2024夏一首評04
ネットプリントだと縦書きで、最後の「(T_T)」が半角なので横向いてるのが本当っていうのはちょっとご留意いただきたいです。ここで引用するにあたってそこが横書きでの見え方になってしまうのは、すみません。
顔文字って、感情表現なんですよね。知らなかった。知ってたけど。この歌で見て、そういえばそうだったなってなりました。
この顔文字は涙目みたいなのを表現しているもので、泣くっていってもいろいろあるわけですが、これは悲しくて泣いてる顔文字と思っていていいと思います。
ですのでこの歌は、誕生日にプレゼントで贈った服をその相手がぜんぜん着ないで前と変わらない服を着てばっかり自分の前に現れることを悲しんでいるわけですね。この話要りました??
「(T_T)」が無かったとしたらどう見えるでしょう、っていうのを考えると、当たり前だけど、だいぶ印象が変わりますね。怒ってる感じになったり、もっと真顔な感じになったり。「(T_T)」があることで、一意に定まるというか、とりあえず悲しい感じなんだなというのは伝わるわけですね。これってすごいことですよ。
何を当たり前のことを言ってるんだっていうのは僕も僕に思ってるんですけど、ほんとにびっくりしたんですよ。一意に定まらないことが豊かさにもなりえるということはもちろんそうだとして、こうすることができるんだっていう。対面の会話や電話でない、テキストのみでのコミュニケーションを当然に認識しそれに適応した能力を身につけた人間の、言語運用の手法のひとつなわけですよね。それを、いま、ほんとうに実感できる、んだ……って。
短歌という形式は、他の文字列空間の在り方に比べて、そのオルタナティブが非常に見えやすい、と僕は思っています。そこが好きなんですね。短歌だからこそ、この「(T_T)」が無かったとしたら、なんてことを、わざわざ思った。そして顔文字っていうものを、改めてこのように認識することができた。すごいことですよ……。