20241001 野原からのリスタート
Photo by Mikio Kitahara
「最近の東京の演劇ってどうなの?」と聞かれて、なんとなくうまく答えることができなかった。東京以外のあっちゃこっちゃに行っていたりしたこともあるけれど、それ以外にもなんだか色々な要因が積み重なって、たとえば2010年代後半よりも像がぼやけてしまっているような気がしたからだった。
▼個人的にはやはりこまばアゴラ劇場がなくなってしまったことの影響が大きい。閉館直前の数年間は、(それでも)全盛期に比べればそれほどという感じだったのだとも思うけれどもやっぱり「今年のアゴラのラインナップはどんな感じなんだろう」「誰がアゴラで上演しているのだろう」というのが一つの軸になって、そこを基点にして演劇のことを見ていたのだな、と思う。そうこうしているうちに東京芸術劇場も改修のための閉館になってしまった。
▼時を前後してX(旧Twitter)のアルゴリズムが変わって、回ってくる情報がいくらか恣意的になったり、偏ったりするのが露骨になったことで多くの人がXから離れたことも一因として挙げられるのだと思う。短文のメディアは演劇を好きで見にいく人たちの嗜好(文字が好き)にうまくマッチしていて、ある時期はなんかいい感じに楽しかったのだけれどもそれもイーロン・マスクに取り上げられてしまった。
▼昔よく見かけていた人や、好きで勝手に追っかけていた人、信頼できる人たちはその影が儚くも薄くなり、新しい人たち、インプレッションなどを上手に稼いでいて演劇を話題にしているけれどもなんだかちょっと油断ならなそうな人たちというのも増えて、見てはいるけれども信頼はせず、みたいなことになっている。
▼あとは自分自身が年齢を重ねてしまったことで若い人たちがバンバン登場していて、彼らの盛り上がりからは少し自分が離れたところにいることの恥ずかしさというか、追いきれないことのしんどさをも感じたりしている。年長のカンパニーなら遠慮なく色々感想も言えたのが、年下の人たちの作品を見て何を感じたとしてもまず「そう感じた自分が間違っているのではないか」という留保みたいなものを、ちょっとずつ感じるようになっている。
▼それでも救いがあるとすれば今年私たちは所作台という、野外演劇展開装置を手に入れたことである。なんだかいろいろ不安だし、”演劇界”の先行きなんてわからないし、けれどもとにかく野外劇を展開するための手立てが手元に残った。誰も誰かの代わりになんてなれないし、なくなったものは戻ってこないけれども今ここから始めることはできる。野原からはじめられる。野外劇というものを、考えて考え抜いてみようと思っている。
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◆日本全国の73名の方々から535,000円の応援をいただき、資金調達が無事に成功しました。ありがとうございました!!
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「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」
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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【公演詳細】
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