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スーパー・ササダンゴ・マシン自身が感じた「まっする」:完全版「スポットを当てた選手には これを機に飛躍してほしい」

10・25後楽園大会より発売されたDDTオフィシャルプログラムには「まっする」の11・9後楽園初進出を控えたスーパー・ササダンゴ・マシンのインタビュー(モノローグ形式)が掲載されている。当日を前に、その完全版を改めて掲載! これを読んでまっするを体感しに来てください。(聞き手/鈴木健.txt ※10月16日収録)

平田の頑張りによって
みんなの意識が変わった

――9・21品川の「まっする3」は、終了した直後からツイッター上で絶賛されまくりでした。ご本人も見たと思われますが。
ササダンゴ いや、それがですね…前回は終わった時点ではみな、自分たちでやっておきながら自分たちの興行で感動して泣くという謎の状態で、リングサイドのレスラーたちが平田の頑張りとそれに応えるHARASHIMAさんによる言葉ではない対話を見ながら、完全に泣いちゃっていたんですけど、みんな個人個人としては「それと比べて俺はいったい何ができたんだろう?」と思ったわけです。
――すごいものと比べてしまったと。
ササダンゴ 平田は本当に完ぺきだったんですよ。ものすごい量のセリフがあって、歌ったり踊ったもちゃんと憶えて、なおかつ最後に興行の成否がそこで分かれる部分まで自分が任されて、こんなに準備期間が短い中でほぼぶっつけ本番みたいな役を務めあげたんです。それを見て、俺はあそこでトチっちゃったとか抜かしちゃったとか、スタッフも映像出しを間違えたりとかで正直、1回目と2回目はみんな達成感があったんだけど、3回目はもっとうまくできたんじゃないかと反省が残って。終わったあとによかったよかったとはみんななるですけど、だけど二言目には「あそこはすいませんでした…」という感じだったんです。
――でも、それはいいことなんじゃないですか。
ササダンゴ ええ。みんなちょっとずつ反省して、それが逆に進化、成長なんだと。だから(作り手として)それにもっと応えていきたい気持ちがあります。みんなそうやって意識が変わってきている。平田ほど頑張れたかなというのは僕の気持ちにもあって、自分は皆さんが作った面白いものをちゃんと届けてたくさんの人に見てもらいたいから、伝えるものを作らないといけないんだけど、そこで100点にいったのか、勝ったのか負けたのかという気持ちを引きずりつつ、帰りにご飯を食べにいった車の中でツイッターの反応を見たら、見てくれた人はおおむねいろいろ感じ取ってくれていたんだなと。
――そうですよ。
ササダンゴ KO勝ちとまではいかないけど、判定勝ちぐらいかと思って。それでご飯を食べ終わってホテルに着いてからまた見てみたら、さらにいい評判になっていて。これは大KOじゃないかと、グループLINEでみんなしてざわつきましたね。反省しているんだけど、ちょっとこれはすごいぞという感じになって。不思議な感じでした。今までは本当に達成感だけで、そしてそれはお客さんのリアクション込みで得られているものだったわけじゃないですか。拍手、喝采、声援、まっするだったら大爆笑…今はそれらが得られない状況にある。そういう中で、最後の最後はそこを狙うんじゃなく感動っていうか、感動っていうとおかしいんですけど感情移入して、登場人物の立場になって泣けるものというのが一個の、こういう時期だからこそできる興行のクライマックスだと。それは今回、すごく意識していましたね。
――「マッスル」の頃から見せてきてはいますが、時世がそれをさらに意識させたということですか。
ササダンゴ ですね。明らかに1回目2回目と比べてより強く意識しました。でもそれは、コロナが起ころうと起こるまいと今年は笑いの中に涙が見たいんだなというのがもともとあったんですよ。というのも去年のM-1グランプリでミルクボーイが優勝して、それが浪花節だったんです。そのあとにM-1のドキュメンタリーが番組が放送されて、テレビの賞を獲ったんです。これもまたメチャメチャ浪花節で、涙・涙でよかったんですよ。それで、
なんとなく、今の人が見たいものってこういうところなのかなと。わかりやすさとかすぐ伝わるとかバズるとかいろいろあるけれど、わかりやすいものが増えている中でその人の歴史とかが共有できて、いろんなものの裏側にこういうエピソードがあって、けっこう掘り下げたストーリーってすごいんだなと思って。
――プロレスを見る上でのスタイルの一つでもあります。
ササダンゴ その時点ではまだ2020年はオリンピックもあるということで、記録ではなく人間ドラマなんだなって思ったんですよね。それを1回目のまっするでそういう部分をやって、自粛ムードになってきたら我々の日常の方が非日常になってきて、リングの中で描きたい非日常が描きづらくなっていった。
――3月のまっするは確かにそうでした。世の中と向き合うことがとても難しい状況で。
ササダンゴ 四角いロープの中が非日常の象徴なのに、その四角いロープの中が一番安全に見えてしまう。外の方の危なさの方を気にしなければならない状況下だったんですよ、3月は。いろんなリスクもあった中で、やっていなかったらもっと違っていただろうし、やるべきだったのかも本当に悩んでいました、4月と5月は。そういう過程を経てやる9月のまっするは、すごく自分の中で大きかった。この状況下でも見に来てよかったと思えるようなものを作れなかったら、もうやる自信はなくしていたと思いますね。

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トッピングを多くするのではなく
抜いていく作業の大切さ

――そこまで思っていたんですか。
ササダンゴ 村田晴郎さんが8月ぐらいになると「マッスル坂井だったら、コロナ禍におけるみんなが一番面白いと思えること、この環境下で最適な答えを作品という形で出してくれると僕は思っていますから」って言うんですよ。
――なんというプレッシャー!
ササダンゴ 今までで一番のプレッシャーでしたね。みんなの感情を揺さぶられるものかな…声とか笑い声とか声援とかにはならないけど、確実にみんなの感情を揺さぶられるもの。その一つが涙だったりもするんですけど、心に残るもの、人生を変えかねないもの、見た人の人生にちゃんといい影響を与えられるものを作りたい。後楽園だったら、この間のはできていなかった。後楽園でスーパー・ササダンゴ・マシン物語をやっていたらアホだと思いますよ。
――そういうものですか。
ササダンゴ あれは準備期間がないからやったんです。2.9次元ミュージカルって、まずは2次元の作品がまずあるものですけど、物販がちゃんとできないしその原作漫画を作る予算も時間もなかった。台本だったら出られなくなったりしても変更が効くけど、原作はリカバリーできないですから。だからそのストーリーをスーパー・ササダンゴ・マシンのヒストリーにして、一個の2次元モノとして使えるかなと思ってそうしたんですけど。次回は、ちゃんと原作を作ってやるつもりです。ただ、中心に据えるべき人は決まっているんですけど…その人に言ってないんですよ。
――誰が11・9後楽園の平田一喜になるかは決まっているけど本人はまだ知らないと。もう1ヵ月を切っていますよ。当初は、品川と同じものを後楽園でやろうとしていたんですか。
ササダンゴ じっさいのところ、8割ぐらいは同じものを後楽園でやるつもりでした。でも、そこから1ヵ月半経った自分たちをちゃんと見せないといけないと思ったんです。プロレスラーはみんな能動的に生きているから、1ヵ月半経てばいろいろ変わっているんですよ。いつかは再演という形で見たいし、出す予定でいながら映らなかった映像も含めて完全版を出したいとは思っているんですけどね。あとは…HARASHIMAさんが完全に叩き潰すプロレスをしたじゃないですか。平田のいいところを出す試合にならなかった。
――そこがプロレスはナマモノですし、実はそれが見る者に突き刺さるという。
ササダンゴ そうそう! 作り手側が考えていたのとまったく違う試合だったのに、それがメッチャよかったんです。あとで聞いたら、プロレスファン以外の人たちにグッと刺さったみたいで。平田のいいところを見せるのではなく、強くないという部分が意外と大事だったんですよ。品川がメチャメチャ受けたら、次はブラッシュアップしたものを見せようと思っていたけど、あの瞬間にこれはもう一回はできないなと思いました。すげえもん見ちゃったし、この感情は二度とできないなと。いやー、面白いんですよ、プロレスって、本当に面白いんですよ。
――100%描いていた通りにいかないところがまっすると純・演劇と違うところですよね。「マッスル」の頃から、どこかに想定しないものが待ち受けている。
ササダンゴ うーん…確かに。プロレスに2.5次元的な演出を持っていくことの意味を考えると、演出を過剰にしたりトッピングを多くしたりしていくのではなく、抜いていく作業なんですよね。凄さや迫力、ライブ性、演劇的手法も含めて、もともとプロレスの中には入っているんだよというのを、まざまざと見せつけられました。あれこそが、僕のやりたかったことですよ。
――削る作業というのは編集や文章も同じです。何を書くかよりもいかに書かないかの方が大切という。
ササダンゴ 酒井一圭さん(純烈リーダー/マッスルOB)が、自分たちがやっていた頃よりいろんなことができる。でも、意外と大事なのは何ができるかじゃなくて何をやらないかだということを呟いていて、それがすごく僕の中で心に残ったんです。確かにそうなんですよ。何ができるかというのは一番簡単なエンターテインメントですから。チャレンジすることがエンターテインメントになるし、できないことができるようになるのがエンターテインメント。そうじゃないところで見せていくのがいかに大事か。それぐらい磨いていかないといけないって思いました。
――あれほど完成度の高いものを作り上げてしまったら、次がまたプレッシャーになるのではないですか。
ササダンゴ マッスルの3回目はスローモーションで、そこからまったく別モノに変わったじゃないですか。だから、まっするもここからなんですよ。マッスルでは4回目で鶴見亜門が出てきたような何かを今は自分が見落としているけど、ここが見つけるタイミングなんですよね。あれも始めた時はまったく考えていなかったことが、見つかった。今回は、役者は揃っている。だけど総合演出家・鶴見亜門のようなその後のマッスルの飛躍につながった何かがほかにあるんですよね。それが見つかればいいです。今考えていることとプラス何か…だけど、そんなことを考えないでまずは台本を書けですよね。見つかった時点で加えればいいんだから。
――自分自身の課題は何かありあますか。
ササダンゴ マッスルもひらがなまっするもプロレスをたくさんの人に見てほしい、そのきっかけになればという気持ちはずっと変わってないです。届けるべきプロレスとしてDDTはありますけど、より深く明確に刺さるものを作りたいっていうのは常にある課題ですよね。

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誰を主役に持っていくか?
僕は全員できると思っている

――ただ、今は世の中の人たちがみんな自分のことで精一杯で波及しづらい。そこはマッスルの頃とは状況が違います。だからまずは、来た人たちに満足してもらうことが先決で、そこに関しての答えはツイッターの反応として出ています。とにかく見た人の“語りたい度”の熱量が凄いと思いました。
ササダンゴ そうですよね。僕自身でさえいまだに余韻が抜けていないですから。いいことですよねえ。3回目までに手応えを感じた部分と、トライ&エラーを繰り返してきた部分の答えを出せばいいだけなんで、頭を使えばできるんでしょうけど…それでいいのかなとも思っちゃう。そういう貪欲さが、まっするのいいところなんじゃないですかね。前ほど何かを裏切ってやろうという気持ちがないんですよ。来てくれた人全員、チョーありがたいし、そんなこと思われたくもないかもしれないけど、みんな家族だ!ぐらいの気持ちでいる。だから、喜んで満足して帰ってもらうしかないですよね。
――11月は3日がDDT大田区で、5日に純烈の無観客ライブの脚本を担当し、その4日後が後楽園と大変そうですね。
ササダンゴ 純烈の方はザックリとした台本はできあがっています。配信というだけでも一個の仕掛けですから、それをどう利用するかを考えた構成。後楽園とほぼ同時進行だから、一緒くたに感じます。似てますね、やっぱり。似てるどころか、演者が違うだけで同じものだな。
――1回目の渡瀬選手は準烈の一員としてやっているし、2回目の今成夢人選手も大谷晋二郎選手とのタッグで輝いています。やはり、まっするでスポットを当てた選手にはその後も飛躍してほしいという思いですか。
ササダンゴ それはもちろんです! だから平田もこれを機にそうなっていってほしい。これはワークショップですから、こういうのを作っていくことでプロレスにも生かせるでしょうし、たとえばですけどドラマとかバラエティー番組とか、地元へ営業にいった時にラジオ番組とかに出させていただいた時に役立つ。プロレスラーの、プロレス以外の外で要求されるものと、それを超える答えの出し方は、インディーに関しては大仁田厚さんの次ぐらいにできているんじゃないですか。
――バーベルを挙げるのとは違うやり方でプロレスラーとしてのスキルを上げていると。
ササダンゴ そうそう。もっと幅広いポテンシャルでの上げ方をまっするでやっているわけで。
――誰を主役に持ってくるかは直感なんですか。
ササダンゴ 僕は全員ができると思っていますよ。プロレスを3、4年以上やっている人たちですから。プロレスラーとして認められたいというのでやっていたのが我々のマッスルでしたけど、まっするはプロレスラーとしてある程度成長してきた上で悩んでいる部分がある人たちだから、僕たちのマッスルより先の世界の人たちですよね。僕は、ちょっとでもDDTの選手たちに有名になってほしいし、街で声をかけられる存在になってほしい。売れなくていいことなんて絶対ないんで、みんなにスターになってほしい。演劇は全員が主役にはなれないけど、プロレスはなれますから。
――平田選手が主役でもあの日のHARASHIMA選手、DJニラ選手、納谷幸男選手が印象に残ったように。そういえば、出役ではなく完全に作り手としてテーブルに座りリング上を見ているポジションはどうですか。
ササダンゴ サイコーですよ。自分はテレビとかのプロレス以外の仕事はありますけど、実はそういうところに出るのが向いていないんですよ。本当に自分が好きなもの、伝えたいことをやるには自分では力不足だとずっと思っていたんで。マッスルとかやってきたからなんとなくプロレス以外の形につながっているだけだと思っているんで、そこをみんなで共有したいんです。長くやっていると、後輩たちと濃密につきあえる時間が得られなくなる。それがまっするをやることで、これだけ考えてこの選手はこういうことをやればいいんじゃないかということを考えると、DDTと後輩たちへの愛情がメチャメチャ深まりますからね。
――嬉しそうですね。
ササダンゴ それはね、絶対よかったです。彼らと15分ぐらい熱い試合をやったところでわかり合えないですから。
――ええっ、プロレスって肌と肌を合わせればわかり合えるものだとばかり思っていたんですが、違うんですか!?
ササダンゴ そんなわけがないじゃないですか。時間が長ければ長いほどわかり合えるんですよ。まっするやってそれを実感しているんですから、間違いないです。あとはDDTらしさというか、ほかの団体がやってないことができる場としてのDDTを体験してもらいましょうと。自分が見てきたDDTの楽しさを一緒に過ごせるのは、お互いにとって大事なんだと思います。まあ、想像以上にみんなポテンシャルがあるんで、これを生かせなかったら俺の負けですね。ひらがなまっするを伝えられなかったら、流行らせられなかったら負け。
――キッパリしていますね。
ササダンゴ みんなの理解力、解釈してくれる力が凄いですもん。前はマッスルをやるのが辛い時期もあったけれど、今は…まあ、締切は怖いけど稽古が始まるのが楽しみで仕方がないですから。できあがっていく過程、姿が楽しいんですよね。この3回で型は見えたんで、後楽園で最初の1ターンの集大成を見せないと…これはヤバいですよ。

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