全部が大丈夫になりたい。
誕生日を迎えた。
わたしはまた一つ、若さを失った。
減点方式の人生だ。
お気に入りだったお洋服も、似合わなくなって随分捨ててしまった。あとよつばにあげた。
ずっと甘いものが似合う女の子でありたいと思う。
いちごのショートケーキとか、マカロンとか、ミルクティーとか、その辺の駄菓子屋で売ってるアイスキャンディーとか。
夏場に薬局で並んでいたシーブリーズを見て、なんだかとても切なくなった。
あのあざとい清涼感は、もうわたしが纏うことはできないだろう。
こうやって少しずつわたしは死んでいく。
いや、殺されていく。
少しずつ、少しずつ。
大人になっていくことの素晴らしさを誰かが説いた。
でもそれは、コーヒーの香りとか、スパイスの深みとか、そういうもので。
違うの、違う、わたしはわざとらしい甘さに埋もれていたいの。
どこからか漂うコーヒーの残り香に、嫌気がさした。
ミルクとお砂糖なんか、一瞬で負けてしまう。
「生きるとは、緩やかに死ぬ事だ。」
ハッピーバースデーわたし。
そしてさようなら、少女のわたし。
失っても失っても大丈夫になりたい。
女の子じゃなくても大丈夫になりたい。
苦味も酸味も辛味も大丈夫になりたい。
全部、大丈夫になりたい。
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