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ガチャガチャとYoutuber

娘はガチャガチャが大好きです。いま小学三年生ですが、保育園に通ってる時からガチャガチャが好きでした。

いまのガチャガチャはまあまあ高く、200〜500円ぐらいします。

子供の射幸心をものすごく煽るのが、ガチャガチャなんだと思います。娘は何かと言うと「ガチャガチャしたい」と言います。娘には月に500円のお小遣いをあげているのですが、ヒドい時にはもらったその日に500円をガチャガチャにつぎ込みます。

あの時無理して書いたコンテの500円が、あの時クライアントに頭を下げた500円が、あそこでの理不尽な扱いを受け入れた500円が、ガチャガチャに吸い込まれていくんです。2分ぐらいで。

そして、出てきたガチャガチャを見て「これ持ってる…」などと言うわけです。あるいは、さっきまであった笑顔が消えるわけです。ガチャガチャで。

いかにガチャガチャのコスパが悪いか、何度も「算数」で説明しているのですが、ガチャガチャを辞めようとしません。そりゃそうでしょう、射幸心を煽られてるわけですから。

どんなに公約が知的で素晴らしくても、土下座しちゃう候補者に勝てないのが選挙です。どんなに新しく革新的で挑戦的な作品があっても、泣ける映画には勝てないのです。要するに、感情を掴まれてしまったら、理屈じゃ動かすことが出来ないのです。

ガチャガチャは子供の感情を掴んでしまっているんです。

そして、ガチャガチャ売り場に行くと、ガチャガチャに端を発した親子の紛争を、あちらこちらで見ることが出来ます。「見るだけ」と約束したのに、「やりたい〜!」と言って床で駄々をこねる子供。「見るだけって言ったじゃない!」と発狂している母親。欲しかったガチャガチャが出なくて泣く子供。「だからガチャガチャなんかやるなって言ったんだよ!」とキレる父親。ガチャガチャをやりすぎて小銭が無くなり、両替しに行くおばあちゃん。

「何でここにガチャガチャが置いてあるんだよ!」と思ったことのある親は多いと思います。さっきまで親子水入らずで、子供の機嫌も良く、一日子供を叱ることも無くいい雰囲気で遊んできたのに、よりによってガチャガチャと遭遇してしまった時の残念さ、無念さ、憎悪。不運とはこの事かと。神は試練を与える。与えてくださる。

そして、さっきまで天使だった子供が悪魔になるんです。マイケル・ジャクソンが『スリラー』のMVでゾンビになった時のように。親の顔はこわばり「逆ズーム」ですよ。

何なんでしょう。

でもこんな事言うと、こう言われるのも知っています。「親がちゃんと躾けてないから子供がそうなってるだけ」「ガチャガチャが悪いんじゃなくて親が悪い」という言われ方です。

そんな事知ってますぅ〜

そんな事知ってるんですけど、ガチャガチャというのは、それを剥き出しに、白日の下に晒してしまうんです。ガチャガチャ売り場で「あそこにまたダメな親がいるわね」と後ろ指を指されてしまうわけなんですよ。そう思われることぐらい知ってますよ。知ってても行くんですよ。負け戦と分かってても戦いに行くんですよ。我々親は。

本当に。ガチャガチャとの戦いは切実なんです。

そんな娘も、たまには論理的な説得に応じることも増えてきました。「1回300円のガチャガチャを5回やったら1500円。1500円あったら、犬のぬいぐるみが買える。」みたいな話も聞くようになってきました。

このままガチャガチャから離れて欲しいと思っていた娘が、Youtubeを見るようになりました。最近の子供はどの家庭も、TV番組は見ないでYoutubeばかり見ているようです。そして、娘はお気に入りのYoutuberの番組を見るようになりました。

そこでYoutuberが紹介していたのが、ガチャガチャでした。

どのガチャガチャをやるか選ぶところから始まり、そして選んだガチャガチャをやるんですが、5種類あったら5種類全部がコンプリート出来るまでやるんです。無限にお金を使いますよ。それを見ている娘の目はキラキラしていますよ。Youtubeを見終わった娘は「今度の土曜日、ガチャガチャやりに行く〜」と言いますよ。

もはやガチャガチャは対岸の火事じゃないんです。バリケードの向こう側の話ではないんです。ヒアリはいつの間にか日本に上陸していたんです。非核三原則は破られてるんです。ゾンビが入ってこないように釘でドアを打ち付けたのに、ゾンビが隣にいたんです。

何なんだ。

娘にあげたお小遣いを何に使おうが娘の勝手、という考え方もあります。私は、生活保護の人がパチンコをやろうが競馬をやろうが問題ないと思っています。でも、生活保護の人がパチンコをやっているのを不快に思う人がいるのも知ってます。そのモヤモヤに近いのかも知れません。大事なお金をガチャガチャなんかに使うなよ、とも思うんです。

でも、同じ様にガチャガチャばかりやっていた息子は、5年生ぐらいからやらなくなり、中学生になった今ではもちろん全くやりません。ガチャガチャなんてやるかよ、ぐらいの精神だと思います。それが成長なんですかね。

この先、娘がガチャガチャをやらなくなる時が来て、その時に大きな成長を目の当たりにするのかも知れません。その日もそんなに遠くない気もしています。その時「1万円あげるから、全部ガチャガチャで使っていいよ。」と、わざと言ってみようと思います。鼻で笑うぐらいの成長を期待して。

「やる!」と言ったら、一部始終をこのnoteに書きます。

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