第2号「カレーセンターマエダ」管理人 梅原浩之さん
取材日 令和4年5月27日(金)
取材者
滋賀短期大学ビジネスコミュニケーション学科 大川 莉奈、能勢 美羽
今回、取材させていただいたのは、今年2月1日に膳所ときめき坂にオープンされたカレーセンターマエダさんです。お話を伺ったのは、同店を運営する梅原浩之さんです。梅原さんに、お店の取組みや、仕事への想いなどについて伺いました。
お店の名前は、カレーショップでもなく、カレーハウスでもなく、カレーセンターマエダです。なぜ「カレーセンターマエダ」なのか、その理由は最後にご紹介します。
カレーセンターマエダを開店した経緯について
カレーセンターマエダさんは、外装、内装ともにとてもスタイリッシュで、おしゃれな雰囲気を醸し出しています。
同店が建っている現在のこの場所には、もともと古い民家があったそうです。
この民家は、社会福祉法人美輪湖の家大津を立ち上げた元藤大士さんの生家でした。1960年から70年にかけて、その家にいろんな人が出入りするようになったそうです。
元藤さんの父親は当時膳所高校の教員で、高校の関係者や教え子の方たちが頻繁に出入りされていました。このときに出入りされていた人たちで立ち上げたのが、美輪湖の家大津の前身である「瑞穂」でした(1978年設立)。
当時は障害福祉の制度もまだ整っていない時代だったため、任意団体という形で世の中をよくすることを目的に立ち上げられたそうです。その時は、2名の障害者を受け入れ、働きながら生活するということをはじめられました。
「美輪湖の家大津発祥の地であるこの家を何かに活用しなければ」という使命感と、もともと人が集まることで様々な活動が始まったという経緯があったことから、「再び人が集まる場所をつくりたい」という思いがありカレーセンターマエダをはじめたそうです。
カレーハウスマエダがはいっている建物は「ワクラバハウス」という名前です。この建物を建てようというプロジェクトが始まったのは、2020年の新型コロナウィルスの感染拡大が始まったとき。
「人が集まることを拒否する時代になったが、そんなときでも、人が直接出会うことにこだわりたい」と梅村さんは仰っています。直接、人と人がかかわる場所を、たとえ時代にそぐわないとしても作りたいというお考えをお持ちです。カレー屋さんにしたのは、先代の元藤さんの「レストランをしたい」という思いを反映されたそうです。
カレー屋さんにしようと思った理由について
カレー屋さんにしようとした理由は、梅原さんがカレーならできると考えたからだそうです。調理は基本的に梅原さんが担当しています。飲食店で働いていた経験はあるが、カレー屋さんの経験はないそうです。
また、カレー屋であれば障害者の方ができる仕事が多かったというもの大きな理由の一つだとのことです。例えば、玉ねぎを切る際、きれいに切る必要はありません。皮の部分がきれいに取れていればいいわけです。
仕込みは「瑞穂」で行われています。瑞穂は食品を製造する専用の建物・設備が整っています。調理のほか、清掃などの開店準備、材料の買い出しなども障害のある方が担当しています。
同店の売り上げは、障害者の方の賃金に当てられています。「瑞穂」は法律的には、その場所に通って働くためのトレーニングをすることを目的としており、最終的に就職できることを目指しています。登録者数は50人以上と一般的な社会福祉法人と比較して多く、その内、知的障害の方が多いそうです。
メニューの開発について
現在の梅原さんの仕事は、カレーセンターマエダが中心とのことです。梅原さんは、もともと京都の出身で、びわ湖の家大津に入ったのが10年前。滋賀に移り住んだのが3年前とのこと。京都でもつながりを活かして、京都のスパイス会社甘利香辛食品株式会社(C&A)と取引をしているそうです。同社も、障害者支援をしている山城の唐辛子農家と取引をしています。同社の協力を得て、これからの新しいメニュー作りにも取り組んでいきたい、と仰っています。
顧客層は幅広く、幼児からお年寄りまで来られているそうですが、ターゲットとしているのは30代から40代とのことでした。
スイーツは、現在、ベークトチーズケーキとマフィンを提供されています。これらもすべて瑞穂で製造しているそうです。両方ともカレーセンター開店に当たって開発したものである。こうした開発も瑞穂で行っているそうです。
地元のものを使われていることについて
滋賀県のものを使うことにもこだわっておられますが、それ以上に、それを作っている人たちが好きだから買っているというのが大きな理由だそうです。
「何を仕入れるかより誰から仕入れるか」が重要とのことです。
例えば、米は長浜産のコシヒカリを使っておられます。これはRICE IS COMEDYという西浅井の限界集落で活動している集団が作られています。20代から30代のメンバーで、全員が兼業農家です。彼らは、まちをこのまま無くなってしまうことは嫌だという思いで、農業で町おこしをしようと頑張っているそうです。
梅原さんは、RICE IS COMEDYのメンバーの一人と出会って、その活動理念に賛同して、同グループのお米を使うことに決めたそうです。
梅原さんの仕事への想いについて
カレーセンターマエダを開店して、梅原さんは、この地域でいちばん流行っているお店になることを目指されているそうです。売上だけでなく、地域から注目されることを重視されています。
社会福祉法人・障害者支援としてやっていることはあえて打ち出さずに営業されているとのことです。ですが、値段の安さの理由などを聞かれた際は答えるようにしているそうです。一般の人は、障害者への理解がまだまだ不十分なため、障害者という言葉にマイナスの反応をしてしまうこともあります。地域から、人々から注目され、影響力を持ったときに、実は障害のある人たちが営業を支えていることを種あかしし、理解してもらうことが理想とのことでした。
2階のフリースペースは、トークイベント、滋賀県に縁のあるアーティストの展示会や、シルバーアクセサリー作家さんのワークショップをするなど、地域の人たちに利用してもらっているそうです。これも、人と人とが出会う場にしたいという思いからされている取り組みです。
平野学区に対しては、美輪湖の家大津発祥の地であり、地域に育ててもらっているという感謝の気持ちを持たれており、恩返ししたいと考えているそうです。
試食させていただきました!
赤カレーも黄カレーともとてもおいしくいただくことができました。黄カレーは、鶏肉が柔らかく、スープにも入っていて美味しかったです。赤カレーはトマトを中心として煮込まれています。一緒の盛り付けられている野菜と一緒に食べると美味しいです。小さな子どもでも食べきる子が多いそうです。辛いものが苦手という方も安心して食べられる優しいカレーでした。
デザートもベイクドチーズケーキ、ワイルドチョコマフィン、どちらもとてもおいしかったです。ワイルドチョコマフィンは中にとろりとしたチョコレートが入っていました。ベイクドチーズケーキはチーズが濃厚で、ドライフルーツと一緒に食べるとよりおいしいです。
取材を終えて
コロナ禍になり、人と会うことを控えなければならない時代にあえて会うことにこだわり造られたワクラバハウス。ワクラバハウスを通して、人と人との関り・つながりを大切にされているのだと感じました。
カレーに使われている食材にもこだわりがあるとおっしゃっていましたが、ただ食材の質が良いという理由だけではなく、生産者の人たちが好きだから、熱い熱意を持っている人から仕入れているというところが印象に残っています。地域の人や出会った人とのかかわりを大切にされているのだと思いました。
また、なにかを広めたいとき、理解してもらいたいときには、それを直接的に伝えるのではなく、多くの人に受け入れられやすい別のアプローチをとり、徐々に一番伝えたいことに持っていく方法もあるということを学びました。
さいごに お店の名前の由来について
なぜ、「カレーセンターマエダ」なのか、実は「マエダ」という名前には何の由来もないそうです。
そして、「カレーセンター」も「カレーショップ」や「カレーハウス」では普通過ぎて面白くなく、一番カレー屋さんっぽい名前で、古くてダサく、老若男女が覚えやすい名前をつけたかったため、「カレーセンターマエダ」と名付けたそうです。
それがインテリアデザインと剥離していて一周回ってオシャレであるということだそうです。建物の「ワクラバハウス」のワクラバには、「邂逅」という「思いがけなく出会うこと」という意味があるそうです。
今回の取材では、本当に多くのことを勉強させていただきました。本当にありがとうございました。
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