20240613 若き日おばあちゃん考
先の公演で扱った堀田善衞さんの『若き日の詩人たちの肖像』について、上演する前は「これ大丈夫かな、私たちが恐れ多くも演劇にして、原作や作家さんのファンの方が見ても怒ったりしないかな」と、一応すこし気にはなっていたものの、いろんな方のご感想を拝読したり直接仰っていただいた言葉から想像するに、総じて好意的に受け取ってもらえたような気がしてほっとしたりしていた。
▼作家の方の言葉を扱うといったときに、今回も創作の過程から特に気にかけていたのは「堀田善衞さんの言葉をきちんと発語し観客に届ける」ということで、演出的にも演技的にも何をしようとするにもそこをまず明瞭にできているかどうか、ということを何よりも強く意識しながら本番へと向かっていた。
▼さて、稽古場でのリハーサルの最終日、スタジオに少数のお客様をお招きしてオープンリハーサルというものを行い、そのときにいただいていたご質問があったので、この機会にお答えできたらと思った。いただいたご質問がこちらです。
▼たしかにここで言及してもらっている「おばあちゃん」の登場にかかるシーン、「14 なんか変」〜「16 汐留くんの演説」のあたりで多少のシーンの入れ替え(小説で登場する順番の入れ替え)が起こっているのだった。物語だとかなり序盤から登場しているお婆さんが、実際の上演だと中盤から終盤に差し掛かってきたあたりで登場することになったので「鈍いみたいになってしまって」いる、という印象を与えてしまったものかな、と思って謹んで拝読しました。
▼シーンの構成はなるべく原作通りの並びを基本としながら、リハーサルの段階でどうしても演劇的に座りが悪いところ、流れがやや滞ってしまうところを調整した結果最終的にこの並びに落ち着いたのでした。また併せて言及してくださっている日没時間に関する「現実世界の寒さや夜の公園の不穏な感じもストーリーと併せて進行していくのかな」というのはまさにその通りで、開場中はかなり明るく日没時間も「日没」と言いつつかなり明るいのですが、中盤以降、美しい片割れ時があってまさにおばあちゃんの登場の前後くらいで気がつくと深い紺色の夜が訪れているというのは、作品の運びと照らしてもある程度狙い通りだったのかなとも思います(天候に恵まれたのは幸運でした)。
▼一年のうちでも5月の日没時間というのは結構ゆるやかに夜が降ってくる感じがして、しかもそれに併せて上演中に舞台監督兼照明を担当してくださった齋藤さんが舞台上の照明を微調整しながら追いかけてくれたので観客の方からは「気がついたら夜になっていた」という印象をもたれた方も少なくないようでした。作品にとって「夜」というのはもちろん戦争をほのめかすものなので、現実の私たちは(たとえそれが抗いようのない大きな力なのだとしても)降ってくる夜に対して目を凝らしていられたら、と思ったりもしていました(これは蛇足ですね)。
▼そうしてご質問をいただいた方のご想像にたがわず、このおばあちゃんというのがとても愛くるしく、賢く、読んでいてびっくりするような台詞をいくつも読者に放り投げてくる、すごいおばあちゃんなのです。読んでいてとても気になる、切れ者のおばあちゃんです。このおばあちゃんでスピンオフを容易くつくれるくらい、名台詞を吐くおばあちゃんなのです(ぜひ原作を読んでみてください!)。熊野さんがある時そらでこのおばあちゃんの台詞を稽古場で言っているのを聞いて、その瞬間にこのおばあちゃんを登場させることを決めました(それくらい素敵でした)。おばあちゃんの魅力をもう少し精確に伝えられたらよかった、と思うとすこし悔しくもありますが、それはもしもう一度上演することができる時の宿題として大切にとっておきたいと思います。
ご質問誠にありがとうございました。
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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【チケット】
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【公演詳細】
https://hiraoyogihonten.com/2024/02/24/hiraoyogi8th_info/
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