路地と銭湯と中老と。
これも2021年年末年始、日本滞在中のときのこと。
たまたまエアビーで借りた墨田区の家が、中老の男(70)がもっとも今後を期待する会社経営の男性の自宅の近くだった。あまりに偶然すぎる。うちはまさに彼の日課の犬の散歩道だった。
中老よ。Zoomだけではなく、現実世界にも影響を及ぼすのはやめてくれ!と思いながら、その墨田区は東向島での日々を過ごした。東向島は東武沿線らしい下町な感じがすごくよかった。
僕はその会社経営の男性を好いていたため、ご近所付き合いができることは嬉しかったが、中老の影響下にいるような感じがして、喉に引っかかった魚の小骨のような感じがした。
いつでも家やビルの隙間からスカイツリーのぬぼーっとした姿が見えた。それはそれで城下町みたいな感じで素敵だった。僕はスカイツリーの建設に関わってないけど、もし江戸時代にその塔の建設に関わっていたりしたら、毎日その塔が見えるたびに、誇らしい気持ちになったことだろう。東京タワーの建設に関わった職人たちはまさにそうやって戦後の数十年を過ごしていたのかと思うと、経済成長の幸せが羨まくなって、切なくなった。僕らにはもうその成長の喜びは残されていない。
そんな向島とスカイツリーの日々は大好きだったけど、なんだか中老にずっとみられている感じがして落ち着かなかった。
そしてようやく今日、墨田区から遠く離れた上落合のボロボロの一軒家に引っ越した。
墨田区の家のほうが僕が好きだったし、スカイツリーと離れるのは寂しかったけど、中老の影響から離れられると思うとすっきりした気分だった。
引っ越し中、あまりに路地が狭くて困って「みてよこの路地のせまさ!」と家の前の写真をフェイスブックに投稿したら、すぐに中老からメッセージが来た。
「上落合か、懐かしいな。そこ、カミさんと同棲していた時に銭湯通いで通った坂道とよく似てるな」
うそでしょ?そのメッセージを読みながら、坂を下ると銭湯があった。
もうやめてくれ!!!
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参加型社会学会・ 深呼吸学部「ZoomとVR 旅芸人の一座」
さまざまな私塾がネットワークされたYAMI大学。橘川幸夫が学部長の「深呼吸学部」もその一つです。深呼吸学部の下の特別学科の一つが「旅芸人の…
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