カマラ・ハリスはゼレンスキーに何を言ったのか 【エィミー・ツジモトに聞くアメリカ⑫】
日本国内でも注目されている米国大統領選挙。”同盟国”の動向は日本にも大きな影響を与える。米国内の報道・政界関係者と日々、情報交換を欠かさない国際ジャーナリストのエィミー・ツジモトさんに、アメリカの今について聞くシリーズの12回目。引き続き、大統領選を中心にアメリカを読み解いていく。自民党総裁選も迫る中、国際動向も参照して国内政治を見てほしい。(約5700字)
ジョー・バイデンの欺瞞
エィミー カマラ・ハリス(Kamala Hariss)は外交問題についてはジョー・バイデンと大差ない、というのが私と付き合いあるアメリカ人たちの意見です。それ以前に、アメリカのマスメディア関係者はハリスの外交はなってないとも言っています。
彼女は、ロシアがウクライナに侵攻する4日前(侵攻は2022年2月24日)に首都キエフに行っています。これはあまり知られていませんが、ハリスはそのとき、ゼレンスキーに対し、ロシアは間違いなく4日後に侵攻(invade)してくると警告。これまで彼は「半信半疑」だった。つまりカマラは暗に「戦闘準備に入れ」と言っているんです。
平井 そうなんですか。その時点でロシアとの戦闘は織り込まれていたと。
エィミー ウクライナで問題になってくるのは、2014年にアメリカ(オバマ政権)を背景にしてロシア寄りのウクライナで、民主主義的に選ばれたヤノコビッチ政権を転覆させた一件です。このことによってやがて2019年の大統領選でゼレンスキー(Volodymyr Zelenskyy)が誕生していくことになるのです。さらにはアメリカがウクライナにNATO(北大西洋条約機構)に加盟するよう後押ししたことは決して口にしませんね。
平井 それがロシアを刺激しましたからね。
エィミー 私がなぜこのような話をするというと、アメリカの大統領になるということは国民の結束をはからないといけないからです。ウクライナやパレスチナについてカマラは沈黙を貫いています。はたしてこのままでいいのでしょうか。
本来、ウクライナ問題を平和的に解決するためにはミンスク協定があります。協定にはポイントがいくつもありますが、私が重要だと思うポイントは2つです。
第一のポイントは、協定ではロシア系ウクライナ人の権利と言語を守ることとなっていることです。ウクライナ東部のドンバスにはロシア系ウクライナ人が住んでいましたが、ウクライナ人は彼らに嫌がらせをしていました。
第二のポイントは協定内容をお互いに守りきれなかったから、再び協定を結び直そうという点です。
私はこれらのポイントについて、その通りではないかと言い続けてきました。しかし日本のメディアもアメリカのメディアもミンスク協定の内容について隠し続けて報じています。この点について私は怒りがあるんです。
*********************
【ミンスク協定】
2014年9月、ベラルーシの首都ミンスクで、ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスの間における和平交渉により、ウクライナ東部での軍事衝突を避けるための合意がなされた。停戦合意が破られたことで2015年2月に新たな「ミンスク2」が合意された。
**********************
平井 ミンスク協定について報じられる内容は主に停戦やロシア軍の撤退の話ばかりですね。
エィミー 日本の人はウクライナへの募金をしていますよね。ウクライナ政府はそのお金で武器を買っているんですよ。ウクライナ政府に渡ったお金でアメリカなどから武器を購入しています。日本でもこの点について多いに考えるべきではないでしょうか。マスコミも然りで。ロシアの侵攻は、ウクライナをはじめ西洋側はロシアに対して、一方的に侵攻したと言っています。
ところが、ドイツのメルケル(Angela Merkel)首相は、ミンスク協定について正直に発言しています。
<ミンスク協定は始めから真剣なものではなかった><協定交渉はNATO軍がウクライナ軍を強化するための時間稼ぎでしかなかった>と。メルケルの言い分は私とまったく同じなのです。
アメリカやゼレンスキーはロシアがウクライナを攻めてくるぞ、とロシアを挑発し続けてきました。その結果、ロシアは本当にウクライナを侵攻しました。そのような卑怯な挑発はしてはいけません。これがバイデン政権でした。あらゆる欺瞞にバイデン政権は満ちています。ハリスはバイデン政権の欺瞞や嘘をそのまま引き継ぐと考えています。
アメリカはイスラエルを最後まで助けるのか
平井 それでは、イスラエルに対するハリスの外交戦略はどう見ますか。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?