
社交的で華やかな多言語通訳・翻訳者さんの舞台裏はイメトレ、メモ帳、NHK語学講座、そして話せなかった「記憶」の活用
英日通訳者・翻訳者でYouTuberでもあるランサムはなさんのチャンネルで、実際にお会いしたこともあり、オンラインコミュニティでご一緒している多言語(英語、イタリア語、スペイン語)通訳者・翻訳者の岩田詠津子さんのインタビュー動画が公開されたので観てみました。
動画では岩田さんが子どもの頃に映画や洋楽を通じて英語に心惹かれた話から始まり、イタリアの企業に就職してイタリア語に磨きがかかるところまで、語学習得法やイタリア語を学ことになったきっかけ、キャリアパスがインタビュー形式で語られています。
岩田さんにお会いした印象
岩田さんとは昨年10月の金沢でのJTF(日本翻訳連盟)翻訳祭と昨年11月のJAT(日本翻訳者協会)の名古屋でのイベントでご一緒しました。明るくてあたたかくて、おおらかで、ユーモアもあって食通でもある魅力的な方です。そんな岩田さんの印象は、まだ行ったことのないイタリアとスペインに対してわたしが抱いている「明るくて時間がゆったりしていて食べ物にこだわりがある」という印象に重なります。
金沢ではお食事やお酒もご一緒し、通訳のお仕事で滞在されていたメキシコのコーヒーシーンの話なども聞けて楽しい時間を過ごすことができました。岩田さんとお話ししていると「友達」と言う単語が頻出。どうやら、世界各地にお友達がいて、世界各地を訪れてそのお友達たちと交流を深めていると言うこともわかり、オタクで基本引きこもりのわたしからするとなんて華やかなんだ!やっぱり通訳の方は違う!と思っていました。そんな岩田さんがこれまでどうやって複数の言語を習得して通訳や翻訳をされてきたのか、興味津々で動画を観始めました。
語学留学(遊学)の後、バックパッカーとして英語力を磨く
子どもの頃に洋楽や洋画に憧れ、英語に興味を持ったという岩田さん。わかりたい喋りたい一心で洋楽を何回も聴いては歌い、ビデオや映画館でひたすら映画を観て、字幕も意識していたそう。この頃から岩田さんは、英語を集中リスニングしていたというわけです。話したい、聞き取りたいという気持ちは語学の基本として大切なんだなあと思いました。
そして大学1年生の夏にカナダに2か月間の語学留学(遊学)し、当時は英語がペラペラだと思っていたそう。ところがいったん帰国した後にバックパッカーとして、オーストラリア、東南アジア、ヨーロッパを旅してみるとそう簡単に通じる訳でもないことに気づき、会話を極める方向に。
ユースホステルは勉強の場。イメトレとメモを活用する
当時の日本になくて海外の旅先にあるのは英会話が必要なシチュエーションなわけで、岩田さんはそれをフル活用。例えば、各国の旅人が集まるユースホステルは勉強の場だったそうで、話せるように、会話に加われるように、もう日本にいる段階から、事前に必要な場面を想定して一人で英語を喋ってみたり、小話や英語の冗談を用意したりと、イメトレというか独り言英会話を実践していたそう。
岩田さんが素晴らしいのは英語で話せなかったことを覚えておいて、次は話せるようにしたところ。さらに新しい表現があればメモ。いまだに携帯電話サイズのメモ帳をポケットに入れておいてそこにメモするそうで、ランサムはなさんによると、これは通訳の方の勉強にも似ているそうです。
イタリア語を勉強するようになったきっかけ
岩田さんがイタリア語を勉強するようになったきっかけは、仲良くなったイタリア人の友達の家を訪ねてイタリアに滞在した際、ゆったりした時間の使い方を見てカルチャーショックを受けたこと。そして、友達のお父さんとの会話。
友達のお父さん「娘のために2回も3回もきてくれた君はファミリーだ。共通の言葉があったらもっと楽しい思いができるのに。僕が今から英語や日本語をあなたのレベルにまで学ぶのは無理だ。」
岩田さん「私が今度イタリア語を覚えて帰ってくる。」
うー素敵です!仕事のためじゃなくて、既に会話したい人がいて、その人との約束を守るために語学を頑張るなんて最高じゃないですか。
イタリア語の学習方法
イタリア語学習の初期に有効だったのは、書店にあった語学書ではなくて、NHKのイタリア語講座だったと岩田さんは語ります。テレビ講座はイタリア語の入り口で、ラジオ講座はもう少し深い内容。ラジオ講座は予習して、ラジオを聴いて、復習する、というふうに勉強していたそうです。
そして英語と同じくイメトレ。使えそうな表現があったら、実際に使うシチュエーションをイメージして練習します。そうやって日本でしっかり基本を押さえ、「現地では喋るに100%全集中」。間違っても気にしない。なぜなら直してくれる人がいるし、ある程度習熟すると自分で直せるようになるから、だそう。
そうやってバンバン喋ってイタリア語をアップデートしていった岩田さん。ホテル、チケット購入、お店(買わなくても会話する)、バスで隣に座った人とも会話、レジデンス(長期滞在者向けホテル)で同居している人たちの誘いは断らない、となんとも貪欲に社交します。
外国で社交しないともったいない
外国に行っても引きこもりがちなわたしは耳が痛いですが、ホント、その通りです。なぜなら、現地の会話でしかわからないことがあるから。
イタリアで語学学校に行って上級クラスまで進んだ岩田さんは、語学学校の知り合いのつてでイタリアの企業に就職。そこでイタリア語が磨かれることになった、というところでこの動画は終わります。
おわりに
やはり岩田さんの語学学習法は社交に重点が置かれていました。でも、オタクで引きこもりなわたしにも真似できることがあるとすれば、
イメトレ
メモ帳を携帯して話せなかったことや、新しい表現をメモする
話せなかったことを記録して、次回話せるようにする
この3つです。また英語以外の言語を学ぶときにはぜひNHKの語学講座を利用してみたいと思いました。
岩田さんが字幕を翻訳された映画が現在、U-NEXTで配信中!
岩田さんが翻訳を担当されたカナザワ映画祭の2本の映画が現在、U-NEXTで配信中。よろしければチェックしてみてください。
日本語字幕を担当した2作品が(映画祭での受賞は逃しましたが)配信でより多くの皆様に届く機会を得ました☺︎
— エツコ 映像翻訳✰通訳🇯🇵🇲🇽🇮🇹🇨🇦 (@NomadistaJPN) February 3, 2025
多国籍っぷりが高く素敵な映画祭なので、これは映画ファンとしても純粋に嬉しい企画ですな。
伊🇮🇹: 『愛について僕が知っていること』
西🇦🇷: 『洞窟のプラトン』 https://t.co/xfqFj6xsxJ