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20241210 ねじ伏せろや!

「演劇をする(劇団をやる)ということは、自分のなかに悪魔を飼うということ」と、書かれていたのはたしか宮城聰さんだったと思う。こまかい言い回しはちがったと思うけれども、天使ではなくて悪魔を自分のなかに飼う、ということの意味を、時たま思い出したりしていた。

▼「劇団がたちいかなくなる原因は金と異性関係」という平田オリザさんの言葉を真に受けて、自分が演劇をスタートするときにはメンバーをオールメイルにした。お金だけでも苦労することは火よりも明らかに目に見えていたから、すこしでも劇団がなくなるリスクを小さくしたかった。

▼そういえば私がものすごくお世話になった劇団がなくなったのも、その本質的な原因はお金のことだったと、人伝に聞いたことがあった。でもそのことはあまり表では話題にされないし、苦しかっただろう内情がシェアされることも決してなかった。ただその劇団がなくなることの感傷だけがそこに残った。そのことをどうこういうつもりもないけど、本当にほんとうのことというのはなかなか知ることができない。でもそれが正しくシェアされたら、特に後につづく人にとって大きな学びになるのに、とはちょっと思う(しくじり先生的に)。

▼海外の俳優指導者で、リハーサルの時に特定のターゲットを何人か決めて、その人を徹底的に恫喝して追い込む、というやり方をとる人がいた。その人は他にも諸問題を抱えていて結局追放されることになったのだけど、ターゲットにされない人からすれば情熱的で優秀な指導者であったらしく、直接指導を受けた人は「彼はいい人なんだけど、彼のなかの悪魔が悪さをしてしまうんだ」と言っていた。

▼あと稽古場で俳優に向かって「二度と演劇できないようにしてやろうか?」といった演出家もいた。いくつかの演劇賞も獲って有名な人ではあったけど明らかに人格に致命的な問題があって、慕う人も多かったけれど最後まで私は好きになれなかった。その人も稽古場で何人かターゲットを決めて追い込む、という手口を使っていた。陳腐だ、と思った。

▼仮に自分の心のなかに悪魔がいるとして、その悪魔が仕事をしてつくった作品なんか本質的に大したものではない。ドラクエだって魔王を倒してクリアするのに、悪魔に負け、禁じ手を使ってだらしなく犠牲を出しながらつくったってそんな作品は本質的な意味で誰一人救えない。なにも悪魔と戦うのは演出家だけではない。その作品に関わるひとりひとりがてめーのなかの悪魔と戦い、きちんとねじ伏せてから演劇をやっていたいものだぜ、と思う。そのためにはまずデッドリフトだと私は思う。

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「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」

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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)

各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)

※雨天決行

於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡

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