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今日、バイト中に「……さっきの人がもしテロリストとかだったら、僕たち共犯ってことになっちゃいません?」と言った
「夏の畳と短歌賞」選考会録
※本記事は形式上有料記事となっておりますが、内容自体は全文無料公開しております。ご注意ください。
●一次予選について
選考委員全員が応募作229篇を全て読み各自5点満点で相対評価を付け(点数分布に規定は無し)、3人の合計点を元に、上位から22作品を一次予選通過作として選出しました。
あくまで相対評価のための便宜的な数字であることから一次予選の点数は公開しない方針とします。
一次予選通過作
「夏の畳と短歌賞」一次予選通過作品
●「夏の畳と短歌賞」一次予選について
選考委員全員が応募作229篇を全て読み各自5点満点で相対評価を付け(点数分布に規定は無し)、3人の合計点を元に、上位から22作品を一次予選通過作として選出しました。
あくまで相対評価のための便宜的な数字であることから一次予選の点数は公開しない方針とします。
選考会の模様はこちらからご覧ください。
●布野割歩「動けば」
動けば
布野割歩
めっちゃ雨
「夏の畳と短歌賞」各賞受賞作品
2024年7月25日から同年8月18日までの募集期間を設け開催した「夏の畳と短歌賞」について、阿波野巧也、長谷川麟、平出奔の三名による厳正な選考の結果、同年8月27日に受賞作品を以下のように決定いたしました。
●大賞:井口可奈 「エジソンがわかる」●次席:遠野瑞希 「夏の手」
選考委員個人賞
●阿波野巧也賞:~1000 「限定された遊びの中で」
●長谷川麟賞:西藤定「ゴースト」
● 平出奔賞
2024夏一首評21
歌から、有無を言わさないこのひとの主観、が強烈に届いてくる。し、それが同時に【わかる】ものである。とき、すごくいいものを読んだ……という気持ちになる。
「こどもの声」が聞こえて、その声の主を思い浮かべるともなく思い浮かべるとき、大体の体格とか雰囲気はイメージできても「顔」はイメージするのが難しい、気がする。とりあえずそういうことなのだとして、それを「顔のないこども」と表現するのは、このひとの主
2024夏一首評20
いっかいものすごく素直になってみる、というところに立ち返る、から始めるんですけど、この歌を「やりすぎでしょ(笑)」的に読むことはできるんですよね。埃が積もっててそれが降ってくる二段ベッドを「燃やさなくては」って言ってるっていう。「掃除すればよくないスか?(笑)」とかね、そういう態度になることは可能と言えば可能だと思う。
まあ、でもそうは読まないですよねこの歌、っていう話になります。なんででし
2024夏一首評19
という歌を読んで思うのは、当然「物語に関係のある災害」のことだ。「関係」が「ある」……?
連想として、いくつかの具体的な作品名(最初は名前出して書いてたんですが、よく考えたら別に出さなくても話せたので消しました)を思い出すのは、それらを引き合いに出そうとするのは、なんというか、歌からの目配せのなかに含まれているんだろうなと思います。それらの作品で発生する「災害」は「物語」において重要な役割を果
2024夏一首評18
短歌という詩型には、一旦 言い切る ことができる、性質があると思う(だからこそ逆をすることもできるとも思う)んですけど、この歌はその面白さを感じさせてくれた歌です。
たしかに「托卵」は「なにも盗んでいない」ですね。自分の卵を多種の巣に置いて、代わりに孵させて育てさせるというものなので、盗んでない。むしろ逆(?)だ。
であるにも関わらず「すべて盗んだインパクトがある」、というこの歌の主張は、
2024夏一首評17
(初出は別であるはずなんですが、今ちょっと見つけられなかったので、ひとまず……)
何層か、メタな感じの話になりそうなんだけど、今「向いている気がする」のスタンスで話し始めてくれるひとがいる、のはすごくうれしい……。というのがあります。僕がそうだから、で言うけど、ひとって気を抜くと「向いていなさ」で勝負を始めようとする、ところがあるから……。
あくまでこの歌の最終的なスタンスは「百年以内にで
2024夏一首評16
そもそもけっこう、どういう状況なんだろうっていう歌ではある。「優勝はあなたでした」ってなかなか言われない気がしますよね。あえて想像するなら、たとえば「優勝」という概念が存在しなかった過去のある場においての「優勝」を挙げるならば「あなた」であるということとか、大会みたいな場での記録としての「優勝」は別の誰かになったけれど私から見たらあなたこそ「優勝」にふさわしかったというようなことを述べているだと
もっとみる2024夏一首評15
わかるなぁ、のちょっとだけあとに、なんでわかるんだろう、が来てくれるとうれしい。
なんでこの状況の「休日らしさ」が、なんかわかる、なんだろう。そもそも「炒飯をやりたくなる」が休日っぽい? それはあるかもしれない。「卵がない」も単体で休日っぽいと言えば休日っぽい。なんか、補充ローテの谷間になりそうな感じというか。
というのはまあそれぞれなんとなくで了解していけると思うのだけれど、それ以上に、
2024夏一首評14
「迷惑」……ってなんなんでしょうね。この歌を読んで、「歌会」という文化のことををよく知っているひと、よくそれに参加しているようなひとだったら、けっこうあっさり「これはたしかに迷惑だなあ」と思いそうな気がするというか、そういうことだと思うんですけど、でもそもそも「迷惑」ってなんだろうっていうことを思い直させるような言葉の運用がなされているようにも思います。
僕は「歌会」という文化をそれなりに知っ
2024夏一首評13
このひとが「冷水のうすめ濃いめの選択ができない」と思ってるの、じっくり面白い。「冷水にうすめ濃いめがない」じゃないんですよね。
たしかに、あるかないかで言えばありますよね、冷水に「濃さ」って。濃い冷水、は、ある。その感覚を前提にして比喩にしてきているところが、この歌は面白い。
なにが「できない」んでしょうね。なんか不思議な感じがするのは、比喩の内容に対して、そうは言っても「選択ができない」
2024夏一首評12
なんかすごいことを、話してくれている……という感動がある。ありますね。
たったひとりの「君」がいて「君に好かれたい」という気持ちがある。読者からしたらその「君」って誰なのかわかんない、とはいえ、この時点ですでに一種の告白の要素があるわけですよね。「君が好き」でもなく(と言い切るのも語弊がありそうですけど)、「人に好かれたい」でもない。「君に好かれたい」という気持ち。この歌の内容自体がそれを言
2024夏一首評11
というのは前提として……みたいな話を続けなきゃいけないような内容の、確認、みたいな歌の感じ。このあとになにか、だとして、的な否定が来そうな気配に、その会話の相手ではないはずの自分もちょっとどこか身構えてしまう、気がします。
なんというか、冷静さの主張がやや過剰に感じられるんですね。「怒ってる」ではなく「怒っている」としっかり「い」を入れてくる。「わかった」ではなく「十分理解ができた」とやたら
2024夏一首評10
なんかもう、別に僕がなにか言うことないんですけどね。ってなる歌がたまにあって、この歌もそういう歌だなと思います。箴言的な上の句、一字空け、象徴性を持った下の句の描写、ぜんぶバチッと決まってますよね。
「たくさん生きて」るなあ、と確かに思います。生きる時間の長さもそうだし、その面の多様さもそうだし。でも死ぬのは一回だけ。「僕たちも」と言われることで、それがずっと繰り返されてきたことなんだっていう