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20240608 油断ならないサイリウム

先の公演のアフターイベントでサイリウムを使う機会があった。野外劇のバックステージツアーの一環として、舞台面の説明だけでは説明すべきことが少なく、もしかしたらあまりにも早く終わってしまうのではないかというので、夜の箱根山に登ってみよう、その時に足元を照らしてもらうのにサイリウムを使ってもらおうという趣向だった。

▼サイリウムは劇団の倉庫にたくさん在庫があったので、それを使えばいいと思っていた。自分たちの公演で使うことがあって、100本以上の在庫があることを把握していた。サイリウムや、ピカピカ光る電球や、透明な風船とヘリウムガスや蛍光色の塗料で塗ったくった本やミニ四駆、といったよくわからないものが劇団の資材倉庫にはたくさん眠っているのだった。

▼公演初日、本番を終えてアフターイベントに参加してくれる人を募ってみると想像以上に多くの人たちが客席に残ってくれていた。当初アフターイベントに参加してくれるのなんて一人か二人か、多くて5人くらいだろう、といってスタッフからも出演者からも冷笑されていたから、想像を遥かに超えて多くの人が残ってくれたのは嬉しい誤算だった。

▼そうして箱根山に登ってみると一つの違和感に気がついた。参加者が手に持ってくれているはずのサイリウムが光っていないのである。いや、よく見るとあわーく淡く光って入るのだが、それにしても淡すぎて見えないほどの光なのだった。「…なんで?」と思いつつ、初めてのアフターイベント、ちゃんと光らないサイリウムということで放出されまくる胃酸とは裏腹に、思考は完全に停止してしまっていた。

▼次の瞬間「あっ」という声と共に、参加してくれていた方のサイリウムが折れて中のよくわからない液体が漏れ出ていた。話を聞くと「あまりにも光らないからグネグネ折り曲げまくっていたところ、本当に折れて液体が漏れてしまった」ということらしかった。そもそもサイリウムなのに光らない、というだけでかなり頭に来ていたところ、耐久性にも乏しく中身を吐き出しお客様の手を汚すに至って「なんでこんなことになるのかね!?」と、光らないサイリウムに対して大声を出しそうになりながら、お客様にハンカチを手渡したりして必死に事態の収拾に努めていた。

▼初日を終えて、最も大きな反省というのがこのサイリウムのことだった。光るべきサイリウムが光らなかったことに対して、私は最も深く傷ついていた。「(光らなかったのは)何故なのか?」という気持ちを隠すことができずに、でも夜のイベントでお客様の手にサイリウムを持ってもらいたい!という直感はなんでだかあったので、どうしたものだか考えあぐねていた。そうして舞台監督の齋藤さんの、「落ち着けよ、サイリウムなんかドンキホーテにいくらでも売ってるよ」という一言でだいぶ落ち着きを取り戻したのだった。

▼そうして翌日の本番前、いそいそとドンキホーテへと行ってみると確かにサイリウムが売っていた。10本で1パック、なんか思っていたよりもだいぶ太かったが、兎にも角にもサイリウムが見つかったのだからこれで大丈夫だろう、と思って縋るようにして購入した極太のサイリウムはまさかの点灯時間がたったの3分間なのだった。

▼まったく意味がわからなかった。お祭りなんかで手に入るサイリウムといえば、お祭りの間はもちろん、なんなら翌日の朝まで光っていたような気がするのですっかりそれくらいの時間点灯してくれるものと思っていたら、私が買った極太のそれは、圧倒的な光量と引き換えに点灯時間がたったの3分しかないのだった(オタ芸の人たちが持ってぶん回しているものと同じものらしかった。)。「ウルトラマンかよ!!!!」と、思わず吐き捨ててしまった。ちゃんと長い時間光るサイリウムひとつ満足に調達できない劇団主宰、それが私なのだった。

▼とはいえその極太のサイリウムは光量は見事なもので、いざ夜の箱根山に登ってみるときに皆さんが点灯されると、なんというか百鬼夜行の趣もあって、それはそれで綺麗で嬉しかったのだった。

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野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」

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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【チケット】
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【公演詳細】
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