あっちとこっち
お正月の帰省を終えて、東京にもどる電車内で書いている。窓から見える景色はまだ山や田んぼや畑ばかりだ。帰省は久しぶりではなく、3週間ほど前にも祖父の葬儀のために来ていた。4人の祖父母はみな農業で体を動かしているせいか比較的元気で、こんなに身近な人が亡くなる体験は、私にとってはじめてだった。親族として葬儀に参列したけれど、なんだか実感が湧かず不思議な気分だったし、あまり知らない親戚にも挨拶したり、いろいろと段取りがあったりして、なんだかかなり疲れてしまった。悲しみに浸るひまもないような感じだった。
祖父母の家は私の実家のすぐ隣に建っていて、祖父が亡き今、祖母がひとりで住んでいる。父は休みの日には祖母の家で過ごし、生活のあれこれを少し手伝ったりしているようだ。お正月の帰省中にも祖母の家に行ってお線香をあげた。祖母の家は寒いし玄関なども古い作りで段差が高く、祖母の生活には不向きなように思えた。帰り際、祖母にお悔やみ来てくれてありがとうね、気をつけて東京帰るんだよ、と言われた。言っているあいだに目に涙がたまってきて、ばあちゃんまだひとりで涙が出ちゃうんだ、と言っていた、そうだよね、そうだよね、と言って背中をさすった。泣いているばあちゃんに私ができることはそれしかなかった。ばあちゃんはまだ目に涙をためながら、気をつけて東京帰るんだよ。とまた言った。私は気をつけるね、お年玉もありがとうねと言って実家に戻った。
帰省中の実家には、出産を終え里帰り中の姉と2歳の甥っ子、そしてまだ生まれて2ヶ月も経っていない姪っ子もいた。甥っ子はイヤイヤ期真っ盛りで全然言うことを聞かない時もある。ご飯を座って食べないし、寝たくないと騒ぐし、すぐ泣くし、全然イライラした。けどたくさんおしゃべりするようになってきて、毎日愉快だった。2歳ならではの言い間違いや、素直すぎて面白い発言や、なんやかんや甘えてきて可愛かったりした。ちょっと話が変わるけど、小さい子どもは、大人より"見える"とよく言うよね。母が言うには、2歳の甥っ子は、なにも教えてないのに以前飼っていた犬が窓辺で寝てるとか、お空から来ると言うらしい。犬を溺愛していたので、私も気になって甥っ子にそらちゃん(飼ってた犬)どこにいるか知ってる?と聞いてみた。なんと甥っ子は迷いなく、電気の上じゃない〜?と言った。しかもその前日の夜、1人で部屋でレポートを書いていたら電気がチカチカしていた…。そらがおかえり〜!って言いに来てくれてたのだろうか…。鼻で電気のボタンカチカチしてたんだろうか。まぁ2歳だし、甥っ子がテキトー言ってる可能性もあるけれど、そらが会いに来てくれてたとしたらいいな。と思った。あ〜〜会いたいよ〜抱っこしたくてたまらない。亡くなってからもうすぐ2年が経つけど、今でもあのきゅるきゅるの瞳やふわふわの毛並みや温かい体温を思い出すと胸からお腹にかけてがきゅっとなる。
そらや祖父が、甥っ子姪っ子のことを見守ってくれているといいな、と思ったら、なんだか心がふわっと温かくなってじーんとした。死後の世界なんて分からないけど、なんとなくそうだといいなと思うものを信じるようにしている。信じるのは別に自由だもんね。
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