【じーじは見た!】 前編:NDCをご存知ですか?
COP26の閉幕と同時に燃料価格が急騰しています。ガソリン価格、電気代、ガス代の値上げによる家庭の負担増加が話題になっています。
エネルギー問題とも密接に関係する気候変動問題⁉
日本政府はCOP26に向けて国連に提出するNDC(国が決定する貢献)決定に際して、次の3つを10月22日に閣議決定しました。
1)第6次エネルギー基本計画(主管官庁:経済産業省資源エネルギー庁)
2)地球温暖化対策計画(主管官庁:環境省)
3)パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(主管官庁:環境省)
NDCには『2050 年カーボンニュートラルと整合的で、野心的な目標として、我が国は、2030 年度において、温室効果ガスを 2013 年度から 46%削減することを目指す。さらに、50%の高みに向け、挑戦を続けていく。』と書かれて国連に提出されました。
そのNDCの基になる閣議決定3つの内、今回は環境省が主管官庁としてまとめた2)地球温暖化計画と3)長期戦略を前・後編で見ていくことにしましょう。
✅まずはNDCについて⁉
これ👇が日本政府が国連に提出したNDC<CO2排出削減目標(パリ協定の着地は2030年なので2030年にどうするかを決めたもの)>です。
日本は、2013年に排出していた14億トンのCO2換算の温室効果ガス(以下CO2)を2030年に7億6千万トンにしますと宣言して国連に提出しました。
政府与党が総選挙で口を濁したエネルギー問題⁉
このNDCの内容を引っ張ってきたのは菅前首相が再エネタスフォースに任命した河野さんであり環境大臣に任命した小泉さんでした。
自民党総裁選挙で河野さんは「既に分かっている未来の年金問題」を指摘してベーシックインカム的な年金制度の抜本改革を口にして失速しましたが、持論の「脱原発」だけは口にしませんでした。
政府与党も経済産業省も原発無くしてNDCは達成できないことが分かっているのに国民感情を逆なでしないようにオブラートに包んでしまった電源構成における原子力、そのため歯切れが悪かったのが第6次エネルギー基本計画でした。
その点、環境省の「地球温暖化対策計画」と「長期戦略」は明快です。
✅地球温暖化対策計画の概要⁉
第6次エネルギー基本計画の概要をまとめた資料は、文章でああでもない、こうでもないとの記述で曖昧であったのに対して、地球温暖化対策計画の概要はパワポ2枚で実に明快でした。
その内の1枚がこれ👇
これってNDCそのものですよね。
環境省は、経済産業省のように産業界の準備状況や産業の国際競争力維持に配慮して「電源構成における原子力がどうなるのか」をごちゃごちゃ書く必要がないので実に明快なのです。
明快ではあるのですが、実は深読みも必要です。
✅JCMの仕組みで1億トンーCO2の排出権を確保⁉
Joint Crediting Mechanism:JCMというのは、京都議定書の時に取り決められたJI(Joint Implementation)とCDM(Clean Development Mechanism)に代わってパリ協定で認められている二国間でのCO2排出権のやりとりのしくみことです。
他国においてCO2排出削減あるいはCO2吸収量増大のプロジェクトに日本が支援をした分を日本の排出削減分としてカウントする制度です。
小泉大臣に変わって環境大臣に就任した山口大臣がCOP26における日本の貢献と記者会見されていたパリ協定6条の合意というのが2国間でのCO2排出権取引きのしくみなのです。
NDCを良く読んでみると「1億t-CO2程度の国際的な排出削減・吸収量を目指す」と書いてあります。
つまり2013年に14億トン排出していたCO2を2030年に7億6千万トンにしますとNDCを国連にファイルしたけれど「どうも未達になりそうなんだ」と読むこともできます。
そこは専門家に任せるとして、仮に20~22%の電源構成を期待されている原子力が5%未達になり、再エネで補完できなければ、JCM等で排出権を日本に持ってくる必要があるという事実だけを確認しておきましょう。(再エネを2030年までに36~38%にもっていくことも野心的な目標ですので、これすらも未達の可能性だってあります。)
✅ちなみに7.6億トン達成(46%削減)に5%足らなかったら?
JCM(排出権取引き)でCO2排出権を買ってくるとしていくら出せばいいの?ということです。
世間では「炭素価格(CO2換算)」をカーボンプライシング/カーボンプライス(CP)という呼び名で話題にし始めています。
企業内では、企業の設備投資判断の指標としてCPの前にInternal(内部の)を付けてICPを設定する企業が増えてきています。
結局CPとは、私たち国民が電気代の高騰や物の値段が上がることで負担するものと思っておく必要があります。
JCMで46%削減に届かなかった5%分の3240万トンの排出権を買ってくるとなると10,000円/CO2-tの炭素価格で計算して3,240億円の負担。
これを4885万世帯(2020年)の電気代で負担すると仮定すると一世帯平均550円/月の電気代高騰となります。
国民負担を最小化するために環境省は、どんな具体策や長期戦略を考えているのでしょうか?
それは後編でみていくことにしましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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