1986年の3月、大学3年になると専攻が細分化し、授業を選べるようになっていた。私は、広告の授業を選んだ。なぜその授業を選んだのか。それはきっと同級生の影響が大きかったのだと思うし、大学2年の頃、夏休みの授業で受けた広告の講義が面白かったからということもあるかもしれない。 その頃の広告は、

          先生の作品集

          広告デザイン必携書物

          お薦め書籍を少々ご紹介。 『こころの眼』 アンリ・カルティエ=ブレッソン著 堀内花子訳 岩波書店刊 あの著名な写真家が自ら綴った写真を巡るエッセイ。120ページ。とても薄い書籍だが、中身は濃い。素晴らしい言葉が数多くちりばめられている。 「私は今もアマチュアだ。だが、もはや愛好家ではない。」 アンリ・カルティエ=ブレッソンが、写真そのものへの愛情と、写真で生きている自分というものの存在を端的に、客観的に表現した名言だと思う。 写真家にはジャーナリズムの感性が必要だ。こ

          広告デザイン必携書物

          ゲイリー・スナイダー

          昨日衝動買いした詩集『ノー・ネイチャー』。ゲイリー・スナイダーだが、私は自分の無知さを思い知った。彼はアメリカを代表する詩人だそうだ。1955年のポエトリーリーディングに参加したというから、いわゆるビート詩人の一人といえそうだ。 その後は日本やインドを旅し、禅を学んだりと、本当にややこしい男みたいだが、ピュリッツァー賞を受けた『亀の島』という詩集を発表していたりと、なかなかの詩人のようである。『亀の島』は読んでいないのでコメントできないが、ちょっと興味がわいてきている。

          ゲイリー・スナイダー

          良いコピーを書く秘訣

          昨年、糸井重里さんが出した『小さいことばを歌う場所』には、とても感銘を受けた。 それは、出版というモノの可能性を大きく前進させた勇気についてが大きかったが、もちろんその書物の内容も素晴らしかった。 毎週月曜日に自身が書いているコラムから、糸井さん本人ではなく、彼の事務所に所属するひとりの編集者が独断で心に残るテキストを選び、それを、コラム全文ではなく、コラムの中の部分から抜粋して一冊の書物に編集したものである。 出来上がったそれは、かなり『詩集』の趣が漂うすてきな一冊とな

          良いコピーを書く秘訣