見出し画像

20241012 黒ゆでたまご

子どもの頃は中部地方の郊外に暮らしていて、あまり有名人らしい有名人と出会う機会もなかったのだけれど、あるとき近所のラーメン屋さんで同級生と昼食を食べている時にテレビのロケの一行が入ってきて、私たちが食べていたランチセットを指して「餃子もご飯も付いてそのお値段なんか!?」とテレビっぽいテンプレートのコメントを投げかけてきたのが他ならぬ坂東英二さん(以下、敬称略)だった。

▼何気なくラーメンを食べていて、ふと顔を上げるとなんか知らないけれども中部地方で絶大な知名度を誇る坂東英二が目の前にいた。ゆで卵が好きなことで有名なプロ野球選手上がりのタレントのその人は、素人の中学生からみても存在感の圧がすごかった。ドス黒い押し出しというか、芸能人のギラつきみたいなものを、豚骨ラーメンを啜りながらビシビシと感じていた。

▼地元の数少ないラーメン屋であったそのお店は、どんなお店でもそうであるようにオープン当初は現実に擦れておらず、多少手数やコストがかかってもやりたいことをやっているな、と感じさせてくれるオペレーションで、中学生ながらにそのことをとても好ましく思っていた(お冷にレモンが浮かんでいたり、そういうちょっと上品なラーメン屋さんだった)。

▼高校へと進んでからは、名古屋の別の高校へと進んだ同級生と数ヶ月に一回近況報告も兼ねてそのラーメン屋さんで食事をするのがお決まりになっていた。ラーメンをすすって、その後延々と夜の地元の街を歩いていた。ファミレスやカラオケなどへも行かずに、とにかくよく歩いていた。たわいのないことでも、話すことが結構たくさんあった。

▼高校生の時に姉に初めて音楽のフェスティバルへ連れていってもらった時、夜地元の駅に帰ってきて小腹が空いたからとラーメンを食べに行き、生まれて初めて外で瓶ビールをほんの少しだけ飲ませてもらったのもそのラーメン屋さんだった。夏で、シンプルに喉が渇いていて、ビアタンから飲む瓶ビールがなんだか甘いような気がした。

▼ラーメン屋で坂東英二と邂逅した様子が地元のテレビのゴールデンタイムで流れたとき、「おい今テレビ出てたよな!?」と、同級生の何人かから電話やメールが届いた。ふだん滅多に話さない同級生からの連絡に、テレビの影響力ってすごいんだな、と当たり前のことを思った。中学3年の受験生が呑気にラーメンなんか食べててよかったのかな、とすこし心配になりながら、ドス黒いオーラを放つゆでたまごみたいな坂東英二の面影をすこし思い出していた。

*****
◆日本全国の73名の方々から535,000円の応援をいただき、資金調達が無事に成功しました。ありがとうございました!!
【平泳ぎ本店 クラウドファンディングについて】
「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」

◆本日もご清覧頂きありがとうございます。もしなにかしら興味深く感じていただけたら、ハートをタップして頂けると毎日書き続けるはげみになります!
◆私が主宰する劇団、平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co . では向こう10年の目標を支えて頂くためのメンバーシップ「かえるのおたま」(月額500円)をはじめました。
メンバーシップ限定のコンテンツも多数お届け予定です。ワンコインでぜひ、新宿から世界へと繋がる私たちの演劇活動を応援していただければ幸いです。
→詳しくはこちらから。https://note.com/hiraoyogihonten/n/n04f50b3d02ce
◆コメント欄も開放しています。気になることやご感想、ご質問などありましたらお気軽にコメント頂けると、とても励みになります。どうぞご自由にご利用ください。

平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【公演詳細】

ここから先は

0字

かえるのおたま

¥500 / 月
このメンバーシップの詳細

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?