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20250115 小さな演劇論

トロフィーモフ 行き着けるとも。(間)
自分で行き着くか、さもなけりゃ、
行き着く道をひとに教えてやる。

神西清訳 チェーホフ『桜の園』第四幕より 

▼トロフィーモフというのは万年大学生で、「まだ何者でもない」という点において自分を見ているみたいで読んでいるとちょっと気恥ずかしかったりする。まだ何者でもないのに大袈裟で、青臭いことばかり言っている。たぶん声も大きいような気がする。トロフィーモフとアーニャが桜の園を出てどうなったか、ということについて「革命の中で野垂れ死ぬんだよ」と答えたのは誰だったか、すっと思い出せない。

▼今年、演劇をつくるのはもちろんなのだけれどすこしずつ演劇論を書きたいなと思っている。それは「小さな演劇論」、みたいなもので、ひとりの俳優の立場からそれを書きたいな、と思っている。劇作家でも演出家でも(一応、劇団主宰でも)なく、私はひとりの俳優として文章を紡ぎたい。

▼演劇論はこれまでもたくさんの劇作家や、演出家の方によって書かれてきた。劇作家も、演出家も、基本的には座組に一人しかいないから、集団をまとめるためにいきおい「一対多数」というか、大勢の人を納得させ、自分の考えを説き、時にねじ伏せるかのような力強さや迫力がある。

▼それに対して俳優による演劇論は、そんなに力強くなくてもよい、と思っている。何か圧倒的なビジョンや演劇に対する新しい考え方や発見、革新的な演劇観みたいなものはそんなに必要ではなくて、むしろ必要なのはひとりひとりの俳優さんが静かに、やさしく、自分の言葉で深く自分の考えを育めるような心の立ち方、重心の置きようのようなものだと思う。

▼俳優は他の職能に比べても数が多い。社会における市民みたいなものだ、と思ったりもする。そうして、演劇界はまだたくさんの問題を抱えている。ひとりひとりの俳優が深く考えて、やさしく振る舞うことができたなら、そうして各々が立っている場所で正しい有機的な判断と対話を積み重ね、言葉を紡いでいくことができたなら、演劇は必ずよくなっていく、と信じている。

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◆2024年の年末に『桜の園』ソロ・こごえという作品を上演しました。

◆2024年5月にはじめての野外劇を上演しました。
平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
【公演詳細】

◆2024年5月、上記公演の実施にあたって平泳ぎ本店は戸山公園で野外劇を上演するための所作台(舞台床面)を製作するための資金調達に取り組み、日本全国の73名の方々から535,000円の応援をいただき無事に成功しました。ありがとうございました!

【平泳ぎ本店 クラウドファンディングについて】
「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」

◆本日もご清覧頂きありがとうございます。もしなにかしら興味深く感じていただけたら、ハートをタップして頂けると毎日書き続けるはげみになります!

◆私が主宰する劇団、平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co . では向こう10年の目標を支えて頂くためのメンバーシップ「かえるのおたま」(月額500円)をはじめました。
メンバーシップ限定のコンテンツも多数お届け予定です。ワンコインでぜひ、新宿から世界へと繋がる私たちの演劇活動を応援していただければ幸いです。
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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第9回公演
『(タイトル近日発表予定)』
2025年 初夏

続報をお待ちください!

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