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レビュー届きました!③
藤木裕介さんより、『SHELL and JOINT』のレビューを頂きました!またしてもすごく面白いです!
この「監督自らレビューを募集してドヤ顔で紹介する」という無茶苦茶な企画でしたが、やって良かったです。
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「SHELL and JOINT」は、すごく変な映画です。
この映画で何が起こっているのか、僕にはさっぱり分かりません。
15年前、初めて平林作品に出会ったときのことを鮮明に思い出しました。
そのときに観たのは「TEXTISM」。「こんなにユニークな作品を作る監督がいるんだ!」と思いました。
「SHELL and JOINT」は、そのときの衝撃をはるかに上回るユニークな映画です。
映像が美しい
予告編でも映像の美しさが伝わります。本編も美しい映像だけでしか構成されていません。
どう美しいかというと、構図が病的にキマっているんです。画面の隅から隅まで気が配られていて、観る人の視線を誘導する力が暴力的に強いんです。
例えば森のカット。画面の中央から視線を外そうとしても、すぐに中央に戻されてしまいます。自然に視線が誘導されるとかではなく。強制的に。ぐぐぐっと。自分の目が勝手に動かされてしまいます。驚きの感覚です。
全てのカットが、そんな風に意識の行き届いた構図です。
さらに運も味方につけています。
光が射すタイミングや、たまたま写り込んでいると思われる鳥や虫の佇まいも素晴らしいのです。
音楽が素晴らしい
平林作品と言えばこの人。渡邊崇さんです。予告を観るまでもありません。この2人が組んだら、音楽は間違いないんです。
一番好きなのは、濡れた髪を乾かしているシーンの音楽です。めちゃくちゃかっこよくて、でもユーモラスで。興奮しました。劇中で普通に使っているドライヤーの音さえかっこよく聴こえるのです。
「かっこいい!」って興奮するシーンではないんですけども興奮してしまいました。だから、興奮するようなシーンじゃないのに興奮してしまう自分がよく分からなくなりました。とても変な気持ちになりました。素敵な体験でした。
内容が理解できないのに面白い
理解できる内容として一番面白いポイントは、独特の死生観に触れられることです。あとエロいです。視覚的にというより、精神的なエロや、原始的なエロが満ちています。
でもやっぱり理解できないことばかりです。
たっくさんのキャラクターが登場します。それぞれの関係の断片を垣間見ることができます。どういう状況なのか分かりません。
キャラクターが、人間なのかも分かりません。虫なのかも分かりません。分からないことだらけです。
さて「分からん」ばかり書いていてはレビューになりません。
何回も「SHELL and JOINT」を観ました。何が起こっているんだろうと考えながら観ました。どんなストーリーなんだろう?とも考えました。
いやー、全然分かりませんでした。
普通の映画じゃないのに、普通の映画と同じように観ても理解できるわけがないのです。
理解しようとするのをやめました。観察することにしました。その方が自然な鑑賞方法だと思ったからです。
分からないけれども見たい、分からないからこそ体験したい。
それって海外旅行みたいです。未知の土地、未知の文化に触れることができ、刺激的な時間を過ごせます。そういう異文化を体験するつもりで観るのも面白いかも知れません。
「へえー」「ふーん」「なるほど」みたいに。
「SHELL and JOINT」は、平林作品の中でも特に理解しづらい映画だと思います。でも、一番好きな作品です。
理解できないことが多いのに、どうして惹きつけられるんでしょうか?
きっと、薄まっていないアイデアの原液に触れられるからだと思います。
あ、レビューを書くために色々調べていたら、楽しむためのヒントを見つけました。
「九相図(くそうず)」です。調べておくと最後まで楽しめます。
こんなに映画館で鑑賞したい映画はない
僕はあまり映画館に行きません。
高いお金を払って、知らない人の近くに座ってじっとしているのが苦手なんです。家なら誰にも気兼ねせずに、寝っ転がったりしながら観られますし。
「SHELL and JOINT」は、スマホで鑑賞するのに全く向かない映画です。
理由はシンプルで、画面が小さいと何が写っているのか分からないからです。どんな映画にも必ずある、顔のアップはありません。全てのカットで、カメラとキャラクターは一定以上の距離を保っています。
ただでさえ大きく写っていない人が、画面の奥に行ったりもします。
デスクトップパソコンで観ましたが、もっと大きい画面で観たいと思いました。
音が重要な役割を果たしている映画なので、いい音で聴きたいし、こんなに神経が行き届いた構図の映像を大きいスクリーンで観たいです。
観てもさっぱり分からない人は多いと思います。
でも大丈夫。宇宙規模で考えれば、だいたい大丈夫です(ちょっと、てきとうなことを言いたくなりました)。
分からなくても、特別な時間になることは確かです。
「わけわからんけど観たい」
そんな興味を15年以上持続させてくれる作品を撮る監督の初長編。
頭は使うけれど、分からなくても楽しめる映画ってないです。
だから今度は映画館で観たいのです。
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