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20240917 紙のさびしさ

筋トレをしている人たちがよく使うものの例えとして「一枚ずつ紙を積み上げていく」というのがある。一枚ずつの紙の厚さはごく薄く、数枚積み重ねただけでちがいはわからないけれども、それが数百枚、数千枚となったときに大きな違いとなって現れる、というイメージである(鈴木雅さんやジュラシック木澤さんとかがよく言っている)。

▼歴史をつくる、なんて大仰な言葉を使わなくても私たちの一人ひとりは絶えず歴史のただなかにいる。そこに存在して、日々を過ごしているだけで何かしらの歴史を担っているといえる。

▼たとえば舞台芸術、演劇のことを考える時、そこにはいつもなんとなく”日本”と”日本以外の国々”の壁がある。舞台芸術を取り巻く環境として日本はあまり恵まれていない、とか、そういう文化的な土壌が乏しい、というクリシェみたいなものはいつだって聞いたり読んだりすることができる。根本的な状態は数十年くらいではそう大きく変わらない。

▼海外に目を移せば羨ましいものはいくらもある。いま日本にはなくて海外にあるもの、環境、恵まれた条件や高いレベルのアーティストや観客、芸術を取り巻く言論、それらを根底から支える様々な資本、だとか一つずつ挙げていけばほとんどキリがない。

▼日本にはなくて、海外にはあるものを羨ましいな、と思う。それは現実問題として、いま私たちの目の前にはないからだ。それらの不在について日本にいながら「ああ、今ここにはあれやこれがないな…」とぼんやり思う。それはちょっと寂しくて、心許ないことではある。

▼ああでもこれは紙の寂しさだ、とふと思った。ひとりの人間が生きていて、その間に成し遂げられることなんて言ってみれば紙の2枚か3枚くらいのことでしかない。いきなり数百枚の紙を積んでコピー用紙のブロックみたいなものをつくれるわけではない。一枚ずつ積み重ねていくにはどうしたって時間がかかる。最初の二、三枚の紙は高く積み上がったブロックを目の当たりにすることは最後までないだろうけれども、想像することはできる。多分自分が見ないものを想像することは、寂しくもあるが、同時にこの上なく楽しくもある。

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「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」

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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【公演詳細】

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