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怪談「こっくりさん」

子供の頃、つのだじろうの漫画「恐怖新聞」や「うしろの百太郎」などのホラー漫画が流行った頃に「こっくりさん」も流行った。

北海道の田舎街でも御多分に漏れずこっくりさんが小学生の間でも流行った。
放課後にあるお寺の近くに集まった小学生達は「こっくりさんをやろう」誰とともなく言い出した。

ノートを破りこっくりさん用のボードを書く、手慣れた感じで書くA君。
「やりなれてるな」と感心しつつ眺めていたS君。

ボードが出来上がると「やりたい人!」とA君が声を上げる。
でも・・・いろいろこっくりさんをやった後に怪異があったと噂もあってか手を挙げる者がいなかった。

そうなのだ、こっくりさんをやって幾つか学校で事件があって、学校ではこっくりさん禁止令が出ていたのもあった。

A君は「なんだよビビってるのかよ、Sやろうぜ」と突然A君に声をかけられた。
S君は躊躇していると、「怖いのか?」とA君に言われ「怖くないけど・・・わかったやる」と意を決してこっくりさんをやることにした。

まず鳥居の位置に10円玉を置きます。

全員で人差し指を十円玉の上に置き、こっくりさんを呼ぶ儀式をします。

「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」と話しかける。

すると十円玉が「はい」の位置に動き始めた。

おおーと周りで見ていた小学生達がどよめく。
「Aが動かしてるんじゃないのか」と言うH君。

それを聴いたA君はかちんとしたのか「こっくりさん、こっくりさんH君の好きな女の子を教えて下さい」と言い出した。

周りの男子達は笑い出した。
H君は驚き顔を真っ赤にしながら「やめろよ」と怒った。

10円玉は静かに動き出した。
「た」「な」「か」と10円玉は動いている。

「田中って・・・二人居るな」とギャラリーの誰かが言った。
その時H君は更に動く10円玉を阻止しようとA君を押した。

すると10円玉から指が離れたS君もつられて指が10円玉から離れてしまった。

「ああぁぁぁぁ」と皆が一斉に声を上げた、こっくりさんが帰っていないのに途中で指を10円玉から離してはいけないのだ。

転んだA君はゆっくり立ち上がりH君を睨み「祟られるぞお前・・・呪われろ」と叫んだ。
なにか様子がおかしい。

H君は睨み返し「祟られるのはお前だろう、こっくりさんをやっていたのはお前なんだから」と言い返した。

S君はそれを聴いて気が気では無くなった。

その翌日、学校へ行ったがA君もH君も休んでいた。
昨日集まった男子達は「何かあったのかな?」「まさかこっくりさんに祟られたとか?」「途中で10円玉から指を離してしまったから」と噂した。

A君はその後も登校して来なかった。
H君はほどなくして登校してきたが、げっそり痩せていた。
挙動もなんだかおかしく、やたらと背後を気にしていた。

S君の顔を見ると驚いたように「お前はなんともないのか?」と聴いて来る。
「どうしたの?」とH君に聴くと「いつも誰かが俺を見ている気がするんだ、声も聞こえるし・・・何言っているか聞き取れないけれど・・・気持ち悪いんだ」と怯えた声で言った。

ある日教師が「こっくりさんは禁止しているが、やった者がいる。お願いだからそういうことはしないでくれ。良くないことが起きる。A君はこっくりさんをしたそうだが、もう学校へはこれない状態なのだそうだ、禁止してもやる奴はやる、しかし何かあったら先生にはどうしようもないし、親御さんも何もできない、迷信だとか霊だとか信じなくてもやってはいけないということをするとバチが当たることもあるのだから」と切々と児童を前に語るのだった。

A君がどうなったのかは、誰も知らない。
いつしかみんなの記憶から消えてしまった。

ただ大人になって「Aって昔同級生に居たよな?あいつこっくりさんやっておかしくなったって噂の」と思い出したように耳にすることはあった。

H君は中学生の時に交通事故で亡くなっている、しかもちょっとおかしな事故で・・・詳細は書かないでおく。

こっくりさんを途中で止めたら・・・・どうなるか詳しくは判らないが良くないことだけは小学生でも理解した。
S君はこっくりさんは二度としないと誓った。




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戦車兵
チップありがとうございます!!無理なさらず御覧頂けたら幸いです。