20240621『若き日』セルフライナーノーツ④
Photo by Mikio Kitahara
ふと思い立って先の公演のセルフライナーノーツを書いてみようと思った。私たちの『若き日の詩人たちの肖像』は上演時間60分の作品で、オープニングとエンディングを合わせて20のシーンからなる。リハーサルではひとつひとつのテクストを俳優たち自身で選定し、シーンを立ち上げていった。私たちの創作はどことなく音楽のアルバムを作るときのそれに似ているような気がして、せっかくなのでセルフライナーノーツとして、覚えている限りでその過程を書き留めておければと思った。
「4 レニンを読む」は現地で稽古をしていた時に戸山公園のあの場所の六本の柱を前にして、誰ともなしに即興でやってみた動きから出来上がった。戸山公園での上演では六本の柱の後ろに隠れていたところを、犀の角へ行ったときには犀の角の窓際に置いてあった本棚の中から本をとって、その本で顔を隠すという形にアレンジされた(犀の角で私が手に持っていた本は唐十郎さんの『夜叉綺想』の初版本だった)。
▼レニン(レーニン )という人の存在の厚み、その思想が持っていた求心力を思う。『若き日』の作中でも、主人公の少年が従兄弟から預けられて下宿に隠し持っているレニンの本、というのがとても印象的に描かれている。それほどに強い影響力を持っていた、当時も絶賛当局からの弾圧の対象となっていたセンセーショナルな本を「今読んで」いる、ということが周りの人に与える影響や恐れみたいなものを六人で立体的にできたら、と思っていた。
▼折しもフランスで、人民戦線の集会でも高校生がレーニンの言葉を引用していたのがとても印象的だったりした。https://x.com/inlaforet/status/1803238959574577242 時代を超えて自由を求める人々を鼓舞し、立たしめる言葉というのがあるのだ、とすこし心強いような気持ちになった(東京都知事選の惨状をみると、やや絶望的な気持ちになってしまうけれど)。
▼偉大な思想家の、「大きな論文はもちろん、短いエッセイも読むと良い(大意)」という言葉からは古き良き日の憧れのインテリゲンチャの姿が垣間見えるような気がして、個人的にはその言葉がとても好きだった。柱の影に隠れてみんなで動いてみたときに松永が「このまま踊り出してみたいんだよな…」と言っていたのをよく覚えている。
▼「5 収縮」は、堀田善衞さんが初めて詠んだという短歌を元にしたごく短いシーンだった。紆余曲折を経て、一時はカットしようとも思っていたところなんとかあの形に落ち着いた。このシーンに限らず、『若き日の詩人たちの肖像』という小説は淡々としていながらたまに「……ん?」というような場面や言葉が急に現れたりする。その唐突さにやや虚を衝かれてしまうのだけれど、その”感じ”を演劇のシーンにできたらな、ということをリハーサルの時には話したりしていた。
▼「5 収縮」は創作初期にはもっとまとまりのない、輪をかけてとっ散らかったバージョンというのも存在していて、それは稽古場でのはじめての通しをみてくれた舞台監督の齋藤さんが真に困惑していたのを見て「これはヤバいかも…」とそっとボツになった。今回の創作では齋藤さんがいてくれたおかげで、これまでの創作だったら本番週の火曜日に起こっていた稽古場での通し稽古というのを一週間前倒しにすることができた。そのおかげで構成は今までに比べてはるかに練ることができたのだけれども、他のプロの人たちの創作に比べてぜんぜん時間が足りていないのは未だ課題であって、その辺りの創作時間をどう確保していくかということをカンパニーとしては真剣に考え、改善していかないといけないなと思っている。
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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【チケット】
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02czx9t72zj31.html
【公演詳細】
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