見出し画像

【エィミー・ツジモトが読むアメリカ②】 アイゼンハワー大統領の懸念は現実になった


◇アイゼンハワーの引退演説


平井 前回はアメリカ大統領の背後には、民主党にしろ共和党にしろいずれにせよ巨大企業がいて、その大企業が政治家をコントロールするために、合州国では合法的に政治献金する仕組みが出来上がっているという話でした。

エィミー 今の日本とアメリカの有り様を俯瞰すると、政治献金を通じて防衛産業を拡大しようという狙いが見えてきます。政治献金をする産業は防衛産業だけではありませんが、結局のところ日本もアメリカも同じです。
 第34代合州国大統領のアイゼンハワー(1890年ー1969年)は、1961年の大統領引退演説で、<平和、自由、民主主義のために軍事産業、軍産複合体の影響力を排除しなければならない>と言って政治の舞台から降りました(注1)。
 
 アイゼンハワー は、とにかく、国民の未来のために決して 防衛産業を広げてはならないと勇気をもって発言したわけです。引退演説の中心は防衛産業の危険性の話だったんです。
 
 アイゼンハワーの姿は、小泉純一郎元首相が、これ以上原発はいらないと言い切ったことと、私には重なって見えるものもあるんです。もちろん彼らが政治家としてそれまでしてきたことは、さておきということなのですが、歴代の大統領や総理大臣を見たときに、これはなかなか言えるものではありません。

平井 アイゼンハワー演説を読みましたが、そこまで言っているのかというくらい防衛産業の危険性について演説していますね。次に大統領になったジョン・F・ケネディも軍産複合体について懸念を表明して、暗殺されていますが。
 
 かつて政治家としてやった政策に批判される部分があるにしても、防衛産業はダメだ、原発産業はダメだと言い切った点は評価に値するという考えには共感をします。自己修正は許容しないといけないし、それで彼らへの批判がなされなくなるものではありませんし、彼れらもそれはわかっているはずでしょう。

◇増えるばかりの日本の防衛費


エィミー 1989年ってバブル経済が絶好調でしたよね。

平井 そうですね。1989年12月末の株価は当時で戦後最高の3万8915円まで上がったかな。令和の今は4万円を超えてましたが。1990年に入り、バブル経済は終焉を迎えます。私の実家も建設関係の町工場でしたので、バブル崩壊とともに弾けてしまいました。それがなにか?

エィミー あの時よりも令和の今の方がはるかに防衛産業の株価は上がっているし、コロナに関係なく売上や利益は安定し、むしろ上がってきています。多くの防衛産業にとって取引先は民間ではなく政府がほとんどになってきています。潜水艦製造に強い川崎重工の裏金問題で海上自衛隊隊員への金品提供も最近、明らかになりました。これらは政府と防衛産業が結託し続けてきたことそのものと言えるでしょう。

 こういった防衛産業は、自民党からパーティー券を買いこみ、自民党を言いなりにさせようとしている。これはアメリカでも同じことなのです。献金やダークマネーの規模は、昨年から問題になっている派閥パーティーの何千万円という規模ではありません。あんな話は氷山の一角にすぎません。

ここから先は

1,037字
マガジンは有料にしてありますが、本文の大部分が無料で読めます。 今後も記事は増やしていきますので、読んで感想やご意見くださればうれしいです。

日系米国人ジャーナリストが現代アメリカを政治を中心に読み解くシリーズです。 日米のバイリンガルであること、日米に拠点と情報源があり、両国…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?