主人公は”倍返し”だけじゃない
主人公。
マンガにしろ、ドラマにしろ、観客は主人公に自分自身を重ねて熱中し、そして終演すると”面白かった”という感想と共に、”あんな主人公になりたいな”という羨望や哀愁を感じる。
あのドラマ『半沢直樹』放映翌日の月曜日には、会議で上司に異論を唱える社員が増えたらしい、が半沢直樹のようには行かないのが現実。
マンガやドラマの世界は脚色で、現実なんてうだつの上がらない、つまらない毎日が続くものなのか、と感じてしまう人が多いと思う。
■主人公って誰だ?
実際、現実はドラマのようには行きません。
嫌な奴が倍返しされて退場もしていかないし、悪役はのさばっていくし、パワハラを受けた側が自殺してしまって事件にもならないこともあるし…
その時、誰もが「あの主人公のようになれたらな…」
と思う…
でも、あなたの人生はあなたが主人公なんです。
こちらは今回、私が編集を担当した『パンメーカーのコムギくん』(作:深蔵、めちゃコミックにて配信中)。
”パン好きが高じてパンメーカーの営業として働いている、大麦コムギ。少しオドオドしていて営業がやや苦手なコムギだが、思わぬ大型発注を獲得!これで今月の売上目標も楽々達成…のはずだったが…?上手くいかないこともあるけど、真摯さと愛は裏切らない。そんなハートフルストーリー?”
パンメーカーの営業をされていた作者・深蔵さんの経験を元に、営業の理不尽さや嫌な取引先とのやりとりを描いた作品です。
こう書くとあまり面白そうに見えないけど…レビューの評価はかなり良いんですよね…
■倍返しとはいかないけれど…
この『パンメーカーのコムギくん』、主人公のパンメーカー営業・大麦コムギはオドオドとしてコミュニケーションが若干苦手、けれども手先が器用でPOP作りが上手い。と言う半沢直樹とは真逆と言える性格。
そこに『半沢直樹』のように理不尽な取引先やライバル営業などが出てくるんですが…
結果から言うと倍返しはできないです。
それでもレビューの評価が良いのは、きっとひたむきな主人公が立ち向かう姿なのかなと。
結果だけじゃなく、過程を見て読者の方は共感・応援をしてくれているんだな〜と。
結局倍返しなんてできないのが普通なんです。
半沢直樹は、サラリーマン界の孫悟空みたいなもので、だからこそみんなが人気があるんですよね。
■主人公はあなた
今回の編集を担当した『パンメーカーのコムギくん』、最初の打ち合わせは別企画が通らなかった後の深蔵さんとの打合せでした。
「深蔵さん、パンメーカーで働いてたならそれをマンガにしちゃいましょうよ」
そこからこのマンガは出来上がりました。
何が言いたいのかと言うと、皆さんの仕事や経験はマンガのような物語になりうる、ということです。
言い方はあれですが、深蔵さんの経験は特段に特別なものではありません。
おそらく何百万人といる、世の中のサラリーマンも同じように理不尽を経験し、辛いことがありそれでも頑張っていって、周りの仲間と共に嫌な奴と戦い…という経験をしているんです。
『半沢直樹』のように倍返しせずとも、その経験・戦いは周囲から応援され、そして共感を得るものなんです。
倍返しだけじゃない、毎日生きることこそが主人公。
今の生活や仕事になんだかがんばれないなぁ、半沢直樹みたいにがんばれないなぁ、と思うあなた。
ぜひ『パンメーカーのコムギくん』を読んでみてください。
何かの力になれる…とは思います!!