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心の任期をつくることで見えた景色

はじめに

"もし今日が人生最後の日だとしたら、今日やろうとしていることを本当にやりたいだろうか?"

Steve Jobs, 2005

この言葉は、2005年のスタンフォード大学の卒業式で、Steve Jobsのスピーチの一節です。

毎日ではないですが、もう少し長い期間で考えました。特に、自分の役職であるCDO(Chief Design Officer)について。

なぜ、こんなことを考え始めたのか?それは、今年の5月に39歳の誕生日を迎え、最後の30代を迎えたからです。来年から始まる「40代の10年間をどう過ごしたいのか?」「CDOの任期をいつまでやるのか?」といった問いに落ちました。


CDOのイスに潜む魔力

CDOという役職のイスには、非常に魅力的な魔力があります。多少なりとも役職の下駄を履くことで外部の注目を集め、何かよくわからない「ちょっと凄いかも感」も醸し出します。一般的には、高収入待遇が保証されます。そのような魔力が潜んでいるイスです。何よりも恐ろしいことは、とにかくこのイスに座り続けたい「欲求」も湧いてきます。

なので、僕の座り続けたい欲求は、ゼロにはなりません。この文章を書いている時でさえ「あぁ!何も考えずに座り続けたい!しがみつきたい!」と思っています笑。


開拓精神と実践者の牙

一方、このポジションに固執し、座り続け場合どうなるのか?その時の最悪の状況を想像しました。まず、想像したことは、現状に満足して、これ以上の挑戦をしなくなり「39歳が人生のピークだったな」とふり返ること。そして、気づいた時には、デザイナーとしての開拓精神や実践者としての牙が抜け落ち、挑戦者でなくなっていること。または、40代半ばで、椅子を剥奪され会社を追われる…汗。そんな状況を想像して、怖くなりました。

以前、株式会社ベイジの代表&クラスメソッド株式会社CDOの枌谷さんのツイートで記載された「ジワジワBさん」のような人生って、凄く素敵だと思うんですよね!僕はそんな人生を歩みたいのです!


心の任期

こういった状況を踏まえ、CDOの「心の任期」をつくりました。もちろん、役員なので「明日、会社辞めます!役員おります!」といった身勝手な行動はできません。現実に役職を降りる場合は、CEO含めた承認なども必要になります。あくまでも「心の任期」に過ぎませんが…。




あと1年半(2024年12月末まで)
としました!




以前から、CDOを引き継いでみたい!といった話をしてましたが、明確に日付をきったのは、初めてです!




兎にも角にも「心の任期」を決めたら、世界が見違えるようになりました。だって、残された時間は、あと1年半しかないのです!!

3年や5年もあれば、できることはたくさんありますが、1年半しかない。これは、本当に良い意味で、自分の意識改革となりました。

まず、自分じゃないとパフォーマンス&結果がでない仕事に集中的に取り組むようになりました。つまり、重要でもなんでもない100の仕事に「No」と言う覚悟ができたのです!時間が限られている以上、重要ではない仕事に取り掛かっている場合ではありません!そこから、僕の強みと弱みは何か?と自己認識が深まっていきました。


僕の強みと弱み

僕の強みは「メンタリングと育成」で、弱みは「事務作業」です。

💮 育成で大切にしていること

1. チャレンジ案件と足場を用意する
2. 足場は用意するだけ(そこには上がらない)
3. 誰かと一緒にやる状況をつくる(一人でやらせない)
4.できる前提で向き合う(素人・初心者扱いしない)

🤝 僕の弱みは、誰かの強み

まず、弱みが露呈する仕事は、デザイン組織の秘書さんを採用し、解決しました。契約書のやり取り、日程調整、請求書の申請、予算管理などなど。そうすることで、弱みが露呈する仕事での「ストレス」が消えました。

採用した秘書の方は、サポートすることに喜びを感じる人柄で、事務作業も大得意です。自分の苦手な仕事って、誰かの得意な仕事の可能性でもあるんですよね。しかも、その仕事を楽しめてしまう!もす、なくてはならない存在であり、元の世界線には戻れません!

上記が、どれくらい感動したかが分かるポッドキャストはコチラです。


📖 強みの裏付け

僕の強みが「メンタリングと育成」だと言い切れる背景には「The Leadership Circle」というリーダーシップのアセスメントチェックの結果があります。

複数のリーダーシップを測る観点があるのですが、その中のひとつ「メンタリングと育成」が90点超えの高評価。グローバル企業のリーダーと比較してもトップ10%に入る結果がでました。(※ちなみに、それ以外の項目は…。残念な結果でした😇)

リーダーシップ・サークル・プロファイル の統計的信頼性(バリデーション)は確認されていますか?
はい。6年間におよぶ広範囲にわたる心理測定分析が、リーダーシップ・サークル・プロファイルの開発に取り入れられています。妥当性は統計的根拠に基づい測定されています。

https://leadershipcircle.com/ja/products/leadership-circle-profile/

僕は「メンタリングと育成」が強みでした。もう、ここを伸ばして、伸ばして、伸ばしまくることが、40代の自分のデザイナー人生の生存戦略のひとつであると思い込むようにしています笑。

ただし、マネジメントだけやるデザイナー?マネージャーには、なりたくありません。「プレイングマネージャー」こそが僕の目指すべき高みです。そして「メンタリングと育成」は現場と繋げてこそ、価値がでると信じています。

つまり、僕の「メンタリングと育成」は「デザイナーを成長させるための仕事を生み出すこと」とセットで効果が発揮しやすいのです!




だからこそ、「デザインカンファレンス(=新しい仕事)」を構想中です!




その名も「SaaS Design Conference 2022」。僕たちが所属するデザイン組織「Uzabase SaaS Design Division "DESIGN BASE"」が主催するSaaSのデザインに関するカンファレンスです。


SaaS Design Conference 2022

既に、日付は決まり「11月26日(土)」に開催します。9月末までにWEBサイトを公開しますので、是非、楽しみにお待ち下さい!!

なぜ、カンファレンス?

インハウスのデザイン組織のBXデザイナーは、マーケティング部署から、プロダクトデザイナーであれば、プロダクトオーナーから仕事依頼がくる場合が多いと思いますが(もちろん、組織文化によってよって異なる場合もあるでしょう)どうしても既存の枠組みだと、学びづらいデザインの観点があります。それが「構想段階」の仕事です。

この構想段階の仕事に関わることで、デザイナーの成長は加速し、リードデザイナーになると考えています。もちろん、構想段階の仕事の責任とセットで!失敗が人を成長させるといったことは、様々なメディアで言及されていますが、構想段階の仕事は、失敗を前提に立て付けることが難しいシーンが多いです。だからこそ、自分たちで創出した仕事であれば、失敗を許容しやすく、そのリスクをコントロール可能になります。

もし、カンファレンスを開催すれば、コンセプトやメッセージの開発に始まり、キャスティングやスポンサーの料金テーブルの設計。WEBサイトやグラフィックの造形表現。そのグラフィックをグッズや会場装飾まで展開可能にするアートディレクション。オンライン参加者のためのインタラクションの設計など、様々な構想段階の仕事が生まれます。

オペラは総合舞台芸術に例えられますが、カンファレンスも構想段階から造形表現まで、かなり総合的な性質を持つデザインではないでしょうか。そのような仕事に挑戦したいデザイナーにとって、カンファレンスは最高の足場と演目になるはずです。


BtoBのデザイン業界の採用課題

また、デザイナーの採用活動を通して、SaaSや業務システムやBtoBのデザインに関わるデザイナーの母数が圧倒的に少ない(足りない)ことを痛感しています。

知人のデザイナーや他社のCDOとの話すことを通して、これは自社だけでなく、同業他社、BtoBのデザイン業界にまたがる課題なんだと感じました。もっとBtoBに関するデザインの面白さを伝えていき、母数を増やさなければ、業界全体がシュリンクすると考えています。

例えば、ALL STAR SAASの『SaaSプロダクト組織を作るなら知っておきたい「B2BとB2Cのプロダクトマネージャー」6つの違い』の記事で、B2BとB2Cのプロダクトマネージャーの違いが言及されています。

この記事の中で「重要度の高いプロダクトマネジメント業務は?」の質問に対してのプロダクトマネージャーの回答が興味深かったです!

B2B
1位 プロダクトビジョン/戦略策定(32%)
2位 ロードマップ策定/優先順位付け(27%)
3位 プロダクト開発(26%)

https://blog.allstarsaas.com/posts/b2bb2c-pdm

B2C
1位 プロダクト開発(32%)
2位 ポジショニング/メッセージ作り(19%)
2位 市場拡販(GTM)の実行(19%)

https://blog.allstarsaas.com/posts/b2bb2c-pdm

この記事の示唆を下敷きすると、BtoBとBtoCのデザイナーに求められることにも違いがあり、そこに面白さがあるのではないかと。その面白さは、まだまだデザイン業界に伝わっていません。自分たち含めて言語化もできていません。このカンファレンスを通して、少しでも前進させていければ良いなと思っています。


おわりに

「もし今日が人生最後の日だとしたら、今日やろうとしていることを本当にやりたいだろうか?」

Steve Jobs, 2005

繰り返しですが、このSteve Jobsの一節は、自分が本当に今やるべきことは何かを自分自身に問いかけてくれます。2011年の東日本大震災で、僕は高層ビルで被災しました。とんでもなく揺れるフロアの中で、ここで死ぬかもしれないと感じました。ビルの階段を降りて、神谷町から恵比寿まで歩いている時に

「誰かのデザイン会社で働くのではなく、学生時代から挑戦したかった独立(フリーランス)をやろう!自分たちのデザイン会社をつくろう!」

と想いを新たにしたことを覚えいます(実際は、少し手前から準備していましたが、覚悟が決まったニュアンスですかね)

また、ユーザベースのパーパスは「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」なのですが、自分自身がビジネスを楽しんでいないのに、そういった世界をつくることは、自己矛盾になるなと感じることも多いです。自分の強みを活かした「メンタリングと育成」と「デザイナーを成長させるための仕事を生み出すこと」を組み合わせ、その足場と演目に取り組んだデザイナーが成長していく姿を見ることは、本当にワクワクします!


"組織というものは、問題ではなく機会に目を向けることによって、その精神を高く維持することができる。組織は機会にエネルギーを集中するとき、興奮、挑戦、満足感に満ちる。"

出典:PFドラッカー (著), 上田 惇生 (翻訳) (2001)『マネジメント 基本と原則 』ダイヤモンド社


ドラッカーの言葉を借りるならば、心の任期をつくることで見えた(未来の)景色は、自分の特性を最大限に活かして、デザイン組織全体が「興奮、挑戦、満足感」に満ちてる姿です。

残り1年半。余計なことは考えずに全力でCDOを駆け抜けたいと思っています!

念の為の補足ですが、1年半でユーザベースを辞めるみたいなことは考えていません。ここよりも最高のPlaygrandがあるのか?くらい楽しい環境なので、きっと僕は、次の挑戦を見つけてると信じています!

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