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工賃向上が必要だと思う理由

ご縁があり、某就労支援施設の工賃向上に寄与するプロボノ活動にチャレンジしてみることにした。

「親なき後に自活して生活できるように」工賃向上に取り組んでいる社会福祉法人様が多く、家族だった立場としては本当にありがたいと思っている。

私が工賃向上が絶対に必要だと思っている理由は、

「入院した時に、個室利用をするため」です。

障害者は、医療費はかからない。
だからなのか、入院した時のことは語られていないように感じる。

障害者が入院した際に、どういうことが起きたのか?

「うちの大学病院のうちの科で、障害者が入院した記憶がない。」

入院先の病院だって、コミュニケーションが難しい障害者が
重篤な病気で入院してきたら戸惑ってもおかしくない。

パニックを起こすのか?病状を意思表示できるのか?
家族はどの程度協力的なのか?世話はできるのか?
病気の障害者本人と、医療従事者と、家族の間で試行錯誤が始まる。

病院の病床数には限りがある。
医療従事者の人数にも限りがある。
そして何より、病院経営の問題がある。

入院当初は、無料の大部屋に空きベッドがなく、有料の大部屋に入った。
無料の大部屋に空きベットがでたタイミングで、お部屋を変えてくださった。

ただ、大部屋であることには変わりなかった。
同じ病室の病人の方から、嘔吐を繰り返す障害者に向けられる目は酷いものだった。

分からないわけでもない。
入院が必要な病気にかかり体調が悪いのに、食事時間でも関係なく嘔吐する障害者が同じ部屋にいるのだから。憎しみも湧くだろう。

家族の私がいる時ですら、こちらに聞こえるように看護師さんに「どうにかしてくれ!」と訴える。迷惑をかけられているんだから、こっちは見舞客が大勢来て長居したって大したことはないだろうと談話室を使わず自分のスペースからはみ出すほどの見舞客と大声で長時間話をする。
若い男性患者は、分からないだろうと、カーテン越しに恥ずかしげもなく彼女といちゃついている。おいおい、わかるんだってば・・・
私がいない時には、どんな目に合っていたのだろう。。。

障害者は、表現の手段があまり上手くできないだけで、何も感じないと思っているのなら大間違いだ。普通の人より、より敏感に嗅ぎ取っているんだ。

それでも、個室に移るべきなのか?迷った。
遠慮していたのか、コミュニケーションが取れないと諦めていたのか、
弟は枕元にある呼び出しブザーを使わなかった。(実際、使ったとしても看護師さんが来るには相当の時間がかかるか、忘れられるかだった。)
何かあったときに、大部屋の方が誰かが気づいてくれるのではないか?
大部屋にいた方が看護師さんの目に触れる機会も多いのではないか?

でも、もう弟に気を遣わせるようなことはしたくないと思い、問題がないのなら
個室に移らせて欲しいとお願いした。

個室は、1日1万円の部屋と、3万円の部屋があった。自己負担だ。
ラッキーなことに、ひとつしかない1万円の部屋に入らせてもらうことができたが
3万円の部屋だったとしても個室を選んだ。

個室に移ってからは、イアホンで聞いていた大好きな音楽も部屋に流せるようになり、車椅子に移乗して食事をし、日記を書くこともあった。
世話するこちらだって、毎日ベッド脇のパイプ椅子に数時間座るか狭いところで世話するかの状況から改善された。

結局、転院することはなかったけど、緩和ケアホスピスだって、なんやかやと
月30万円ほどはかかる計算だった。

いずれにせよ、思っているより遥かにお金はかかるのだということを、ことが起きてから知ることになった。(保険に入っていたらよかったのか?)

もし、お金が足りないから、無料の大部屋で過ごすしかない、となったら
本人も、病院も、家族も、もっと辛い思いをしていただろう。

だから、工賃をたくさん貰って、自由に使えるお金を貯めておくことは
本人にとっても、病院にとっても、家族にとっても、とても大切なことなのだ。

工賃向上のお手伝いができる一歩を踏み出せたことを、経験を積ませてもらえる機会を頂けたことを、とても感謝している。

何ができるか分からないけど、チャレンジしてみたいと思う。

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