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HIPHOP Metro Networks Vol.10: HIPHOP史上最強のタッグが繰り出すソウルフルな名曲、 How High / Redman & Method Man

前回紹介した90s最重要グループであるWu-Tang Clan(ウータンクラン)
今回はWu-Tang ClanのメンバーであるMethod Man(メソッドマン)、そして彼の盟友Redman(レッドマン)の最強タッグについて取り上げます!

これまでに数々のコンビネーションチューン、そして二人のアルバムをリリースしていますが、初のタッグとなったのがDef Jam Recordings設立10周年を記念した「The Show」というドキュメンタリーのサントラに収められたHow Highという楽曲です。因みに以下MVはEPMDErick Sermon(エリックサーモン)によるRemix版であり、Remix版の方が圧倒的に気持ちいいので今回はこちらをメインで取り上げます。

リリック/パンチライン

早速Hookから見てみましょう!

Look up in the sky, it's a bird, it's a plane
It's the Funk Doctor Spot smoking buddha on a train
How high? So high that I can kiss the sky
(How sick? So sick that you can suck my dick)
Look up in the sky, it's a bird, it's a plane
Recognize Johnny Blaze, ain't a damn thing changed
How high? So high that I can kiss the sky
(How sick? So sick that you can suck my dick)
空を見上げな。鳥だ!飛行機だ!
列車に乗って煙を吹かすブッダことFunk Doctor Spot(Redmanのニックネーム)だ。
どんだけHIGHかって?空にキスできるくらいHIGHだぜ。
(どんだけヤバイかって?おれのアソコをしゃぶっちまうくらいにヤバイぜ)
空を見上げな。鳥だ!飛行機だ!
Johnny Blaze(Method Manのニックネーム)だぜ、変わらずヤベぇぜ
どんだけHIGHかって?空にキスできるくらいHIGHだぜ。
(どんだけヤバイかって?おれのアソコをしゃぶっちまうくらいにヤバイぜ)
注)()内はオリジナル版のみに存在する歌詞です。

初っ端のライン、日本人でも分かりますね!もちろんスーパーマンからの引用です!そして空飛ぶスーパーマンに見立てて自分たちがいかにHIGHであるかを語っています。

それでは特徴的なヴァースを見ていきましょう!ファーストヴァースはMethod Man。

Excuse me as I kiss the sky
Sing a song of sixpence, a pocket full of rye
Who the fuck wanna die for their culture?
Stalk the dead body like a vulture, Ticalion, hmm
Blacker than your blackest stallion
Hit your housing projects
I represent yo' Shaolin, my nigga
Now yes, Apocalypse now, the gun blaow
It be goin' down, diggy diggy down, diggy down, down
空にキスしてごめんなさい
ポケットをライ麦でいっぱいにして6ペンスの歌を歌う
誰が自分たちのカルチャーのために死ねるんだ
ハゲタカのように死体に忍び寄るTicalion(Method Manの変名)
お前の最も黒い種馬よりも黒いぜ
お前の団地に衝撃を与える
俺は少林出身だぜ、へい兄弟たちよ
そうだ、アポカリプスナウ、銃が爆発するぜ
さぁ、掘って掘って掘りまくろう

まずはファーストラインのExcuse me as I kiss the sky。これはジミヘンドリックスの「Purple Haze」という曲の歌詞の引用です。

この曲は「紫のけむり」という題名が表す通り大麻賛歌であり、大麻を愛するMethod Manならではの引用ですね。
そして2ライン目のSing a song of sixpence, a pocket full of ryeという表現。これは英語圏に伝わる6ペンスの歌という童謡からの引用です。

童謡ながら謎を呼ぶ歌詞、そして様々な解釈ながされておりMethod Manもなぜこの曲を引用したのかは不明ですが、このようなものを引用することでリスナーを文字通り煙に巻いているのではないかと推察されます。

そしてI represent yo' Shaolinの一節で俺はWu-Tang Clan代表だぜということをアピールしつつApocalypse now、つまり自分のリリックは黙示録であり神からの啓示であるとしています。ちなみにApocalypse now(邦題:地獄の黙示録)は1979年に公開されたベトナム戦争を描いた映画の題名からの引用です。

と、ファーストヴァースを見ただけでもMethod Manの引用、引き出しの多さが伺えます。そして歌うように気持ちよく流れるフロウも最高です。

続けてRedmanのヴァースを見てみます。

While the planets and the stars and the moons collapse
When I raise my trigger finger all y'all niggas hit the deck
'Cause ain't no need for that, hustlers and hardcore
Raw to the floor raw like Reservoir Dogs
The Green-Eyed Bandit can't stand it
With more fruitier loops than that Toucan Sam bitch
Plus the Bombazee got me wide
Is a straight suicide
惑星、星、月たちが崩壊しても
俺が指で合図したら全ての仲間たちが起き上がる
そんなことは必要ねぇよな?ハスラーとハードコアな奴らには
レザボアドッグスのように床に叩きつける
Green-Eyed Bandit(EMPDのErick Sermonの変名)は我慢できない
Toucan Samよりもフレッシュ(Fruityはfreshというslang)なビートのループを持ってるぜ
追加のBombazee(大麻のslang)で幅を利かせるぜ
真っ直ぐに死へ向かう

Method Manとは対象的にタイトなフロウで聴かせるRedmanも最高です。
Method Manの地獄の黙示録に対抗?してRaw to the floor raw like Reservoir Dogsのラインでクエンティンタランティーノの名作レザボアドッグスを引用しています。二人の男が銃を突きつけ合うシーンが鮮明に頭に浮かぶ良いラインです。

また、With more fruitier loops than that Toucan Sam bitchのラインではケロッグが発売していたシリアルであるFROOT LOOPSのキャラクターToucan Samを引用し、俺はフレッシュなビートを持ってるんだぜというアピールをしています。

ファースト、セカンドヴァースを追っただけでも二人の強烈な個性と引き出しの多さが分かりますね。

サンプリング元

元ネタは70sディスコトリオSilver Convention(シルバーコンベンション)Fly Robin Flyです。なんとこの曲、以下の歌詞のみで構成されています!!
しかしながら、ソウルフルな間奏が差し込まれたりとクセになる一曲です。

Fly, robin fly
Up, up to the sky

そしてrobinとはヨーロッパに生息するコマドリ、コマツグミのことなんですが、ツグミは冒頭のMethod Manが引用した6ペンスの歌の中で重要な役割を果たしています!ただ、Method Manがリリックを書いた段階ではFly Robin Flyを元ネタとしたRemix版はまだ制作されていなかったと推察されるので、Method ManのリリックとRemix版の元ネタの奇妙な共通点が気になるところではあります。

ということで、Method ManとRedmanのタッグが最高にカッコいい名曲、How Highの紹介でした!

参考

*1) https://genius.com(リリックをチェックする際に全体的に参考にさせて頂いてます)
*2) https://www.whosampled.com/(元ネタを探す際に参考にさせて頂いてます)
Photo by Jakob Owens on Unsplash


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