経理部門は大人しく〇〇をイジってろ?(前編)【図解!原価計算基準入門】
いきなり物騒なタイトルですが・・・〇〇とは『製造間接費』です。本文内でじっくり解説していきます。当記事は、前編・後編の二回に分けて説明していきますが、主に経理部門が関係してくる実務になります。で、この製造間接費の処理。企業によって独自の管理方法となり、経理部員がなかなかマスターできず、現場から怒号が飛ぶ場合もあります。
「現場の迷惑にならないように、大人しく製造間接費でもイジってろ!」
企業によって独自の管理方法となる原価計算実務。当note記事で経理部門が知っておきたい内容を、前編・後編の二回に分けてコンパクトに説明しています。そこで効率的に原価計算基準の一般論を習得されたうえで、勤務先独自の原価計算のルールに照らし合わせていただき、余裕をもって現場の困りごとや要望事項のフォローが出来ればと考えています。
なお下図①にあてはめると、今回説明する内容は、経理部門が関係してくる「Step.2の部門別計算とStep.3の製品別計算」です。もしStep.1からご確認されたい場合は、まず以下の記事『経理担当”以外”も知っておきたい費目別計算とは?【図解!原価計算基準入門】』をお読み頂くことをおススメします。
そして原価計算基準の体系の中で、今回は以下の範囲をご説明します。
では、Step.2の部門別計算から見てまいりましょう。
1.部門別計算とは(基準一五)
原価の部門別計算(Step.2)は、費目別計算(Step.1)において把握された原価要素を部門別に分類集計する手続きのことです。
ちょっと概念的なお話になりますが、製造業において価値をつくり上げる場所が部門です。部門別計算は部門でどれだけの原価が消費されたかを計算するステップになります。
部門別計算を学ぶとき、いたずらに上図②の、製造間接費の配賦計算の難解なテクニックに走りがちです。資格試験の沼にハマり過ぎで冒頭の現場からのクレームにもつながりかねません。したがって、部門別計算では会社における部門の位置づけ、部門の意味、そして部門と製品原価との関係をよく理解することが大切なのです。
もし経理部門の関係者なら、まずは上図②の全体像をしっかりイメージしたうえで、現場をフォローされることをおススメします。次に原価部門について掘り下げて見ていきましょう。
2.製造部門と補助部門(基準一六)
会社の原価部門は製造部門と補助部門から構成され、補助部門は補助経営部門と工場管理部門に分類されます。下図③のイメージ通りになりますが、この上で基準一六を見ていきましょう。
3.部門個別費と部門共通費(基準一七)
部門個別費とは、どの部門で発生したものか明らかな製造間接費をいいます。部門個別費はどの部門で発生したものか明らかなので、各部門に賦課(直課)します。
他方、部門共通費とは、どの部門で発生したかが明らかでない製造間接費をいいます。部門共通費はどの部門で発生したか明らかでないため、適切な配賦基準を用いて各部門に配賦します。
部門個別費と部門共通費については、基準一七と下図④をご覧ください。
4.補助部門費の配賦方法(基準一八)
そして手続き面を見ていきます。基準一八(一)より、補助部門に配賦された製造間接費(補助部門費)を、次の段階で各製造部門に配賦するとしているのが基準一八(二)になります。
直接配賦法、階梯式配賦法、相互配賦・・・。ちょっと技術的な用語が出てきましたので、イラスト図解していきます。
4-1.直接配賦法(基準一八(二))
直接配賦法とは、補助部門間のサービスのやりとりを計算上無視し、補助部門費を製造部門のみに配賦する方法をいいます。一番シンプルな方法です。これから、補助経営部門で10回分の修繕回数に係る補助部門費と、工場管理部門で18人分の作業工数(のべ人数)に係る補助部門費の、製造部門への配賦の事例で見ていきます。
4-2.階梯式配賦法(基準一八(二))
階梯式配賦法とは、他の補助部門への用役提供が多い順に、補助部門費を配賦する方法です。この方法では、用役提供が少ない補助部門から用役提供が多い補助部門への用役提供は無視されます。
一般的には、工場管理部門→補助経営部門→製造部門の順で階段状に配賦されます。すなわち、サービスの提供先が多い補助部門から階段状に配賦計算する方法が、階梯式配賦法です。
4-3.相互配賦法(基準一八(二))
相互配賦法とは、補助部門間のサービスのやりとりを計算上でも考慮し、補助部門費を製造部門と補助部門に配賦する方法をいいます。
なお下図⑦は、計算を2段階に分け第1次配賦では、補助部門費を製造部門と他の補助部門に配賦し、第2次配賦では、第1次配賦で他の補助部門から配賦された金額を製造部門のみに配賦する方法「簡便法としての相互配賦法」になります。
補助部門費の配賦基準は、その部門の活動を反映したものでなくてはなりません。材料倉庫部門なら材料出荷数・出庫件数、修繕部門なら修繕回数・修繕時間、動力部なら設置機械の使用電力量や馬力数、経理人事など事務部門なら従業員数などが考えられます。
補助部門費の配賦にあたって、補助部門費が確定するのを待たずに、補助部門の用役の価格を用いて補助部門費を予定配賦する方法も認められています。
5.製品別計算の位置づけ(基準一九)
製品別計算とは、原価計算の最終ステップで、原価要素を一定の製品の単位に集計し、単位製品の製造原価を算定する手続きです。下図⑧でいう「③製品別計算」の位置づけになります。
該当する原価計算基準は、基準一九になります。
6.個別原価計算と総合原価計算(基準二〇)
そして基準二〇では、製品別計算の種類別類型を挙げています。基準二〇では(一)~(三)が総合原価計算、(四)が個別原価計算に該当します。
個別原価計算とは、顧客の注文に応じて製品を製造する受注生産形態に適用される原価計算方法をいいます。他方で、総合原価計算とは、同じ規格の製品を毎月大量に生産する大量生産形態に適用される原価計算方法をいいます。・・・もう少し専門的に説明すると下図⑨の通りになりますが後編に割愛します。
次回後編の予告です。個別原価計算と総合原価計算をじっくり解説していきます。下図⑩は個別原価計算の例。イメージ重視で説明していきます。
<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>