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【エィミー・ツジモトが読むアメリカ⑦】カマラ・ハリスはマイノリティの味方なのか

日本国内でも注目されている米国大統領選挙。「同盟国」日本に米国の政策は大きな影響を与えるからだ。今回は民主党の大統領候補に決まったカマラ・ハリス氏について、常に米国から最新の情報を収集分析しているエィミー・ツジモト氏に話を聞いた。(インタビューは7月28日)


◇ハリスはなぜ大統領候補に選ばれたのか

平井 民主党の大統領候補は、案の定、副大統領であるカマラ・ハリス(Kamala Harris、59歳)に決まりました。これは順当と言える人事でしょうか。

エィミー バイデンは自分の代わりを務められる人ということでハリスを選ばざるをえなかった。もちろん、バイデンの意向だけでは決められませんけれど。
 彼女は女性や黒人層には人気があります。それでは、白人層にはどうかというと、彼女のインド出身の母親は支持を得られるでしょう。また、父親(両親はカマラが7歳のときに離婚)はジャマイカ系黒人ですので、黒人票をやはり得られるでしょう。
 だが、忘れてはならないのはハリスは国民によって大統領候補者として選ばれたのではなく、あくまでも民主党の重鎮たちによって選ばれたということです。これは一種のクーデターとも言えなくもありません。民主主義のルールにもはずれているとも言えるでしょう。

平井 大統領を選ぶ米国民の選択肢は、二択と、極めて限定的になったわけだ。

エィミー バイデンの撤退は遅すぎたことで、本来の民主主義的な選択ができなかったというのが現実です。ナンシー・ペロシはバイデンにアメリカのために降りろと全身全霊をかけて説得しました。この点はオバマも同じでした。それと同時に有力な(選挙)資金提供者の意見も無視できなくなっており、民主党議員たちからの声も広がりつつありました。オバマも一昨日(7月26日)に、ようやくハリスを支持すると明らかにしたのです。ご存知のように彼は当初からハリス支持を打ち出していなかった。なぜなら、彼をはじめとする一部の有力者は、シカゴでの民主党大会において大統領候補を選ぶべきだと考えていたからです。 
 今、アメリカ国民の多くはイスラエルにうんざりしています。実際に、ハリスはトランプと比較すれば若干はイスラエルに対し”批判”的な面はあります。というのは、トランプは公の場で一切の(イスラエル)批判やイスラエルへの要求をしたことはないから。それに比べると彼女はイスラエルに対して「自衛権」があると認めつつも、『ガザの大惨事』つまりガザでの戦闘を即座に中止して、終結すべしとは言いました。

平井 「よりまし論」ですね。バイデン大統領が大統領候補を降りたときに、ただちにハリスが大統領候補とはならなかったわけですが、それはなぜでしょうか。


エィミー ハリスではトランプに勝てる見込みがないと思れわていたからです。しかし、あの段階で民主党は大統領候補を決めなければトランプ大統領が確実なものになってしまう。それで止むなくハリスが大統領候補になったのです。
 ラストベルト(Rust Belt=錆びついた重工業地帯、アメリカ中西部のエリア)の人々は「フォーガットン・ピープル」(忘れられた人々)とも呼ばれています。特に、貧しい白人の母親や子どもたち、シングルマザーの人たちの生活は厳しいのですが、そこに注目して目を向けたのがトランプでした。そのために今回、副大統領候補にラストベルト出身のヴァンス(イリノイ州)を据えました。
 ところが、民主党がハリスを擁立した。その結果、「ほぼトラ」とまで言われていましたが、トランプ大統領が再選する確実性は薄れてきています。トランプではどうなのかと思っている人たちが、アメリカには多くいるからです。トランプは黒人たちのために何をしてきたのかを明確に打ち出せていない。そもそもラストベルトの住民は圧倒的に白人労働者が多い。そのためトランプの当初の目論見は少しづつ外れてきます。


◇ハリスに必要な能力はあるのか


平井 案外、ハリスに勝ち筋は案外あると。

エィミー なんとも言えません。アメリカでは以前から大統領は引退すると副大統領を大統領選に担ぎ上げているものですが、その副大統領が大統領選で勝った試しがほとんどなのです。副大統領から大統領になれたのは、パパ・ブッシュ(ジョージ・H・W・ブッシュ、第41代大統領)だけ。今回もそうなるのかもしれない、オバマにはそんな懸念が当然あったでしょう。
 さらに、ハリスにマネジメント力があるのかどうが疑問です。私はそもそも女性には男性のようなマネジメント力や気の使い方は持ちづらいと考えてきました。この男女の差はジェンダーや性差別とは別の話であると、私は経験的に思っています。今回、バイデンが大統領選を撤退する鍵となったのは妻のジル・バイデンです。ジルの思いやりなどがバイデンの心を動かしました。

平井 そうなんですね。

エィミー そうしたことも鑑みたときに、ハリスがカリフォルニア州の司法長官を務めていたキャリアがあっても、組織をマネジメントする能力があったとはまったく見えてきません。ハリスはバイデン政権では副大統領として移民問題担当の重責を担っていましたが、結局、解決できていません。そこがハリスの大きな問題なんです。その点を考えたときに、ハリスにはマネジメント能力が不十分であると思うわけです。
 父がジャマイカ系黒人、母がインド人だという混血だからといって、白人以外の有色人種すべてがハリスに票を投じるわけではありません。彼女は移民の子で、両親が離婚し、母に引き取られて、教育を受けてきたエリートです。移民に手を差し伸べる動機が希薄だと感じています。
 また、政策能力を発揮したとしても、法案を通すか通さないかは、連邦議会の議員たちです。そして彼女は体制側の人間です。

平井 体制側とはどういう意味でしょうか。

エィミー それは、これまで話してきたように、バイデン大統領と同じように大企業とくに防衛産業の言いなりということです。
 先日、イスラエルのネタニヤフ大統領がアメリカを訪問しました。本来、そのような国賓は副大統領が紹介しなければならないが、ハリスはそれをしなかった。イスラエルへの批判があめりか国内で高まっていますから、そのような振る舞いをしたならば、ハリスの人気はいっとき下がるでしょう。多くの民主党議員は欠席しました。だが、ハリス自身は「個人」としてイスラエルの首相に会っているのです。その会見内容をはっぴょうしたさいに先に述べたように「即時停戦」を要求したと言います。
 もっと言いたいことは、イスラエルは爆弾を落としている、先日もサッカー場にロケット弾を落として、ガザの子供達が10数名亡くなった。その爆弾はメイド・イン・アメリカなんです。ウクライナも同じです。間接的な殺人者はジョー・バイデンあり、カマラ・ハリスなんです。それが体制側にいる大統領という意味です。


ジョージ・ワシントン大学(2024年春撮影)


◇ハリスに勝ち目はあるのか

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