『スウィート・ホーム・シカゴ』の謎 あなたはなぜシカゴに行くの?②
シカゴはスウィート・ホームなのか?
この疑問を分析すると、次の三つの局面に整理される。
①南部人であるジョンソンにとって、シカゴはスウィート・ホームだったか
②大都市シカゴは、スウィート・ホームか
③南部から移住した黒人にとって、シカゴはスウィート・ホームだったか
これらの局面は互いに関係しあっている。本来、黒人であろうと白人であろうと、南部の農村に生まれた人間は、そこに、貧しく慎ましい生活であっても、人間性を取り戻す「埴生の宿」を見出すことができたはずである。しかし、人種差別と希望のないシェアクロッピング制度、リンチに代表される暴力によって、麗しい南部は、人間性を真っ向から否定される地獄となる。ジョンソンを含むアフリカ系アメリカ人にとって、南部はスウィート・ホームたり得なかった。結果、北部への大移住がはじまる。大移住に参加した人びとはシカゴをホームとするべく生まれてきた人たちではなかった。シカゴをホームにせざるを得なかった人たちであった(さらに歴史を遡れば、彼らのホームはアフリカにあるのだが、ここでは置いておこう)。それは南部を拠点に活動しているジョンソンも同じことだった。
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