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20250127 軸足を強くこの地面に

演劇活動をするにも目標はいろいろあって、特に日本、東京で演劇をやっているとやたら新作ばかりつくることになったりする。助成金の構造の要請からそうなっているという部分も大きくて、先日もそれなりに大きな劇団が「新作じゃないと助成金が降りないから…」というものすごく現実的な理由からめずらしく新作を発表されているのを目撃したりしていた。

パリの奥野衆英さんの記事!おもしろいのでぜひ読んでみてください。

▼日本では劇場のレパートリー制度があまり機能していないので、どれだけ一生懸命作った作品でもよほどのことがない限り再演がかからない。たとえば新劇系の劇団だと本公演が各地の演劇鑑賞団体から買取を受けて数年後に全国をツアーして回る、みたいなことがあったりもするし、いわゆる小劇場系の劇団でも評価の高い作品が生まれると数年後に各地の劇場をめぐって全国ツアーにつながったりもするけれど、それでもやはり全体として見てみたら依然として新作至上主義という印象はぬぐえない。

▼もうすこし気軽に、若い人たちがつくった作品でも各地の劇場を回って作品を発表できるような枠組みが出来たりしたらいいのに、と思ったりしている。公共劇場のホールなんかを回るツアーは大きな劇場や会社に任せるとして、若いバンドがハイエースで全国ツアーをするみたいに、ワンステージ50人~100人くらいの動員で、北海道から沖縄まで津々浦々回るツアーを企画して、若い人たちが作品をもって日本を縫っていく、みたいなことにできたらいいと思う。自分の暮らしている街だけではなくて、日本全国で動員1万人、とかなら結構いけそうな気がしないだろうかと思う。

▼往々にして旅公演は勢いと準備不足でスタートを切ってしまうとお金が足りなくなって体力もものすごく削られてしまうから迂闊なことは言えないけれど、シンプルに東京に山ほどいる演劇をつくっている人たちを全国各地の小さな、でも気骨のある劇場へと送り出していくポンプみたいな枠組みがあったらいいのに、と思う。全国小劇場ネットワークのシアターホームステイの発展版みたいなものが出来たらいいと思う。そういうステークホルダーの方がもしいたら、どうにかなりませんかね(?)。

▼ハイバイの岩井秀人さんが「ひとりのアーティストが生み出せる、本当に大切な作品はせいぜい生涯で3,4本」と仰っていたことがあって、だからこそ再演が大切という話なのだけれどこれは本当にそうだと思う。新作の開発ももちろん大切だけれど、すでにそこにある名作を眠らせるのではなくて、名作にきちんと人と才能を集めて全国の劇場のレパートリーを充実させることを真剣に考えてもいいと思う。井上ひさしさんのこまつ座だって、少なくとも井上さん亡き後は「本が上がらなくて初日が開かない」ということはなくなったのだし、新作のリスクは創作の現場を不安定にし、トラブルを生むことも多いことはもっときちんと認識したほうがいいと思う。

▼そうして、自分も今まだ東京で演劇をやっているものの、いろいろあって真剣に「世界で通用する日本の現代演劇とは何ぞや」ということを考えるようになった。円が弱くなった今、日本でだけ内向きな演劇をやっていたら日本の現代演劇なんか早晩滅びるので喫緊の課題だと思っている。そしてすこしずついろんな人のお話を聞いたりなんだりしてみると、みなさん口を揃えて「何が海外で評価されるかなんてぜんぜんわからない(!)」と仰るので一瞬頭を抱えたくなるものの、そういうマジで先がわからない、予測もつかない未知の領域に飛び込んでいくことこそ心の底からわくわくする性分なので「じゃあどうしよっかな…!!」と思って考え続けている。

▼経済効率や新自由主義から離れて、本当に今自分にとってなにが大切なのかを考え続ける。今、日本で現代演劇が果たしている役割って何なのだろうと考え続ける。AIによる技術革新の時代にあって、最後に人間の手元に残る仕事とは何なのだろうと考え続ける。たぶん、なのだけど今私が立っている地面に強く軸を刺しておくのが大切なのだろうな、と思っている。空中戦になってしまったらつまらない。ここにいる私、ここで暮らしている私、というところから、地面に強く突き刺して、地球の裏側へ行けるような方策を考えた方がいいのだろうな、という気がしている。東京の、公園の土の匂いを嗅いでみたりする。

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◆2024年の年末に『桜の園』ソロ・こごえという作品を上演しました。

◆毎週水曜日に西早稲田近辺で舞台俳優のためのファンダメンタル(基礎トレーニング)を実施しています。

◆2024年5月にはじめての野外劇を上演しました。
平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
【公演詳細】

◆2024年5月、上記公演の実施にあたって平泳ぎ本店は戸山公園で野外劇を上演するための所作台(舞台床面)を製作するための資金調達に取り組み、日本全国の73名の方々から535,000円の応援をいただき無事に成功しました。ありがとうございました!

【平泳ぎ本店 クラウドファンディングについて】
「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」

◆本日もご清覧頂きありがとうございます。もしなにかしら興味深く感じていただけたら、ハートをタップして頂けると毎日書き続けるはげみになります!

◆私が主宰する劇団、平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co . では向こう10年の目標を支えて頂くためのメンバーシップ「かえるのおたま」(月額500円)をはじめました。
メンバーシップ限定のコンテンツも多数お届け予定です。ワンコインでぜひ、新宿から世界へと繋がる私たちの演劇活動を応援していただければ幸いです。
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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第9回公演
『(タイトル近日発表予定)』
2025年 初夏

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