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『トップガン』に見る映画やテレビゲームが対軍感情や兵員募集に与える影響

3年前の2021年9月にジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグが英国海軍の名誉中佐(honorary Commander)に任命されたことについて記事を書きましたが、今月の17日には、大ヒット映画『トップガン』(1986年公開)で主人公の戦闘機パイロット、ピート・ミッチェル役を演じた米俳優のトム・クルーズが民間人に与えられる最高位の賞である米海軍公共サービス殊勲章(Navy Distinguished Public Service Award)を授与された、という華々しい報道が世界を賑わせました。

授章理由は、1986年から2023年までの約40年間にわたって映画を通じて海軍および海兵隊を支え続け、海軍の兵員とその犠牲を厭わない献身的な職務への姿勢に対する社会的な認知と評価を高めることに大きく貢献したことだ、と報じられています。その結果、1980年代後半から1990年代前半にかけて海軍パイロットへの志願者数が急増しました。

さらに、2022年公開の『トップガン マーヴェリック』では、往年の世代の人たちに懐かしいあの頃を思い出させ、若い世代の観客には海軍の専門技能とチャンスを披露して関心を集めたことで、米海軍第36代名誉飛行士に選ばれたそうです。

ここで、米スタンフォード大学のThe Stanford Journal of Science, Technology, and Societyのサイトに掲載されている関連論文(2023年4月)について見てみましょう。

この論文は、映画やテレビゲームなどのメディアが軍隊に対する人々の考え方や認識にどのように作用し、さらにそれが兵員の募集にどのような影響を与えるのかについて論じています。

米映画監督のオリバー・ストーンは、「軍隊がテーマになっているたいていの映画は軍人募集ポスターだ」と言っている。この種の類いの映画は明らかな兵員募集映画や広告ではないかもしれないが、人々が戦争を体験し、戦争とは何かを理解するための機会としての役割を担っている。実際、映画『トップガン』が好例で、軍がこの映画を利用して映画館の外に兵員採用担当者を配置した結果、入隊者が大幅に増加したという事実がある。

米空軍のエドワード・トーマス少将は、「『トップガン』のような映画は、軍の日常の動きに対する見方を提示し、観る者を特に海軍の航空術に熱狂させる」と言っている。
 
軍人募集に関する北大西洋条約機構(NATO)の文書には、「一部の逸話的・予備的研究証拠は、『トップガン』のように軍を好意的に描いた映画は兵員募集に大きな影響を与え得ることを示している」と書かれている。さらに、映画やテレビゲームには「軍に対する若者の意識に影響を与える力がある」。


この論文が論じているとおり、トム・クルーズ主演の映画『トップガン』が特に海軍に対する公的な関心や華々しくカッコいいイメージを高めたことは言うまでもなく、トム・クルーズの果たした貢献度は誰が見ても明らかでしょう。

画像:pixabay

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