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芸人は仲が良い方が良い?

最近の芸人は皆ずいぶん仲が良い。

まあ昔のようにどう見ても裏社会と繫がっていそうな(あるいはこれから繋がりそうな)不穏なオーラを纏った人は少なくなり、ちゃんとした社会人を経験していたり、それなりの学歴だったり、あるいは色々とコンプレックスを抱え苦労してきた人が、それを武器として活かすためにお笑いという道を選んだパターンなんかが増えてきたからだろう。

おかげさまで今の芸人は根が真面目で優しい奴が多い(そのうえでだらしない奴も多いが)。
ゆえにある程度一緒に時間を過ごせば、大抵の奴は好きになってしまう(本当に悪い奴ももちろんいます)。

では芸人同士は仲が良い方がいいのか?それはまたちょいと難しいところだと思う。


見ているお客さん側からすると、基本的には芸人同士仲良くしている方が良いと思っている人が多いのではないだろうか。
信頼しあっている関係というのは見ていてほっこりするし、その安心感というのは笑いやすさにも繋がる。また、好きな芸人同士が仲が悪かったりすると、どちらを応援すれば良いのか困ってしまうというのもあるだろう。

なので芸人が皆仲が良い今の状態は、時代の需要には合っており、一見良いことのようにも思える。

が、

哀しいかなお笑い界全体の今後のためという目線で見ると、それは必ずしも良いこととはいえないのだ。

芸人同士が仲が良いことで生まれるデメリットはいくつかある。

例えば仲良し同士の悪ふざけ的な内輪ノリのお笑いが生まれやすくなること。

身内だけがとことん楽しい、新規置いてけぼりの楽屋ノリ。完全なファン向けのイベントなど身内だけで固めた空間であれば一興行としては成立するが、お笑いは楽しければ楽しいほど、笑いそのもののレベルは低くなるものだ。つまりその場では良くても、お笑いの進化には貢献できないのが内輪ノリというやつなのである。

また、お互いを認め合っているゆえ、影響されることに抵抗が持てなくなる。
結果芸が似通ってきてしまうのだ。ピンとくる人も多いと思うが、吉本なんかは閉鎖的であるがゆえ、割と上記のようなことに陥りやすい。もちろんちゃんと自我を保てている人もいるが。

今は芸人皆が身内のような関係で、協力してひとつの会社を作り上げているような構図になっているが、本当はそれぞれが独自の方針で個人店を経営している方が、芸術文化としては強いし面白いのだ。

そのためには、個人的にこと芸人同士であれば、もっとお互い口撃しあっちゃっても良いと思う。

『あんな奴のやってることなんざ認めねえ』『俺のやってることの方が凄いんじゃい』。

じゃいとかは別に言わなくても良いが、実際にそれを表に出すことには間違いなく意味がある。

相手がどうとか以前に、自分のためにである。

要は口に出してしまうことによって、自らの尻に火を点けるということだ。
言ったからにはもう相手と似たようなことはやれなくなる。では自分はいかに相手と違う道を模索していくか。その先にこそオリジナリティはあると思うのだ。

なので別に心の底から相手を憎んでいなくても、自分のため、ひいてはお笑いのためにそれくらい強い着火剤が必要なときもあるということだ。
もちろん言われた方は腹は立とうが、そいつにとっても着火剤となり、相手に負けぬようさらに自分の道を極めていこうという決意に繋がる。

元々は硬派なコント職人的イメージだったチョコレートプラネットの売れ方に対し、あれはあれで賢いし一つの正解の形だというのはまったくもってその通りなのだが、どうにも皆が皆同じ見方をしているのが気になってしまう。音楽の世界で『産業ロック』などという言葉とともに一部バンドが賛否両論あるように、『商業主義に走りやがって』という見方をする芸人がもっといても良い。というより一つの文化としてはいなくてはならない。偏った価値観ばかりの文化は明らかに不健全だ。

なのであまりにも皆が口撃しあうのも、それはそれで偏っているので違うと思うが、今は皆仲が良いという方向に強く偏りすぎな気がするので、やはりバランスが大事なのだと思う。


とは言いつつも、芸人同士とはいえ、自らのためお笑いのためとはいえ、実際にお互い口撃しあうのは時代を考えるとかなり勇気のいることだ。

ネット隆盛のこの時代、当人同士の問題であってもなぜだかどこからか正体不明の第三者が現れて、勝手に独自のジャッジを下して去っていく。場合によってはジャッジを下すだけでは飽き足らず、石まで投げて去っていく。
素性を明かさず思想だけを吐く者は自らの言葉に責任を持つ覚悟のない者なので、わざわざ向き合う必要もないのだが、実際にそれらに押しつぶされてしまう人もいる。

それを考えると結局今の皆仲良しな状態が無難ではあるのだが、やはりそれでは先のお笑いのためにならない。

お手上げであるヽ(`▽´)/

まあ芸人それぞれが、表に出さなくてもしっかり周りに流されず自我を保ち、オリジナルのお笑いを磨いていければそれで良いのだが、現状それができていない者が多いからこそ着火剤が必要なわけで。というかそれ以前にネットの正体不明の第三者たちがまず当人同士の問題を俯瞰で見守れる冷静さを持てれば良いのに。


ぼくもnoteで不特定多数の芸人に対しブータラ言っているが、やはり今の自分がお笑いをやる動機のひとつでもある『お笑いの価値を高める』ために微力ながら必要だと思いやっていることだ。
最初に書いた通り、話せば芸人は皆良い奴なので、人間性とは分けて考えている。

難しい時代だが、皆仲良く口撃しあえれば良いね。


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