20240830 勝手にタイムアタック
あるとき新潟の短編演劇祭に出場する機会があって、稽古をしていた際の第一の懸案事項が制限時間の20分に対して初めて台本を読んだときに全部で30分以上あったことだった。10分オーバーはさすがにお話にならないので、その10分を削り出す作業が始まった。
▼そもそもの問題は台本にある、ということで不要な言葉やくだりを続々とカットしていった。20分の制限時間に対してよくもまあこんなに沢山書いたものだと己に憤りながら(私が書いて私が演出していた)、俳優が読んでくれる声を手がかりにテキストレジ(台本の編集)を進めていった。俳優が実際に読んでくれると書いたものがただの文字か演劇の台詞になりうるのかがよくわかるので、ちょっとおもしろい。
▼そうして稽古を繰り返していくうちにコンスタントに20分台が出るようになってきた。それでも20分58秒とか20分40秒とか、限りなく21分に近い20分だったのでぜんぜん油断ならなかった。作品のバランスを崩さず、意味内容を失わないように台本を少しずつ削っていった結果がそれだったので、それ以上はいかんともしようがなかった。
▼そうなってくるとあとはいかに上演の不要な間(ま)をとっていけるか、という作業になってくる。だいたいどんな舞台でも本番が近くなるとそういう「余計な間をとる」という時間が訪れる。そうすることで全体にスピード感が出て、作品がちょっと締まる感じがする。本番が近づくと演出家が「ここはちょっと余計な間を取ってみましょうか」という、舞台づくりのテンプレートみたいなものでもある。
▼上演していた作品の構造的にひとりが台詞を言って、あとの二人がそれを繰り返すコールアンドレスポンスがベースになっていたので、そのリーダーにあたる俳優がいかにテンポをコントロールするかが肝だった。台本も削ったし稽古もしたし、演出としてはあとはもう「頑張ってくれ」と、舞台上の俳優にゆだねるよりほかなかった。
▼新潟へ向かって関越道を飛ばしている車中でも俳優の三人はずっと台詞を合わせていた。上演の制限時間を守るというのは参加する団体としてその大会のルールに敬意を払うということでもあるので妥協はできなかった。その頃になると俳優たちはほとんどアスリートみたいな様相を呈していて、本番直前の舞台上では「いいか、余計な間を開けやがったらブチ飛ばすぞ」という試合前のラグビー部みたいな檄が交わされていたようだった。なんだかもうとにかく最高スピードで俳優三人が駆け抜けるという、気が付いたらそういう作品になっていて、本番では19分20秒という、かつてないほど短い上演時間でパフォーマンスを終えたのだった。上演の成果どうこうよりも上演時間に対するタイムアタックみたいな感じになってはいたものの、いざ結果が出てみると世界記録の更新みたいな充実感を覚えていた。
当該作品の冒頭部分。
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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
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