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20240818 おじいさんwith US

養成所に通っていた時分、教室の壁には劇団関係者の公演フライヤーなんかがよく貼ってあって、養成所の生徒は割引で申し込んで観に行くことができた。よくわからん舞台も多かったがたまに割と大きく有名な舞台の案内も来たりしていて、折に触れて観に行っていた。

▼養成所には生徒たちの面倒をみてくれる主事の人がいて、希望者はその主事の方に日程の希望を伝える。養成所は昼間部と夜間部の二部制だったので、その生徒達全員の面倒をみるとなると朝から晩までほぼ稽古場に付きっきりということになる。拘束時間だけ考えてもものすごく長い、大変な仕事だったと思う。

▼生徒も生徒でたまに授業料を払わなかったりする者がいたり、日々こまごまとした連絡事項や確認事項がたくさんあったりして、それらをケアしながら面倒をみるというのは並大抵のことではなかったと思うのだが、主事の人はいつもニコニコしていて穏やかだった。

▼もともとその劇団で制作をしていたその方は、現役を退いてから若い生徒たちの面倒をみるために主事の仕事に戻ってきてくれたのだった。どんなことをお願いしてもニコニコと「はい、はい、わかりました。大丈夫です。」と答えてくれるのだが、明らかに大丈夫ではないときにもそうして「大丈夫です」と答えてくれる様子は完全に忙殺されている人の頭の回っていないそれで、すこしうつろなところもあったりしたので、たまに心配になった。

▼通っていた劇団のアトリエには当時管理人さんのおじいさんがひとり住み込みで働いていたりもした。特段演劇に詳しいわけではない、青いツナギを着た耳の大きなおじいさんだった。舞台を夢見る若者達の日々の授業を、そうしてなかばリタイアした高齢者の人達が支えてくれていたのはなんかちょっとおもしろかった。

▼あるときものすごくお年を召した演出家の先生が当たり前のように稽古場で煙草を吹かし始めたときの新鮮な驚きは忘れられない。私たちの時代にはすでに分煙が進み、稽古場でも喫煙所は別に用意されていたから、当たり前のように絶対に吸っちゃいけない場所で煙草を吸うその先生の姿に昭和の影を見るような心地がした(考えてみれば「演出家が灰皿を投げる」というエピソードも、稽古場での喫煙がOKであればこその話ではある)。後年その演出家の方が亡くなり、その方の遺品の尺八を舞台で吹いたりする機会があったりもした。そのようにして私たちはさまざまな高齢者の方に支えられながら、演劇を学んでいた。

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◆日本全国の73名の方々から535,000円の応援をいただき、資金調達が無事に成功しました。ありがとうございました!!
【平泳ぎ本店 クラウドファンディングについて】
「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」

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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【チケット】
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02czx9t72zj31.html
【公演詳細】

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