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20250110 十年目のレポート。

たとえば誰かと「演劇をつくろう」といったときにその「演劇」がどういう演劇を指しているのかについて、結構きちんと確認をしたほうが良い、と思う。確認しなくたってつくれるけど、同じ時代に生きていても同世代でも、お互いの思っている「演劇」がぜんぜん別の方向を向いているということはしばしば起こりうる。

▼たまたま自分たちの団体は皆が同じ劇団の養成所を卒業していたから大まかな方向、たとえば「北か南か」くらいの方向性は共有できていたかもしれないけれど、蓋を開けてみたらお互いがどういう演劇をどういうモチベーションで志しているのかがぜんぜん異なっていて、公演を重ねながらそのズレと時間をかけて向き合い、確認してきたようなところがある。

▼そのときになによりも「すごいな」と思うのは、かならずしも私(松本)がやりたい演劇がその人自身にとって最も好ましい演劇ではないけれども、周りの仲間と一緒に演劇をやりたいから、本来の自分の守備範囲とはぜんぜんちがうところでプレーし、演劇をやってくれている人たちの存在だったりする。たぶん劇団主宰としてのいちばんのわがままな部分というのはそこで、私は自分の納得のいかない形で誰か別の人の演劇(のやり方)に乗っかる、ということが致命的にできない。演劇をやるんだったら「こういうやり方で、こういう演劇をつくりたい」というこだわりが強すぎるために、周りの人たちにも変なことばかりさせている気がする。

▼つたない集団創作を延々と試して「こんなつくり方してたら演劇なんかできないよ!」と稽古場でめっちゃ怒られたことや、「ラストシーンで着ぐるみの頭を取るのかとらないのか、はっきり決めろや!!!」といって楽屋で怒られたこと、全員全身タイツを着ながら「真面目にやってくださいよ!!」とドツかれたことや、稽古場で「…これって本当におもしろいのかな……?」と一人の俳優が腕組みしたまま下を向いて固まってしまった光景なんかが割とすんなりと頭に浮かぶ。

▼そうして怒ったり戸惑ったりした彼らはみな、普段はとても穏やかないい人たちばかりなわけで、そんなやさしい人たちを激昂させてきたのだから、どれだけ常識人ぶったって自分自身もたいがいわがままで自分勝手なヤバい奴なのだな、と思う。演劇団体の主宰を名乗ってみたときから、自分のやりたいことで周りを振り回して、時に何かを強いて、時に何かを我慢させている。

▼だからというわけでもないけれど、自分と自分たちが何を是として演劇をつくっているのか、そしてこれからつくろうとしているのかをすこしずつ言葉にしていけたらと思った。ごくごくちいさな演劇論をことしちょっと書いてみようと思っている。私たちがなにを大切にしてきて、今もってなお演劇になにを期待しているのか。この集団で何を達成しようとしているのか。周りを巻き込んでカンパニーをつくり演劇を始めてしまったことについての、十年目の卒業論文みたいなもので、集団や場を主宰することのちょっと歪な力のありようについても自分なりに答えられたら、と思っている。

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◆2024年の年末に『桜の園』ソロ・こごえという作品を上演しました。

◆2024年5月にはじめての野外劇を上演しました。
平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
【公演詳細】

◆2024年5月、上記公演の実施にあたって平泳ぎ本店は戸山公園で野外劇を上演するための所作台(舞台床面)を製作するための資金調達に取り組み、日本全国の73名の方々から535,000円の応援をいただき無事に成功しました。ありがとうございました!

【平泳ぎ本店 クラウドファンディングについて】
「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」

◆本日もご清覧頂きありがとうございます。もしなにかしら興味深く感じていただけたら、ハートをタップして頂けると毎日書き続けるはげみになります!

◆私が主宰する劇団、平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co . では向こう10年の目標を支えて頂くためのメンバーシップ「かえるのおたま」(月額500円)をはじめました。
メンバーシップ限定のコンテンツも多数お届け予定です。ワンコインでぜひ、新宿から世界へと繋がる私たちの演劇活動を応援していただければ幸いです。
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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第9回公演
『(タイトル近日発表予定)』
2025年 初夏

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