METIのトランジションロードマップ(鉄鋼業界)が残念すぎる・・・
ESGFinance業界の人から注目されていた、業界別トランジションロードマップの先陣、鉄鋼業界Verの案が8月24日に公表された(経産省のHPで見れる)。
これが、残念すぎる。
業界人以外は、意味が分からないと思うので残念な部分を語る前にちょっと説明する。
製鉄は、石炭を利用した高炉を利用して作られるので莫大なCO2を排出する(八幡製鉄所の写真なんか見たことがないだろうか、燃え上がってるかと思う)。日本製鉄1社で北欧の国3個分ぐらいのCO2を出している。なので、製鉄のCO2削減は意義深く、小さな太陽光発電所作りましたというのとはCO2削減効果という観点からも桁違いに重要である。しかし、このような取り組みは、CO2は減っても原則ゼロになっていないのでグリーンファイナンスの世界から排除されてきた。
欧米のアセットマネジメント会社などは、ESG債以外をダイベストメントする動きなんかも出てきたりしている中で、このような意義深い取り組みをしているのにファイナンスが苦しくなるのはナンセンスだと考える人も多かった。
そこで、トランジションボンドというのが考案され、高排出セクターの低炭素への取り組みについてESGファイナンス(トランジションファイナンス)できるようにしようという流れが生まれた。極めて自然な流れだと思う。
しかし、ESGファイナンス先進国欧州諸国はどうもトランジションファイナンスは嫌いみたいだ。倫理感から、莫大にCO2を出す製鉄のESG債発行は何がなんでも認めたくないと思っているようで、トランジションボンドの枠組みはある程度できたものの、発行する勇気ある企業がなかなか出てこないのが現状である。
ここは私の推測だが、METIはこのような状況を危惧して、日本の重厚長大な高排出セクター(電力、製鉄、化学、石油など)を守るべく、業界別トランジションロードマップ(様々な登山ルートのある絵が印象的で、日本の上り方を世界で認めされるための絵だと私は思っている。)を整備して、その戦略に則った日本の会社であればMETIが共に欧米に対峙してやろう!というものだと私は理解していた。
がしかし。。。今回のロードマップは以下の点が残念である。
① 全体を通して言い訳がましい。
足元、技術的にゼロエミッション製鉄はできないということを強調しすぎている。正しいが、見せ方が下手である。欧州が言うような理想的なものはそもそもないんだから、技術的にできるここまでで認めろ、それが現実だ。という流れだ。私は、この流れでは欧州の倫理感からの反発が強まるだけであると思う。見せ方の問題だけだが、彼らの倫理も取り入れ、理想論をもっと語った上で、向かう所は一緒だともっと強調して、おまけのようにして現実解を示すべきだと思う。
② パリ協定に整合的か
パリ協定に整合する戦略を持つことがトランジションボンド発行の必須の要件となっている。NDC(国別の目標)は認められない。
なので、トランジションボンドの発行を促すには、パリ協定に整合する(と建前?でも言える)ロードマップを作らなければならないはずだが・・・・・・
鉄鋼ロードマップ案の最終頁に「パリ協定と整合的かを考えてほしい」と問うている。「それは大前提で作ってたんちゃうんかい!」と突っ込みたくなる。パリ協定との整合性に疑義があるのであればこのロードマップは徒労になる。
最後に、
日本の製鉄技術は世界をリードし誇らしいものだ。また、我々の経済を長年支えてきた。なんとしても日本政府を挙げてこの受け入れがたい極端な倫理を排除し、堂々とESGの世界でもファイナンスができるように日本企業を導いてほしいと思う。
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