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20241119 知観客楽

舞台を観ているときに、客席後方の席だとしばしばその舞台の演出家と居合わせることがある。メモとペンや、最近だとiPadを持ちながらしずかにノート(次回の上演までに修正すべき点)を取っていたりするので割とすぐわかる。

▼みんな自らが演出した作品をどんな気持ちで観ているのかな、とすこし気になって聞き耳を立ててみると、割とどんな作品でも笑って楽しそうに観ていたりする。それがどんな難解な作品であれ、リハーサルの段階から何度も観てきて、本番の客席でもなおおもしろいのだから大したものだ、と思う。

▼時として他の観客がほとんど笑っていなくても、演出家だけがひとりで笑っていたりする。自分がまったく掴めていない作品でそうして演出家が笑っていると「なんてスノッブな人だ!」と思ってすこしの反感を感じたりもするし、自分にはビシビシ刺さっている作品で他の観客がぜんぜん笑っていないと「わかる、わかりますよ…!」と思って後押ししたくてそっと笑いを漏らしたりする。

▼先日舞台を観に行ったときに、割と笑いの起こる舞台だったので私も人並みに声を出して笑っていたところ、隣に座った方が私が笑うたびにいちいち「お前ここで笑うんか!?」とばかりにキッ!という視線を向けてくるので往生した。よほど「舞台だけ観ていろ!」とほっぺたをひっつかんで正面を向けてやりたかったけれどもそうもいかない。観客同士の笑いの自己検閲というか、笑いの隣組みたいで不思議な気持ちになった。

▼人にもよるとは思うけれども、自分が舞台に立っている時には笑いがあった方がやりやすかったりする。真面目な舞台でずっと客席が静かだとお客さんが何を考えているのかわからなくて不安になってしまう(根が芸人なので)。それがどんな舞台であれ、気軽に笑って観てくれたらいいのに、と思っている。

▼そうはいってもものすごく笑い声が起きているときが一番よいのかというとそんなこともなくて、割と客席がしずかな回でもひとりひとりの観客の方がとても満足して観てくれていたりすることもあって、笑いだけを指標にしているとなにがいい上演なのかはあんまりよくわからない、ということになる。荘子の“知魚楽“みたいに観客と作り手が相通ずるような瞬間をひとつでも生み出せたら、と思うけれども、そこまでの道のりはまだまだ遠そうである。


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【平泳ぎ本店 クラウドファンディングについて】「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」

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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)

※雨天決行

於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ

【公演詳細】https://hiraoyogihonten.com/2024/02/24/hiraoyogi8th_info/

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