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「自衛隊基地を米国に置く」という石破発言を読み解く 【エィミ・ツジモトが読むアメリカ⑭】 


平井 米国の大統領選は拮抗していますが、いずれにせよ新米国大統領と日本の石破茂総理は対峙していかなければならない。その中で重要な安全保障政権について読み解こうという企画です。

エィミ そうですね。10月27日に衆議院で解散総選挙があり、自民党と公明党でも過半数割れしました。与党として過半数割れしたということでマスコミも石破茂下ろしに躍起になっています。しかし、自民党の裏金問題を争点にした選挙の結果は、岸田文雄前総理や菅義偉元総理の成績結果であり、その発表を石破がしたということです。それに米国との関係で言えば、石破が総裁就任後、短期で解散したことは正解です。米国の介入を防ぐためですし、それはできたでしょう。この点をメディアが指摘しておくことはいまからでも大事なことです。

平井 そうなんですか。石破は持論である憲法7条解散はしないということを曲げてやりましたから、不満はありますが。石破政権にはいろいろな課題があります。不景気や人口減少=少子高齢化もありますが、短期間で成果をあげやすい、というか、そう見えるのが外交だと思いますが、この点はいかがでしょうか。

北朝鮮との外交は

エィミ まず北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)ですね。北朝鮮はロシアに加勢し始めていますし、拉致被害者問題の解決はますます遠のくばかり。ですが、石破は北朝鮮国内に日本政府の連絡所を置くと言いました。これまで拉致問題解決を政府は放置してきましたが、石破はそれを実行しようとしています。国民に公表する前に拉致被害者にもこのことは伝えています。

平井 総裁選前に石破は候補者として、あらゆる相手と対話すると明言していて、私はこの発言に注目していたのですが、この点で実行しようとしているなと思いました。朝鮮国内の連絡所が実現すれば画期的です。メディアはかろうじて共同通信社が支局を置いていたはず。もうないかもしれませんが。石破は米国との関係ではどう出るでしょうか。

自衛隊基地をアメリカに置くという意味


エィミ 石破は「アメリカに自衛隊の基地を置くべき」と言っています。この意味をほとんどのメディアが誤解しています。

平井 どういうことでしょう。

エィミ まず、世界中に米国は米軍基地を置いていますが、第二次大戦の敗戦国であるドイツ、イタリアにも日本同様、自国に米軍基地を置いています。日本がもっとも米軍基地が置かれていて、次がドイツ、韓国、イタリアと続きます。

平井 イギリスやスペインなどにも米軍基地がありますね。米軍は欧州ではNATO(北大西洋条約機構)と共存している状況している。

エィミ とにかく、アメリカ本土には外国の軍基地は1つもありません。しかし、外国の軍隊を招待して大いに共同訓練を実施しているのです。ドイツとイタリアは自分達の国に基地を置いているからと言って、アメリカに対して黙ってはいません。両国はこれだけ米軍基地を国内に置いているのだから、アメリカ本土で自国の兵士との共同訓練をさらにさせろと主張しています。大前提としてドイツとイタリアは、そもそも自国に米軍基地があるのはおかしいと考えている反対派が強いからです。

平井 トランプなどは大統領時代に日本に米軍基地を置かせて、お前らは経済的に助かっているだろうと言っていましたけれどね。それにも日本はなにも言い返せない。

エィミ 一方、日本の自衛隊は、横田基地や横須賀基地など国内の米軍基地で共同訓練をやっているだけです。私の知人は横田基地で米兵の集中訓練の教官をしていました。内容は戦略などを徹底的に思考する訓練だったのですが、自衛隊にこの訓練をやると一日しか持ちませんでした。しかし米兵は2週間まともな食事をとらずにそのような訓練ができます。食事は乾燥した肉や野菜を水で戻して食べるようなものばかりです。米兵は夏の暑さだろうが、冬の寒さだろうが、耐えます。彼らの鍛えられた戦略的思考は自衛官のトップだろうが足元にも及ばないでしょう。彼らは実戦を知っていますし。

平井 その点はそうですね。

エィミ ここで石破が言いたいのは、アメリカの本土で自衛隊を訓練させたいということです。

平井 日本国内では駄目ですか。


米国軍隊と自衛隊の違い

エィミ たとえばですね、横田基地で一日、訓練を受けます。するとその隊員は基地の外に出れば、てんぷらでもそばでも日本食を食べられます。毎日ガス抜きができます。しかし、アメリカで訓練するとなれば、砂漠の真ん中で、朝から晩まで乾燥した食事。肉でも温かいお湯をふくらまして食べる。外になど行けない。2週間苦痛が続きます。そういった訓練から本当の我慢が出てくるわけです。米軍は常にそういう訓練をしています。震災になったときも、そういう訓練をした自衛隊ならば、2週間でも現場で我慢できます。自分たちはそういう訓練ができていない。雲泥の差です。ただ、そのように自衛隊員を酷使するならば、幹部たちも動き、下級の隊員の給料も上げなければならない。これほど、ぬるま湯に浸かっている準軍隊的な組織は世界中にはありませんよ。予備役だって、アメリカの予備軍みたいに土日に訓練させたほうがいい。

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