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<無料公開終了>無法化が進むイスラエルとアメリカ【小田切拓に聞くパレスチナ・イスラエル】

2024年12月8日、シリアの首都ダマスカスを反政府勢力が制圧し、アサド政権が崩壊した。アサド政権を支援してきたのはロシア、イラン。反政府勢力の背後にいたのはトルコ。さらにシリアの背後にいるイランと対立するイスラエル、さらにはアメリカ。シリアを巡る各国の思惑は複雑だ。実際のプレイヤーはこれ以上に絡むが、大筋でどのようになっているのかを見てみたい。ドミノの駒は日本にも倒れてくるだろう。パレスチナ、イスラエルを中心に中東を20年以上取材をしおり、『なぜ、ガザなのか』(青土社)の共著者であるジャーナリストの小田切拓氏は「パレスチナも近々動くだろう」と話す。



平井 昨年後半の非常に大きな動きとしては、シリアのアサド政権の崩壊がありました。アサド氏の背景にはイランとロシアがいて、現在のアフメド・アル・シャーラに対してはトルコが影響力を及ぼしていると見られています。シリアのこの状況はイスラエルにどのような影響を与えるでしょうか。

小田切 イスラエルについては、アメリカのバイデン大統領、トランプ次期大統領双方から圧力が加わっているようで、ハマスとの停戦協議が再び行われています。ですが、もはや中東についてはイスラエルとハマスだけでは何も見えてこなくなりました。 
 そこで、今回は、イスラエルを中心に据えながらシリアを整理してみたいと思います。個々の状況よりも、まずは押さえておくべき方向性から全体像をまとめてみます。どこまで行っても推論の域は出ないのですが、一方で、これだけ大きな変化があったということから、変化の前提については一定レベル以上の確度で整理はできるはずです。


ネタニヤフ大統領とドナルド•トランプ次期政権のウィトコフ中東担当特使が1月11日に面談。
(C)イスラエル政府、上の写真も

介入力低下のロシア、イランも投資が水泡


平井
 まずは、どのあたりからみていきましょうか。

小田切 ロシアでしょうか。ロシアのシリアへの介入力は低下しています。昨年12月半ばにロシア軍が、地中海に近いシリア西部の基地から撤退を始めたと大々的に報道されていることからも、この見方は概ね間違いないでしょう。シリアから撤退すれば、ロシア本土から中東につながる南への影響力が劇的に低下してしまいますが、そうせざるを得ないという判断をロシアがしたと考えるべきです。

平井 どうして、ロシアはシリアから撤退したのでしょうか?

小田切 対ウクライナ戦にロシアは集中せざるを得ない状況にあるでしょう。そのことがはっきりしたと言えます。

平井 ロシアと言えども、2つの国でオペレーションを行うのは難しいのでしょうね。

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