2024夏一首評16
そもそもけっこう、どういう状況なんだろうっていう歌ではある。「優勝はあなたでした」ってなかなか言われない気がしますよね。あえて想像するなら、たとえば「優勝」という概念が存在しなかった過去のある場においての「優勝」を挙げるならば「あなた」であるということとか、大会みたいな場での記録としての「優勝」は別の誰かになったけれど私から見たらあなたこそ「優勝」にふさわしかったというようなことを述べているだとか、そういうのはわからないでもない。
だとして、それが「過去形」で言われるのは、ふつうだ。過去の話なのだから過去形で言う。というか、この場合は「過去形で言われた」という情報ありきで過去のことだろうと僕が想像しているのだけれど。とはいえ、なんにせよ、これが「過去形」であること自体はおそらくおかしなことではないのだろうという直感がある。重要なのはその言葉によって生じたこのひとの心情の機微だろう。
「過去もよろこんでます」の「も」には、このひと自身が、あるいは「現在」が、「よろこんで」いるという前提がある、ということになると考えていいだろう。でも、この歌を読んだ印象として、とてもそうは思えない。「過去形で言われた」ことの強調、「過去もよろこんでます」という文章のねじれ、そういったところに滲む違和感が、文面通りに意味を受取らせない働きをしている。
「優勝」……という言葉にまとわりつくいろいろが、歌全体にもしっかりまとわりついているなぁ……と感じます。この歌けっこう、直感、直感、で読んでいったところがあるんですけど、そういうのってたぶんこの世にあるものからの類推に近くて、ひとの「直感」を引き出せる歌っていうのはつまりおそらく「リアル」を描けている歌なんじゃないかな、と思います。