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No.17自転車での失敗


自転車でおつかいに
兄とのおつかいの話はNo.13で書いたが、自転車に乗ることができるようになってからは、1人で勇んでお使いをかって出た。

目的地は、兄ともよく行ったよろず屋さん。
タバコも野菜も日用品も、なんでも売っているそのお店は、交通量も多い車道に面して立っていた。
家からその車道の手前まではのどかな田舎道。
車道のこちら側にある豆腐屋の前が少し広くなった三角地で、車道を挟んだ向かい側がよろず屋。

母との約束
豆腐屋の前に自転車を止めて、よろず屋へは徒歩で道路を渡って行く、というのが、母に厳しく言われているルールだった。

ひとりの自転車でのお使いは、やはり最初の頃はドキドキで。
慎重に走って。
約束通り豆腐屋の前に自転車を停めて、歩いて道を渡りよろず屋へ、、、

でもね。
豆腐屋とよろず屋は、ほんとに目と鼻の先。
ただ道を渡るだけ。

だんだん慣れてくると手前で自転車を停める、たったその一手間が面倒になる。

いつしか、ルールを破り、自転車でスイスイと豆腐屋を通り過ぎて。
自転車を押してひょいひょいと道路を渡り、店先に自転車を停めて買い物をするようになった。

お使いを頼まれるたび、
「豆腐屋さんで自転車停めて行きやー!
気ーぃ、つけるんやでー」という母の声を背中に聞きながら、
「わかってるー、行ってくるー」と軽口をたたいて漕ぎ出すようになった。

豆腐屋の前に差し掛かると、母との約束がチクリと胸に刺さるものの、
「へっちゃらやー、ちゃんと右左見てるもん!」
「黙っていればわからへん」

母にバレる
そんなある日のこと。
母がよろず屋に買い物に行ったら、
店のおばちゃんに言われたそうな。

「かえこちゃん偉いなぁ。いつも自転車でお使いに来て、ほんま偉いわ〜」 って。

それを聞いた母は、血相を変えて
「なんや、あんた、豆腐屋さんで自転車を停めてへんのかいな!
お店のおばちゃんが、自転車で来てるってゆーてはったで!!」

チャララー! チャラララララーン!!!
(バッハ トッカータとフーガのメロディでお読みください)

あ、つまり。
チャララー!!鼻からぎゅうにゅ〜ぅ!!
嘉門達夫のパロディでお馴染みのあのメロディで。

私はというと、ガァーーーーーンと頭を殴られたような気分

そして。

約束を破った罰として、
自転車に乗ることを禁じられ、、、

悔いて、どんなに謝って赦しを請うても、
無駄だった。
私の相棒のマシンは取り上げられてしまったのである。

まさに、
『さとるのじてんしゃ』の物置に入れられてしまった自転車のように、、、

さとるのじてんしゃについて

自転車が欲しくて欲しくてたまらなかったさとるだが、お母さんは自転車は危なくて心配だと言ってなかなか買ってもらえなかった。

ようやく買ってもらった自転車はさとるの宝物に。
楽しく乗る日々を過ごしていたけれど、さとるもお母さんとの約束を破って車道を走ってしまう。
そして、大好きな自転車は物置に入れられて乗れなくなってしまう、、、

紆余曲折があって、また自転車に乗ることができるようになったさとるは、これまで以上に安全に注意して自転車を楽しんだ。

記憶では、だいたいそんな感じ。

私の自転車禁止期間はどのくらいだったのか覚えてないけれど、しっかり反省してこれからは約束を守ることを条件に、再び自転車に乗ることを許された。

『さとるのじてんしゃ』を読んだのが、自身のお仕置きのずっと後だったのか。
お仕置き中に、伝えたい気持ちを込めて、同じ境遇のさとるの物語を母から渡されて読んだのか。
いや、、、そんなはずないな。

追記:ふと、思い出した。おそらく、いつかの夏休みの課題図書だった。きっと、「じてんしゃ」の文字に惹かれて選んだ一冊だ。

ともかく。
主人公のさとるの気持ちに自らを重ねて、強く強く心に残る一冊となった。

懲りない私
やっと再び乗ることを許された自転車だが。

人間、喉元を過ぎれば熱さを忘れる、、、という言葉通り、、、

当時、近所の子どもたちの遊び場になっていた広場が、我が家に続く坂の上にあった。
子どもが自転車で走り降りるには、あまりにも急な坂で、自転車を押して歩く、という約束もしていた。

兄と2人で、広場で自転車に乗って遊んだ帰り、調子づいて2人で自転車で駆け降りた。
かなりのスピードが出てちょっと怖かったけれど、風を切って走る爽快感はたまらなかった。

なぜ、バレたのか忘れちゃったけれど。
あかんなぁ。懲りてない。
まあ、子どもってそんなもん。

父のお仕置き
もちろん両親にこっぴどく怒られた。
父から、約束を守る、という念書を書くように命じられ、それを勉強机の前の壁に貼らされた。

そして、その念書が見えるところに2人並んで正座をさせられた。

正座した膝の下に、当時流行っていたサイコロ遊びのサイコロを挟まれて、、、

何をすんの、お父ちゃん、、、、って感じだけど。

それは。
体重をかかと側にかければ、なんのことはない。父もそれを承知で、まあ、いわば、お仕置きのパフォーマンス的な。

もちろん兄は、膝に体重をかけないように、踵側に重心を置きつつ、顔は神妙なフリ?をして座っていた。

私はというと、、、

「お父ちゃん、ごめんなさい。
お母ちゃん、ごめんなさい。」
泣きながら、膝の前に手を付いて、何度も何度も深々と頭を下げて赦しを請うた。

「体重かけたら、よけい痛いがな」
母が笑って、その場が和んだことが懐かしい。

それにしても、ほんとに馬鹿正直というのかなんというのか。
あ、正直なら嘘ついて約束破らないか(苦笑)

でも、必死で謝って、私ったらなんて健気!とも思うけど、、、

やっぱり、ちょっと抜けてるなぁ。

かえこがアホやから〜あたりまえっ