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遠距離恋愛を始めたので名古屋に行ってきた


遠距離恋愛はじめました

35歳にして、人生で初めての遠距離恋愛をすることになった。
徒歩15分のところに住んでいたはずの恋人が、愛知県にある実家に長期帰省することになったためだ。

7月に相手から実家へ戻ることを話されたときは、同時に「別れたほうがいいかも…」「遠距離になっても恋愛感情を保てる自信がない」と言われた。オイオイオイオイィつまりお前の愛情はその程度ってことかよォ〜〜〜と心の中の坂田銀時が叫び返しそうになったのだが、平常心を保って「やってみないとわからないからとりあえずやってみようよ」と提案し、どうにか二人の関係は、遠距離恋愛として再スタートを切ったのだった。

遠距離恋愛、知見がなさすぎて、彼氏の「恋愛関係を維持できる自信がない」という意見を、まあそうだよなあ……と冷静に聞く自分もいた。留学とか駐在のように期限が決まっている遠距離恋愛ではない、というのも拍車をかけていた。周囲で遠距離恋愛を挟みながらも関係を続けた人間はことごとく結婚している。「長期的に二人の生活を共にしていく覚悟(つまり結婚およびそれに類似する責任が発生するパートナーシップをかわすことへの合意)がある者同士」が、強い自律心と深い愛情から成り立たせているものであるという認識はたしかにあった。彼氏がLINEでのメッセージ交換を得意としていないことも不安要素だった。

(遠距離恋愛を継続させるコツは、お互いが何をしているかこまめに知らせあうことだと、アメブロも恋愛指南本も私がよく通っているネイルサロンのネイリストさんも言っていた)

「自信ないから別れた方がいいかも」と言う彼氏は、誠実といえば誠実なのだった。

率直に言って私のほうにも、ここで別れたほうがお互いにとっていいかなあ……という思いはあった。仕事と家庭の事情でいっぱいいっぱいの人に「私のことを考えるリソースを割き続けてくれ」というのは確かに酷だ。私は私で、そうした恋人の事情を笑顔で慮り続けられるほど人間ができておらず、すでにあれこれ支障が出ていた。今回の決定の前から恋人は、かなり頻繁に帰省をしており、さらに頻繁に体調を崩していた。会えるのは月に1〜2回程度で、連絡も週1回、しかもこちらから送って数日後にようやく返ってくる程度、という期間がかなり長かった。その間、恋人には物分かりのいい彼女ヅラをする一方で、インターネットや知人に喚き散らしていたものだから、心身には地層のように疲弊が堆積し、それを受け止めてくれていた一部の友人と拗れたりもした。このまま一人の人間に振り回されて、限りある今や周囲の人犠牲にしたくねえ〜〜と思っていたから、これを絶好のチャンスとして彼氏と離れるのも、ありはありだった。

結婚などの安定した関係を築けるパートナーシップへの憧れがどこかにあるならこの彼氏と付き合っている場合ではなかったし、逆に、恋愛というアクティビティにフルコミットしたい場合にも、この彼氏ではないほうがよかった。だってもう交際1年が経過していた。1年以上同じ人ときちんと「恋人」として付き合うのが初めてで、時間の経過につれて、自分の恋愛感情も相手の恋愛感情も下降の一途を辿ることをどうしようもなく思い知った。

恋愛って、最初がクライマックスじゃないですか? どうにか維持されたとして、始まったころの「あれ」とはやはり別ものだ。恋愛初期の光輝くハイテンションが、同じ人との間に再度発生することはないのだ、と、今回の恋愛でようやく学んだ。

(逆にいえば、不安定な関係はつねにその不安定さがアドレナリンを分泌させることで、恋愛初期的なテンションを永続させてくれるというメリットがあったのだろう)

「恋愛」を楽しみたいのなら、この安定してしまった相手、新たな興奮をもたらしてくれる確率の少ない相手をリリースして、新しい海に漕ぎ出すほうが効率的だろうとも思った。

そんなふうに「別れる」という選択肢もそれなりに検討したのだが……そして合理的な選択をとるならやはり「別れる」べきだったとも思うのですが……まあ2024年9月現在は、付き合い続けている。

無限に理由があるけれど、大体こんな感じ。

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