【梗概】透明のなかには無数の色があって

校外学習の水族館で翔太は誤ってハリセンボンに触れてしまい気を失う。医務室で目が覚めると、側に幼馴染のゆうこがいてくれた。身体がまだ怠かったが、母親に迎えに来てもらうのはカッコ悪いので強がる翔太だが、裏腹に体はだんだんと透けてしまう。彼は自分の気持ちに反することを言うと身体が透明化してしまう特異体質になっていた。

それから学校で翔太は遊びに使われてしまう。ある日自分だけの透明化実験ので、ゆうこへの恋心に気づいてしまう翔太。それは自分の心に秘めることにする。思春期を迎える翔太は本音を言っても嫌われるし、言わなくても透明になってしまうことで悩み不登校になる。

大人になった翔太は人目につかない仕事を選びながら、引きこもりから脱しようと努力していた。噂を聞きつけた女性科学者聡子が、力を貸してほしいと家に乗り込んでくる。地球は緊急事態だった。なんと種の全体意思でコミュニケーションをする知的生命体が襲来してきたのだ。聡子は翔太の体質を以下のように解明する。
 1、自分の心の問題:自分の意思に反したことを言えば透明に
 2、1以外の問題 :地球人の全体意思に反するほど透明に
透明度を%化し、ある命題に対して、地球人がどのくらい賛成しているか把握できるようになる。知的生命体との問答により、奇しくもさまざまな地球規模の問題に方向性が見いだされる。国連は残すべきか、気候変動に対応をしていくべきか。

人々が心で抱えていた意見が暴露され、新たに様々な問題が生まれることになる。世界の治安はさらに悪くなり、翔太を危険視する。
聡子は密室で翔太に、"地球人は知的生命体に侵略された方がよいと考えているか?"という質問をすると、ほとんど透明にならなかった。これが生命体の狙いなのだと聡子は理解する。予め全体意思を集約する個体を作成して、意見に偏りが出るようにする⇒治安を悪くする⇒自らの種に絶望させるていう手順だ。聡子は地球人である翔太が、1の条件を持ち合わせていることに希望を見出す。

知的生命体からこれが最後の質問だと告げられる。聡子の予想した通り、投げかけられた質問は、"地球人は知的生命体に侵略された方がよいと考えているか?"だった。翔太はYESと言った。すると身体はみるみる透明になっていた。これを見た知的生命体は和やかな面持ちで、宇宙に帰っていった。彼らは”YES”とは翔太の個人的な意見であり、体の反応で全体意思はNOだと理解したようにみえた。(すくなくとも人類にはそのように見えていた)
聡子は、翔太は知的生命体の問いを、"ゆうこと出会えなくなる"という自分の問題に置き換えて、1の条件で乗り切ったと解説する。

透明の翔太を誰も見つけることができなくなった。彼は透明であることに生きがいを感じてしまったのかもしれないと、後悔する聡子。そこに、ゆうこがやってきて、あなたはわたしのこと嫌い?と問う。NOという声が返ってくる。翔太の身体は元に戻り、透明化することはなくなった。

しかし、もしかすると知的生命体の真のねらいは、カテゴリーやイデオロギーに集約されない多様な考えをもつことの意味を、地球人に気づかせることだったのかもしれない。そうすることで、宇宙はもっと強靭になるのだから。そう聡子は締めくくったのだ。

<1363字>

課題からは、<一つの設定>を選んでいます。
あまり難しいことは考えずに、そんな問答しちゃうの?みたいな、どんどん問題が悪化していく、大げさな世界を作っていけたらと思います。倫理的な問題もふまえ実作を書いていきたいと思います。
<112字>

いいなと思ったら応援しよう!