【日記33】ホットカーペット〜今時スマブラは「だいらん」というらしい
2.11 SUN(12℃/4℃) たぶららさ
5時、ホットカーペットの上で起きる。
頰にくっきりと電熱線の跡。顔面がほかほかに仕上がっていた。
昨日の批評会の熱冷めやらぬ早朝、6時ごろにお風呂に入っていたらなぜか妻も起き出してきた。
前回の日記の最後に、妻の親友が遊びに来たことをフライングで書いた。
2人がマリオカートでデッドヒートを繰り広げ、亀の甲羅に狙われたりクッパに吹っ飛ばされそうになっている横で、僕は呑気に本を読んでいた。
自分たちのお菓子を買うついでにと、僕の缶ビールまで買ってきてくれたので、冷凍庫で冷やしていたら、うっかり読書に夢中になって凍らせてしまった。
振っても音がしないくらいカチコチになってしまったので、仕方なくホットカーペットの上に置いておくことにした。
本を読み、文字を目で追う合間に、時折缶を持ち上げてみる。
まだ。
100ccから150ccに変えたら一気に操作感が変わって悲鳴が上がる。
まだ。
気になったページに付箋をつける。
まだ。
と、やっているうちにチャポチャポと缶の中で音がなるようになったので、グラスに注ぐと、少しフローズンながら無事にビールが出てきた。
その夜、待ちわびていた小津夜景『フラワーズ・カンフー』(ふらんす堂、2016)が届く。
一句目、あたたかなたぶららさなり雨の降るで撃ち抜かれる。
タブラ・ラサを形容詞にしているなんて!
句集を作った時のことは、『ロゴスと巻貝』(アノニマ・スタジオ、2023)に書いてあった。ただし、作ったことよりも売ったことの方に多くのページが割かれている。
〈売り方はこうだ。まず「本屋さん・素敵」でネット検索して、大まかな書店リストをつくる。〉
もう素敵じゃないか。
僕も素敵な本屋さんで手に入れたかったが、今回は大人しくプリント・オン・デマンドで我慢した。
自分で歌集を作った時、文フリ東京がまず目標にあった。
初めて作った同人誌も、やはり文フリ東京で頒布した。その頃はまだ小説を書いていた。InDesignもIllustratorも使えない頃だった。
電子書籍を作れるウェブサイトの、やはりプリント・オン・デマンドのサービスを使って、初めて自分の小説がくるみ製本で一冊の本になったのを手にした時、心の底から感動した。
今でも、本を作るたびに感動する。
そして、「売らなきゃ!」と思う。
たくさんの人に読んで欲しいというよりは、作ったものへの責任を果たさなければという感じだ。
3冊目の歌集も、3月末には仕上げる予定。まだ、タイトルも決まっていないけれど。
2.12 MON(12℃/3℃) チーズカレー煎餅と『かもめ食堂』
歌会当日。
朝10時ごろから準備。家からティファールを持参。
それほど寒くならなくてよかった。
歌会のあと、1人で缶ビール。歌に詠み込んだポテチをつまみに。
『カモメの日の読書』(東京四季出版、2018)を読み終わってしまいそうで、それが嫌でゆで卵を作り始める。
妻は朝から出かけていて、夜の早いうちに帰ってきた。
お土産ついでに、少し早いバレンタインをくれた。
僕があまり甘いものが得意ではないので、お煎餅が毎年恒例となっている。
今年はチーズカレー煎餅。チェダーとゴーダの風味などとパッケージに書かれており、いてもたってもいられなくなり、すぐさまひとつ、ふたつと口に放り込んでばりぼり食べた。
そしてなぜか妻が『かもめ食堂』を流し始めた。
昔、大学の講義に群ようこさんがお話をしに来てくれたことがある。授業の中でのことだったので、講堂ではなく、いつも講義室だった。
『かもめ食堂』の話になった時、フィンランドに行ったことがないとおっしゃっていた。
未だに覚えている。
素敵な祝日の夜が更けていく。
コピ・ルアック。
2.13 TUE(17℃/1℃) 海を見に行こう
仕事に関していろいろと思うところあり、仕事中に、海を見に行こうと妻に提案した。
色々と体がボロボロで、座っていると左足が痺れて仕事ができないので、足置きを注文していた。
予定ではとっくに届いているはずだったのだが、どうやら雪の影響やらでだいぶ遅れていたらしい。
実に1週間遅れて届いた足置きは、思いの外よかった。
作れる足の角度はもちろんのこと、何と言っても足ツボを刺激できるクルクルと回るパーツが付いているのがよかった。
そのキャスターみたいなのに足の裏を押し付けてゴリゴリと動かしてやると、まるでハムスターの回し車みたいな音がした。
そんなことは気にもとめず、まるでランニングマシーンのようにキャスターの上でガシャガシャと走っていたら、もう我慢できないというように隣の席の人が吹き出した。
お風呂に入っている時、なぜか急にSNAIL RAMPが聴きたくなって、一通り聴いてしまった。
「MIND YOUR STEP!」が99年だから、僕が11歳の頃にはもうすでに彼らの人気は絶頂にあったはずだが、僕がハマったのはその約5年後くらい。
遅ればせながら、高校生の時に同じラグビー部のやつからCDを一式借りてからだ。その頃はすでに活動休止していた。
2.14 WED(18℃/4℃) 暑いっ!
暑いっ!
通勤中、歩いていたら汗が出た。
帰ったら塔着していた。
2.15 THU(21℃/6℃) キックボードガール
暑いっ!
昨日よりさらに暑いっ!
朝、本を読みながら歩いていたら、後ろから子どもにキックボードで追い抜かれた。最近はやりの電動のではなく、前が2輪になっているやつ。
プラスチック特有のがガラガラガチャガチャという音を鳴らしながら、立体交差の橋が落ちるんじゃないかというくらいにめちゃくちゃに地面を蹴っていた。
それを父親が追いかけていった。背中に小さいリュックを背負っている。多分その子の荷物だろう。ヘトヘトヨレヨレで、リュックは腕に落ち、コートはめくれ、という感じ。
職場で流れるラジオから、「春一番が吹くかも」と。
帰りは、春だなぁ、なんて思いながらドラッグストアで缶ビールを買った。
薬屋で酒を買うのがたまらなく嬉しい。
2.16 FRI(17℃/8℃) 海福雑貨とバートン
火曜日に、海を見に行こうと妻に言った。
計画を練るうちに行き先は変わったが、約束通り有休を取った。
大事なことをしなければ。そう思ったのだ。
訪れたのは海福雑貨という雑貨屋さん。
東林間駅から15分ほど歩いた住宅街にある。
置いてある品物について、パンフレットにはこうある。
1階は「可愛いもの 面白いもの 不思議なもの 古いもの」
2階は「妖しいもの 綺麗なもの 不思議なもの 古いもの」
たまらない。
ウェブサイトのURLを残しておくので、ぜひ覗いてみてください。
インスタは眺めているだけで数時間は奪われます。
海福雑貨の後は駅の近くにあるTEA ROOM BURTONというカフェへ。
小さな前庭の奥に佇む、真っ白な二階建て。
ホットサンドとコーヒーを楽しんで、持ってきていた『フラワーズ・カンフー』を読んだ。
夜は先日5周年を迎えたいつもの飲み屋「B」へ。
2.17 SAT(14℃/5℃) 上の階が伽藍堂だった期間
朝、ふと子ども時代のとある期間を思い出した。
上の階に住んでいた従姉妹の家族が出ていって、家具がなくなり、一時期、伽藍堂になっていた時があった。
2人目の子が生まれて手狭になったとはいえ、家族4人が暮らしていた部屋だ。まだ小学2年生だった僕にはその部屋はとても広く、走り回るのに十分な空間に感じられた。
そこで朝から晩までやたらと遊びまくり、押入れの2段目からから飛び降りたり、大騒ぎしていた。
そこに、なぜかファミコンだけが残されていた。
ソフトもテレビもないので、ゲームで遊ぶことはできなかったけれど、押入れの戸を閉めた暗闇の中で、完全に想像だけでゲームを楽しんでいたのを覚えている。
このボタンを押せばどう動いて、ここではこうボタンを押さないといけない、など、スーファミも持っていなかった頃なのに、友達から聞いた情報だけでテレビゲームとやらを思い描いていた。
なんでこんなことを思い出したのだろうか。
しばらくしてスーファミを買ってもらい、中学2年生くらいでPS2を買ってもらった。
だが、それほどテレビゲームにハマることはなかった。
もちろん一生懸命、のめり込んでクリアを目指したゲームもあったけれど、スーファミは中学時代に、PS2は高校を卒業する時に友達にあげて、それ以来、自分用のゲーム機は買っていない。
たまにやるマリカーもスマブラも、下手である。
そういえば、自分が若い頃は大乱闘スマッシュブラザーズのことを「スマブラ」と呼んでいたけど、近所の小学生は「だいらん」と呼んでいた。
大ロングセラーだと、時代も世代も変わり、略称も変わるもんだね。