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20241025 So, Theatrical?

ちょうど私くらいの世代(30代半ば)というのはいろいろな価値観が入れ替わっていくその接点みたいな”ジェネレーション”であって、それは昭和の価値観と平成の価値観、そして令和の新しい価値観という、言ってみれば三つの価値観の汽水域みたいな世代に育ってきたような感覚がある。

▼「ん、なんかこれ嫌だな」という、たとえばスポーツや表現、社会の中の暴力的なところが少しずつコンプライアンスやポリティカルコレクトネスによって矯められていくのを眺めながら、それが心安らかでもあり、それでもその流れを長く眺めている間に必ずしも「なんでもかんでも新しくアップデートしていけばいい」とも思っていないことに自分であらためて気がついて、ちょっとむつかしいところだな、と思っていたりする。

▼暴力はダメだけれども非日常は見ていたいし、コンプライアンスは遵守したいけれどもイカレたものはみたいし、どれだけガイドラインを整備してもなんかちょっと日常からかけ離れた変な人やものがみたい、と思う。言い方が難しいけれども「普通のことなんか見たく/聞きたくないんだよ!!」と、思っている。それも結構強く思っている。

▼私も人並みに憧れているアンダーグラウンド世代の演劇の巨人たちが、このところ少しずつこの世を卒業していっている中で、残されたこの世の人たちがどんどん普通の人たちになっていっているのがものすごく、かなり、気になっている。演劇をやっているけど一皮剥いたら普通の人じゃん、みたいな、ちょっと(相当)がっかりするところを見かけたりして、幻滅なんか一向にしないけれども「マジでつまらないな!」と思ってしょんぼりしてしまったりした。

▼このところ少しの間アングラ演劇をやっている人たちの口喧嘩、という、この世の中で役に立たないもの一、二を競うほどにしょうもないものを遠くからぼんやり眺めながら、なんというか、誰ひとりとして芝居がかっていないのがずっと気になっていた。地に足をつけて、普通の言葉で(というか最も愚劣なSNSの言葉で)素手の殴り合いをしているような次第で、ぜんぜん気が利いていないのがやばい、と思った。そう、てんで文学的でないのだった。

▼かつて新劇が形骸化してスカスカになっていったように、アングラだって同様に痩せるしあっという間に形骸化していく。まずそこにいる人たちの使っている言葉がつまんなくなったらもう衰退の兆候だと思ってよいと思う。憧れて見上げてしまったらもうその時点で、もうそこへは辿り着けない。荒ぶる御霊そのものになるかならないかという時に、そうなれないのを時代のせいになんてできなくて、結局のところそこに居合わせている者たちのスピリットの勝負である。こんな時代でもなお、自分と自分の周りくらいはもうちょっと”芝居がかって”生きていたいものだぜ、と、普通のことなんか見たくないんだよと、あらためて思い直したりしていた。

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「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」

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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【公演詳細】

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