20240125 お弁当とヘイトスピーチ
都内某所によく利用している稽古場があって、その近くにとあるお弁当屋さんがあった。ほっともっと的ないわゆるお弁当屋さんプロパーというのではなくて、中華料理的な居酒屋さんが路面でテイクアウトの販売を行っているような感じの佇まいだった。
▼店舗の入り口とは別の窓から店のおじちゃんに注文をすると、厨房でジャジャッと鍋を振り、発泡スチロールの大きめのどんぶりにほかほかの白飯をバコン!と盛り、その上に炒めた肉や野菜を乗っけて蓋をして渡してくれる。丼物の大体のメニューが500円で、大盛りにしてもプラス100円の600円だった。まさに早い、安い、美味いといった感じのお弁当屋さんで、稽古をして腹を空かせてはこのお弁当屋さんにみんなで通っていた。
▼店のラーメンで使っているチャーシューを使ったチャーシュー丼(普通のタレと辛いタレがあった)や、豚肉とネギをジャジャッと炒めた焼肉丼、キクラゲと卵炒め丼、肉と野菜を炒めた肉野菜丼や、店主のおじちゃんが適当に材料をみつくろってまかない的に作ってくれるメニューにはない丼もあったりした。どれもシンプルなメニューだけれど稽古の合間に人がつくった温かいものが食べられるのがとにかくありがたくて、重宝していた。
▼ただひとつ問題があって、たまに店頭に立っているこのお店の女将さん的なおばちゃんがとんでもないレイシストなのだった。
▼「うちのネギはね、国産を使っているの」と、聞いてもいないのにネギの産地を教えてくれるところまではまあいいとして、愛想笑いでだまって聞いていると「◯◯産のネギは農薬まみれ!」「◯◯人の飲食店はネズミの巣!」「◯◯人たちに衛生管理はできないの!」みたいな、耳を疑うような二の矢、三の矢が飛んでくるのでびっくりしてしまった。見た目はきわめて穏やかなおばちゃんなのだが、なんでだか口を開くとヘイトスピーチのテンプレがリピート再生される壊れたテープレコーダーみたいなことになってしまっていた。
▼お弁当屋さんがある四つ角で、そのレイシストのおばちゃんが街頭演説よろしく誰にともなく大声でヘイトスピーチを撒き散らしていることがあり、そうなるともう「『弱いものたちが夕暮れ さらに弱いものを叩く』とはこのことか…!」と思いながら目を逸らすよりほかなかった。レイシストのおばちゃんはどこか現実離れしていて何かの戯曲の登場人物にしか見えなかった。そのおばちゃんがいませんようにと祈りながら、夕方になるとまたそのお弁当屋さんへと向かうのだった。
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