汐ノ浜設定③/キャラクターと演出編
⚠️これは上げ損ねていた記事です。「ユニットバスの人魚姫」「朝焼けとハミング」のネタバレや、作中では余白として残していた部分の解説を多く含みます。答え合わせがしたい方向けです。
さーーーて!作品解説も今回の記事で最後になりました。間が空いてごめんなさい。
今回は、キャラクターと演出の解説です!よいしょ!
キャラクター設定
〈祭事を担当する島の人々〉
○知花楓
本作の中で悪者、だと捉える人も多かったのではないでしょうか。私はわりと、悪いな〜と思いながら描いてました。(そこが悲しくて愛しい子なんですが)
知花は汐ノ浜に古くからある名家であり、女子を産んだ楓は島の中で当然位が高い存在。シャーマンの家系である喜友名に匹敵する地位を持っています。
「もう勝手に楓が決定しちゃってんのよ!」という風音の言葉も、'そういうこと'なのです。
また、家の地位を守る為、楓は幼い頃から「島から出ない事」「島の男と結婚し子供を授かる事」を絶対とされ、そのことから「島の外の価値観に触れる事」もあまり良しとはされずに生きてきました。
菜々と話したがらない過去の描写がありますが、あれも楓の性格というよりも環境によるもの。
そんな彼女から見て、美月はまさに"特別"でした。
「竹下通りで一緒にクレープ食べよ!」と美月が楓に言うセリフもありますが、外の世界を見る事が許されなかった楓には叶えられるはずもない言葉で。
当時の楓には、竹下通りの名前を親の前で出すことすら難しかったかもしれません。
島を愛し、子を愛し、友を愛していた楓。
しかし、正しく愛するにはあまりにも育ってきた環境が閉鎖的でした。
○知花和也
そんな楓と婚姻関係にある和也。幼なじみですが、なんとなくよそよそしいのはこの島の男性の立ち位置的に仕方ないことでした。
朝陽の一件後、島では男性の不審死が相次ぎます。
だからこそ和也は、精一杯良き男性、良き父であることで災厄から逃れようとしていました。
・人魚は赤子の匂いと声を嫌います。なので男性は早く子供をこさえ、なるべく多くの時間を赤子と過ごし、赤子が泣いたら真っ先にあやしてあげましょう。そうすることで、人魚の災厄から逃れられます。
という言い伝えがあり、ラストシーンで和也が赤子の泣き声を優先するのもこの言い伝えが理由のひとつです。
○真栄城風音
風音も古くからこの島で栄えている家の子で、知花の次くらいに権力を持っています。どちらかというと商い気質というか、島民とシャーマンの中継ぎ的な立ち位置にいるイメージです。
1番"罪"という部分を理解するのが難しい役だったんじゃないかなーと思います。
直接手を下すわけでもなければ、楓と違って決断するわけでも無い。
実際稽古場でも、よく「罪を背負え」(意訳)と田中天に言っていた気がします。
この島の力関係に敏感で、より強い方にのらりくらりと手のひらを返していく風音。
そんな風音の存在がより島の因習を強固にしていったのかなと。
〈外の人々〉
○佐伯菜々
ハミングで絶対必要だと思って作った、"外の人"。
菜々は、因習の深いところまでは知りません。
ただこの島に根付く気味の悪い言い伝えについて、なんとなく知っている、くらいです。
それでもラストシーンで彼女が光汰を手にかけるのは彼女が「普通だったから」と、私は解釈して本を書き、演出をつけました。
普通というのは不変ではなく、環境や時代によって変わります。
菜々の取った行動は、"普通の島民"であれば当然のこと。島を守らないといけないからね。
○日下部光汰
光汰のキャラクターを作る上で意識にしたことは、「圧倒的光属性」!!
因習なんかに染まらず、かといって強く反発することもなく、ただただ自分の気持ちに対して真っ直ぐな青年。
光汰はバカで売れないユーチューバーですが、誰よりも美月に寄り添っていたと思うんです。
というか、美月の孤独は部外者にしか癒せないとも私は思いますし。
((ところで私、圧倒的光属性の人間があっけなくロストする展開が大好きなんですよね))
○梶原刑事
離島の連続殺人事件を担当した、若くでデキる女刑事。
梶原の存在は、多分私たちの常識の範囲の中では1番"普通"だったと思います。
仕事に没入できて、
子供がいて、
支えてくれる旦那がいて。
ステータスは順風満帆、でも本人なりのフラストレーションがある…というところも含めて"普通"で。
でもそれって、たまたまそれを手にできる、努力できる環境にいただけなので、梶原の正義ってとてもこの島にとってとても暴力的です。
私なりの"普通"へのアンチテーゼ、それが梶原でした。
ちなみに本編には書けなかったのですが、梶原の上司も本件に関わっていました。
上司は男性。なんとなくこの島の因習を理解し、これ以上の深追いをするのは危険だと判断して梶原と共に本件から離れます。
この事件は結局、朝陽の自白により表面上は幕を下ろしました。
〈守人と人魚〉
この辺の設定については、前の記事に重複してしまうので演出的解釈のみ語らせていただきます。
◯朝陽と黎
この2人は同じ括りとして話させてください。
「愛は他者への加害である」という持論を体現させたのがこの2人です。
その加害性が相手以外の人間に向いたのが朝陽、相手に向いたのが黎。
朝陽の思いを私は「恋」と表し、黎の思いは「愛」として描きました。
恋って、自分本位なんですよ。恋に恋する、とでも言いましょうか。よく恋は見返りを求めて愛は求めないと言いますが、私の解釈では逆です。
「見ているだけで充分」とか「この人のために何かをしている自分が好き」なある意味盲目な状態を、私は恋だな、と思っています。
見返りを求めた時に「愛」に変わるのではないかと。相手と一緒にいたい、はたまた愛されたい、そう願わずにいられないのが「愛」じゃないかな。と。愛と願望は切っても切り離せないと思っています。
そう言う意味で、朝陽が「またあの子とキスがしたい」と望んだシーン、あれは私の解釈では恋が愛に変わった瞬間ですね。
黎は、美月を人魚にしてでも、自分が守人という穢れを担ってでも、美月と一緒にいることを願ってしまった。だから私にとって、彼女の思いは恋ではなく愛でした。
愛は呪いだな。
○人魚への個人的クソデカ感情
ちなみに私は人魚に永遠、恋をしているので「これは月夜解放の物語!」などとぬかしながら物語を作っていました。
朝陽により足を手に入れて、美月を犠牲に自由を手に入れる月夜。
まずーい、って言葉がどこまでも無邪気で、その言葉聞くたびにオペ席で私は興奮してました。
このまま海を渡って汐ノ浜町抜け出して、東京とかでキラキラ生きていってほしいな。
アンデルセンの人魚姫は王子様のこと殺せなかったけど、姉が王子様を殺せ!と提案してるってことはきっと人魚は元来王子様殺せるような価値観を持つ存在だと思うんですよね。私の解釈では。
美しい女の子が、そんな人魚の価値観持ってたら最強なので(?)、私の中で月夜は最強の人魚ひいては女の子になりました。
あー、月夜、キラキラな幸せを手に入れてくれ。
そして自由であってくれ。
いつかどこかで朝陽とすれ違っても気づかないような、そんな美しい鈍感さでどこまでも。
また人魚のお話は書きたいですが、あまりにも月夜という存在は私にとって人魚のベストアンサーすぎてなかなか高いハードルを作ってしまいましたね。次回作に期待!
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