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20250302 吐く息は青くて弥生

5月の公演でも幸いにしてアーツカウンシル東京の助成金に採択してもらっているので、予算にもいくらかの幅がもたせられているけれどもこういう助成金がなかったらかなり厳しい予算組になってしまう。それぞれの出演者の方やスタッフに支払う謝礼をなるべく少なく抑えて、そうして観客の方からいただくチケット代金をすこし値上げすることが必要になってくる。

▼小劇場の演劇のチケット代が値上がりしている、という話はもうそこかしこでさんざんされていることではあるけれども、最近だとちょっとうっかり下北沢などに話題の作品を観に行こうと思ってふらっと観にいくと6000円を超えてきたりするので「ろ、ろくせんえんかああ…」と、ロビーの隅っこで青い吐息を吐き散らかしたりしている。ミュージカルなんかも、ここ数年でものすごく値上がりしているという話も耳にする。(こうなってくると年間500本演劇を見て絶望する、みたいなことも難しくなってくる。)

▼ほんのちょっと前まで演劇のチケットってまだ2,000円台のものもあったよな、という気持ちもありつつ、「今はもうとっくにそんな時代じゃなくなった」という気持ちが胸の内でぐるぐるとする。演劇のチケット代の値上がりには物価の高騰や経済の衰退も原因になっているとはいえ、もう一つには公演に関わるすべての人たちに正当な報酬を支払おうとする主催者側の努力(ex.「高くても観にきてもらえて、しっかりと満足度の高い公演にする」)も含まれているわけで、あまり手放しに不満ばかり述べるべきでもないよなぁ(特につくり手の自分は)、とも思う。

▼チケット代をなるべく安く設定するのにも根拠がいる。どれだけ価格を抑えて設定したとしてもそれがそのまま主催者の赤字につながってしまうのでは持続可能性がない。公演の収支を考えてきちんと採算が取れるように設定しなければならないし、できることなら黒字にして収益を上げられるくらいでなくてはいけないけれど、それができるのは本当にごく限られた超人気カンパニーだけだよな、と思ったりもする。

▼そうしてまた、演劇というのはそもそもチケット代の売り上げだけで収支が採れるものではない、というのも大きな課題というか、難しい前提だ、と思う。往々にして観客の動員だけでは公演予算を支えきれない。だから文化芸術に対する助成金も基本的には赤字補填の形をとっていて、”赤字でなければ助成しない、黒字になったら助成金額を減額する”という、へんてこなことになっている。「一般的な事業とちがって、普通にしていたら赤字になるから公的な助成が必要」というロジックもわかるけれどもなんだかモヤモヤしてしまう。演劇をやっていて公演でのチケット代以外の売り上げを立てるというのは、たとえばそれが物販であれ、ワークショップなどの教育・普及活動であれ、けっこう大変なことではある。

▼「ご随意に」といってチケット代という制度そのものやめたSCOTのサマーシーズンのような例もあって、「一枚いくら、というチケットの販売をやめて、一人ひとりに払いたいだけの入場料を『ご随意に』払ってもらうようにしたら結果的に収入が増えた」というような話もあって面白いな、と思う。演劇活動を支えるのにもいろんなやり方がある。既存の枠組みも頼りながら、(劇場費を浮かせて人件費を別の形で賄えるような)自分が一番しっくりくる形を探せたらな、と思っている。
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◆2024年の年末に『桜の園』ソロ・こごえという作品を上演しました。https://note.com/hiraoyogihonten/n/n061602834a82?sub_rt=share_sb

◆毎週水曜日に西早稲田近辺で舞台俳優のためのファンダメンタル(基礎トレーニング)を実施しています。

◆2024年5月にはじめての野外劇を上演しました。
平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
【公演詳細】

◆2024年5月、上記公演の実施にあたって平泳ぎ本店は戸山公園で野外劇を上演するための所作台(舞台床面)を製作するための資金調達に取り組み、日本全国の73名の方々から535,000円の応援をいただき無事に成功しました。ありがとうございました!
【平泳ぎ本店 クラウドファンディングについて】
「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」

◆本日もご清覧頂きありがとうございます。もしなにかしら興味深く感じていただけたら、ハートをタップして頂けると毎日書き続けるはげみになります!

◆私が主宰する劇団、平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co . では向こう10年の目標を支えて頂くためのメンバーシップ「かえるのおたま」(月額500円)をはじめました。
メンバーシップ限定のコンテンツも多数お届け予定です。ワンコインでぜひ、新宿から世界へと繋がる私たちの演劇活動を応援していただければ幸いです。
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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co.
第9回公演『英雄たち』
作=秋浜 悟史
演出=岩澤 哲野(theater apartment complex libido:)
戸山公園(箱根山地区)野外演奏場跡
2025年5月30日(金)ー6月1日(日)
毎日18:30開演

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